鯛白子は官能的

明石鯛の白子はいい白子


婚姻色とは繁殖期に雄が色づくことである。オイカワ(淡水魚)のように繁殖期になると赤青ド派手になるものもあれば、マダイのように黒ずんでしまうものもいる。たぶんきっと繁殖期のマダイの雌は黒くなった雄が好きなんだと思う。
食う側であるボクもこの黒ずんだ雄に興奮してしまいがちである。
通り過ぎることができなくて、思わず仲卸などで値を聞くのはいいとしても、かなりの頻度で買ってしまっている。
目指すは色気づいた雄、そして白子だ。フグ類と違って産卵期の雄雌が見分けやすく、しかもフグ類に負けず劣らずにうまい。こんな便利な生き物(人間にとっての話)はないと思う。しかも旬ではないので安く買えることがありがたい。
さて写真のものは兵庫県明石市、明石浦漁協からきたものだ。一定の間生け簀で活かし、即死させて血抜きしている。当然、内臓がきれいなのである。
白子を無キズのまま取りだし、とんとんと3等分する。成熟が進んでいないので切断しても精子が流れ出してくることはない。
これを塩ゆでする。ゆでている間、時々取り出しては触り火の通り具合をみる。当然、時間はわからない。要するに指加減といってもいいだろう。
氷水に落として粗熱を取り、布に挟んで水分を取る。
後は紅葉下ろし、洗いねぎ、ポン酢で食うのみである。
鯛白子の味はいきなり脳を直撃するので文字にしにくい。
白子を包む膜が破れるとふんわり舌に広がるうま味と、口全体に甘うまさ広がる。インパクトの強い味なのに後口がいいのであっけない。
鯛白子を食べると、哀れとか、はかなさを感じるのはこのあっけなさ故だろう。
そしてまた黒く色気づいた雄を探すのだ。


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