魚の名所 髪分け

マダイの吸物に胸鰭を立てる


前回に引き続き、『よくわかる 日本料理用語事典』(遠藤十士夫 旭屋出版 2018)の四条流式包丁のときの用語、「魚の名所」を巡る。ちなみにこの「魚の名所」という言語はこの書籍以外には見つけていない。
このマダイを使った図が粗いことと見当に疑問を感じるところがあり、明確にできない部分もある。今回の「髪分け」は胸鰭のこと。単純に考えると髪を左右に分けるなどだが、胸鰭の形そのものを見ると、むしろ櫛のことかも知れない。日本髪の櫛に「鬢出(びんだし)」というのがあり、胸鰭の形に似ているのだ。
さて胸鰭を使った料理というと難しいが、吸物の具ならどうだろう。昆布とマダイのあらだけでだしを取り、胸鰭を具として飾る。
胸鰭は焼き物にするにも焦げやすくやっかいであるし、揚げてしまうと食べでがない。
ここでは「鯛の髪分けの吸物」を作る。
マダイのあら、胸鰭周辺は湯通しして氷水に落とし、汚れや残った鱗、ぬめりなどを流す。
水分をよくきり、鍋に水、あら、昆布を入れてだしを取る。
一度濾して酒・塩で味つけする。
ここに胸鰭とその根元の筋肉(鰭筋)を入れて温める。
あらで取っただしは非常にうまい。薬味などは邪魔なくらいの味わいであるが、なにもなしではそっけない。
それを補うのが鰭である。胸鰭ひとつと言うなかれ。この胸鰭の根元の鰭を支える鰭筋、かまの一部などがやたらにうまいのである。
一点、胸鰭を立てるだけで高級料亭でも出せる品になる。


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