お呼びでない、ゴマサバでセビチェ

夏の相模湾を走るゴマちゃん


八王子の市場人には釣り師が多い。釣り物で季節が感じられるくらいに多いといってもいいだろう。今、相模湾でもっとも釣り師に嫌われている魚、それはゴマサバである。大きければいいのだけど、体長30cm・500g前後なので釣り味悪し、食ってもまずいし、なんて感じだ。
だから大物釣り師たちには大物のエサでしかないし、仕掛けを無駄に消耗させるヤな魚でしかない。
ゴマサバは近縁種で一般的にサバとされているマサバと比べると生息域が遙かに広い。太平洋、インド洋の熱帯域ではマルソウダとともに重要な食用魚ともなっている。古くは相模湾以南の太平洋沿岸に多かったが近年北上傾向にあり、漁獲量も増えているようである。

釣った翌日でも刺身になるレベルだ


八王子綜合卸売協同組合、マル幸、クマゴロウは天才的な釣り師なのだけど、こんなゴマちゃんでもしっかり首折りして持って帰ってくる。それを勝手に連れて帰ってくるのがボクだ。内緒だけどね。
持ち帰ったらすぐに下ろして皮を引く。
身に張りはあるものの、やはり脂はない。

おかずではなく酒の肴だ


1970年代後半から1980年代、都内に世界中の料理店が勢揃いしたかのようであった。その筋の仕事の端くれにいたので、かなりたくさん食べているが、ほとんど覚えていないのは点々と無作為に勝手について行って食べただけだからだ。
その中で忘れないでいたのがセビチェで、アンデス料理の店だったはず。気になったので、ペルーに赴任していた知り合いの家まで押しかけて作ってもらったこともある。
ちなみに水産物を調べるコツは「水を含んだスポンジ(雑巾でもいい)になるな。絞ったスポンジ(無知でバカ)になれ」なのだ。新婚夫婦の家なのに2回も押しかけて、国際電話まで掛けてもらって作ってもらったらまったくおいしくなかった。
ついで南米関係といえば高野潤とまで言われている、高野潤の南米・アンデス関係の書籍にもあったので、ボク的には二度目のブームが2010年くらいに来た。
たくさん作った末のセビチェは塩味(「えんみ」ではなく「しおあじ」と読むべし)強めで、かなり唐辛子辛いセビチェだ。本来の穀物、じゃがいもに対するおかず的なものではなく、明らかに酒の肴としてのセビチェといってもいいだろう。

酸味、塩味、唐辛子の辛さ


作り方はまずは新鮮な魚(ここではゴマサバ)を水洗いする。
三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取り、細かく切る。
これを玉ねぎ(できれば紫玉ねぎ)・ライム・塩・辛い唐辛子(今回はウミンチュにいただいたものすごく辛いヤツ)で和える。

寝かせてから食べる


あとは少し寝かせてから食べるだけだ。
ゴマサバは脂はないものの、うま味がとても豊かである。このうま味を塩と柑橘類が引き出してくれる。
写真はだいたい3人前で決してたくさん食べるものではない。2,3日に分けて食べてもいい。
合わせたのはスエーデンのアブソルートで、スピリッツが超合う。


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