立夏過ぎの兵庫県明石鯛

黒ずんだ雄


八王子総合卸売協同組合、マル幸に兵庫県明石市、明石浦漁協から色黒のマダイがきていた。
旬ではないものの、産卵個体が浅瀬を目指して群れる時季で、いちばん漁獲量が多いときでもある。ちなみにこの時季の鯛(マダイ)こそが魚島の鯛である。マダイの旬は明らかに秋から冬だ。
春になってもすぐには味が落ちないが、腹の生殖巣が膨らむとともに脂が落ちて身の張りがなくなる。
いちばんうまい時季ではないが、桜が咲いて立夏をすぎて大量にとれ値を下げた時季を消費者の旬としたい。買い時といったもいいだろう。手頃な値段の割りにうまいのである。
明石鯛は、明石浦漁協から見えるところ(明石海峡)でとれて、生きたまま漁協の生け簀に入れ、一定時間活かしてから締めたもので、徐々に値を下げている国内のタイの中でも俄然高値をつけている。
産卵を前に黒く変色するのは雄だ。この時季は比較的雄の方が味がいい。4,5尾並んだ中から選んだのは、39cmSL・1.453kg。鰓蓋の中の鰓が赤く、血液の存在を感じないのは血抜きがしっかりできているためだ。

とても産卵郡の雄とは思えない


三枚に下ろすとさすがに旬のときの、身の張りはないものの身が微かに白濁していて脂が感じられる。白子は弾力があって、産卵はまだまだ先ではないかと思えた。
毎年、産地を決めて4,5、6月とマダイを食べていて、今回初の春の明石鯛であるが、切りつけているとほどほどに包丁が重く、表面に脂のギラつきがみてとれる。
当然、刺身と皮霜造りで食べてみる。
刺身はほどよい歯触りで、ほんのりうま味成分から来る甘味が感じられる。

皮が黒いけど味はいい


定番的な皮霜造りなども見た目は赤くないものの、味わい深さは名状しがたい。
さて、6月にかけて一旬ごとに味見買い。いつまでこのうまさ続くのだろう。


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