アニキのニシンはフライ用に買う

頭を落としてあるのはこれ以上の鮮度低下を防ぐため


八王子綜合卸売協同組合、マル幸にちょっとアニキ(すし屋用語で数日前のという意味)なニシンがあった。
頭を落としてるところを見ても、元が大きいことがわかる。これなら半額以下で買えるとふんだ。
魚は鮮度が命なんておかしなことをいうヤカラがいるが、それは無知か、もしくは無限大に金を持っているとか、水産関係の人間の言うことである。
こちとら消費者で庶民なので料理法を考えながら安く買えれば、買う。
魚の買い方は様々で、総て正解。鮮度の落ちた魚を買うのはとても自然に優しいし、ふところにも優しい。鮮度にこだわりすぎると地球は守れない。

脂がのっているので身は白濁して白い


作りたかったのは夕方の偽ビールの友、フライである。
この首なしのニシンは触っただけでえらい脂ののっているのがわかる。
ちなみにパン粉をつけて揚げるというのは明治期に生まれた和の料理だ。フレンチなどではパン粉をつけて多めの油でソテーする。バブルの頃、小牛のコートレットなどを食べているが、明らかに油とバターでソテーしたもので、揚げ物ではない。
今回の産地不明のニシンをコートレットにしても面白いと思ったが、ボクの年齢からして重すぎる。
できる限り軽く揚げたかったので、もったいないけど、素材が泳ぐギリギリの量のオリーブオイルで揚げた。
このオリーブオイルのフライは、昨今の高騰からして清水の舞台から飛び降りる覚悟が必要だが、普通のサラダ油よりも軽く揚がり、外出をほとんどしない不健康な身にはいい。

大型のニシンなので1枚のフライが大きい


さて、市場から帰ってすぐに塩コショウして腹骨・小骨を取る。
塩コショウまでしておく。
食べる直前に小麦粉をまぶし、溶き卵をからめ、細目パン粉をつけて揚げる。
脂が乗っているので揚げる途中にニシンの身から脂が溶け出して、ニシンの筋肉の層を完全に分かつ。
脂の中に筋肉の層が浮かんでいるような感じになり、揚げ上がりは、脂はまだ液化した状態である。

切り分けると筋肉の層の間が空洞になっているのがわかる


この活性化した脂はすぐに落ち着くが、フライを切ると層と層の間の空洞は広がっている。
これを口に放り込んで咀嚼すると、筋肉の間に液化した脂が潜んでいて、舌に触ってあちちっと熱い。
香ばしいパン粉の下に、見た目固まったように見える溶岩流があるかのようだ。
ここに舌の熱を冷ます、偽ビールがあるからこそのニシンフライといってもいいだろう。
2枚のフライに2個の偽ビールで1リットルは飲み過ぎか、しらね。


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