マアナゴの兜は国宝級なのだ

食べ終わりはガムのごとく噛み噛みする


先週は魚があまりなく、久しぶりに我が家の魚資源が枯渇しているので、冷凍庫からとっておきのものを出してくる。素焼きにした穴子(マアナゴ)の兜(頭部)である。
マアナゴのいちばんうまい部分は頭だ、なんて短絡的なことは言わないが、最後まで惜しんで取って置きたいくらいにうまい、無類の味だ、とは思っている。
7月13日に、八王子綜合卸売協同組合、マル幸水産で買い求めた宮城県産大アナゴの兜だ。
75cm TL・713gなので、すし屋、天ぷら屋では使いにくいが、料理の技さえ持っていれば一般家庭向きのサイズだと考えている。
この大アナゴで8品作り、兜で9品目となる。1本1500円也の9分の1なので、1品の原価は平均170円弱でしかない。
さて、−20度の冷凍庫から取り出して、保存袋と厳重に巻き巻きしたラップを脱がせる。タオルにくるんで室温で戻す。
軽く焼いて、兜を半割にする。鰓などを取り、こんどは強火で表面をかりっと焼き上げてタレ(みりん・醤油同割りを煮つめたもので、市販のウナギのタレでもおいしい)を2、3度くぐらせて焼き上げる。
さて大アナゴの兜は思った以上に食べられる部分が多い。
なによりもマアナゴの皮が、こーーーんなにおいしいなんて、兜を食べないとわからないと思う。世界三大珍味なんて、例えばキャビアなどちょぼっと食べるから世界に冠たるものになるという、非常にいかがわしい代物だが、マアナゴの皮は飽食してもうまい。皮だけで酒を飲み、飯を食らってもこれに代わるものはないと、もちろん食べているときは思う。
しかも頭部に付着している筋肉のうまさよ。名状しがたい味なので、文字にしようがないが、ほろっと柔らかいのに舌の上での存在感がすごくデカイ。
大方食べ終わった残骸は口の中に放り込んでガムのように嚙む。これだけでも十分御馳走の類とは泣けてくる。
深夜なので、千葉県酒々井の甲子正宗をグラスいっぱいだけ、にすべきだったが、無理だった。


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