羅臼、野家の八角干物はウマスギ!

羅臼の干物は回転させて作る


北海道羅臼町、野家のオバアチャンは干物作りの名人である。
山陰・東北以北は本来ひもの作りに向いていない。そこで考え出されたのが回転式の干物機である。
特に羅臼町は霧の町なので湿度も高そうである。漁家である野家の作業所の一角には、当然の如く回転式の干物機が置かれていた。
吉定丸が羅臼沖でとった魚の一部を干物にしている、そんな想像をいだいていたら、案の定、オバアチャンが立て塩に漬けたばかりの魚を干し始めた。
産地で回転式干物器が回っているのを見つけると、回っている魚の正体が無性に知りたくなる。この日、干し始めたのはホッケである。
ホッケは、鮮魚の入荷は築地以前、明治期・大正期にも来ていたが、関東で干物が平凡な商材になったのは、塩乾などの荷受けで聞いた限りでは1970年代ではないか? という。
ちなみにボクが初めてホッケの干物を食べたのは、新宿にあった、『北の家族』というチェーン店でだ。同じクラスの遠軽生まれの秀才が「北海道じゃ普通だけど、お前ら食ったことネーだろ」と言ったのを覚えている。
さてトクビレ(雄を八角)を初めて見たのは1980年代の終わり頃、見るためだけに回っていた築地で、初めて魚を買った、魚たちのひとつである。図鑑でしか見ていなかったので興奮した憶えがある。
この八角(トクビレ)、野家では昔は廃棄していたようだ。産地で廃棄していたものが、持ち帰って競りにかけたり、食べるようになったのは消費地や食べる地域での食文化の逆輸入した、とでもいえそうだ。

香りからしてうまし


さてきっと回転させて干し上げた干物が登場するだろうと期待していたら、ホッケではなく八角が野家の食卓に登場した。洋物の皿に無造作に入れられた干物はそばにあるだけで香り高い。
香りから想像するとおりの味であった。八角の干物の味は、豊かな脂が一度熱で溶けてしまうことで生まれる。この名状しがたい味は食べてもらうしかないが、塩加減がベスト、食べ始めると止まらない味なのである。
野家はアルコールオフではあるが、頭に浮かんで仕方がなかったのは日本酒の瓶である。
野圭太さんおよびご家族の方たちに大大感謝!


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