アカムツ

Scientific Name / Doederleinia berycoides (Hilgendorf,1878)

アカムツの形態写真

40cm SL 前後になる。側扁(左右に平たい)する。背が赤く、腹側も赤身を帯びる。新しいものは宝石のように赤く、目が大きくて、鱗は櫛鱗でざらざらする。歯は小さいが鋭い。形は平凡で特徴がない。[徳島県海部郡海陽町宍喰町産]
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40cm SL 前後になる。側扁(左右に平たい)する。背が赤く、腹側も赤身を帯びる。新しいものは宝石のように赤く、目が大きくて、鱗は櫛鱗でざらざらする。歯は小さいが鋭い。形は平凡で特徴がない。[徳島県海部郡海陽町宍喰町産]40cm SL 前後になる。側扁(左右に平たい)する。背が赤く、腹側も赤身を帯びる。新しいものは宝石のように赤く、目が大きくて、鱗は櫛鱗でざらざらする。歯は小さいが鋭い。形は平凡で特徴がない。[千葉県銚子産。32.5cmSL・0.89kg]40cm SL 前後になる。側扁(左右に平たい)する。背が赤く、腹側も赤身を帯びる。新しいものは宝石のように赤く、目が大きくて、鱗は櫛鱗でざらざらする。歯は小さいが鋭い。形は平凡で特徴がない。
    • 珍魚度・珍しさ


      いつでも手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★★
      究極の美味

    分類

    硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ホタルジャコ科アカムツ属

    外国名

    紅喉 紅加網
    言語中国語 場所台湾 備考台湾全域。 
    紅臭魚
    言語中国語 場所台湾台南、屏東 

    学名

    Doederleinia berycoides (Hilgendorf,1878)

    漢字・学名由来

    漢字 赤鯥 Akamutsu
    由来・語源
    田中茂穂は東京での呼び名としている。赤い色をしたムツの意味。「むつ」とは「脂っこい」ことを「むつっこい」、「むつこい」、「むっちり」、「むつごい」というから来ている。すなわち脂っこい魚という意味合い。
    〈あかむつ 上総金谷〉『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897)
    田中茂穂は〈シイボルトの『 Fauna Japonica 』 ファウナ ヤポニカ(日本動物誌)に「長崎でオンブツと称するものがあって、是はSerranus oculatus である」 と書いてあるが、此書に出てくるものはアカムツである 〉としている。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
    喉黒(ノドグロ) 「喉黒」は単一の魚類に対する名ではなく、口腔膜、腹腔膜などの黒い魚の総称である。田中茂穂や松原喜代松が標準和名に採用しなかったのは懸命だと考える。
    Hilgendorf
    Franz Martin Hilgendorf(フランツ・ヒルゲンドルフ 1839-1904 ドイツ)。動物学者。お雇い外国人教師として来日。第一大学区医学校で日本で初めて博物学の講義を行う。魚類の採取を積極的に行い。魚河岸や江ノ島に通い。函館など日本各地を旅行した。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。水深100m〜200m。
    青森〜[山形県鼠ヶ関]〜[甑島近海]〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道〜[宮城県気仙沼・石巻]〜九州南岸の太平洋沿岸、東シナ海大陸棚〜大陸棚斜面域、大東島近海。
    朝鮮半島南岸、済州島、山東半島、浙江省、台湾、フィリピン諸島、インドネシア、オーストラリア北西岸。

    生態

    産卵期は6月から10月。

    基本情報

    日本海や宮城県千葉県以西の太平洋側で揚がる。日本海での水揚げが多いこともあって、標準和名アカムツよりも日本海での呼び名「のどくろ」と呼ばれることが多い。全国的な知名度が高いのは日本海側でまとまった水揚げがあるためである。高級魚のひとつで、赤い魚の高級魚として、東北以北の太平洋側でとれるキチジ(キンキ)と対比されている。
    近海、釣りもので大きな個体はキロあたり1万円を超えることは普通。底曳き網でとったものを干物にしたものはスーパーなどにも並ぶが、これも高価なものだ。養殖されていないことも魅力。
    東のキチジ、西のアカムツ 最近ではアカムツの生息域が北に広がりつつあり、単純には言えないが、日本海、千葉県以南に多いアカムツと、茨城県以北の太平洋沿岸に多いキチジで、赤い魚が2種が東西に分かれた感があった。(写真上がキチジ、下がアカムツ)

    水産基本情報

    市場での評価 関東の市場では超高級魚だ。東のキチジ(キンキ)、西のアカムツ(のどくろ)といった感がある。太平洋側よりも日本海側に多い。また韓国からの輸入ものも多い。値段は小さくてもキロあたり2000円以上、釣りで大型なら1万円以上になる。
    漁法 底曳き網、釣り
    産地 島根県、兵庫県、鳥取県、山口県、長崎県、高知県、鹿児島県、徳島県、千葉県

    選び方

    アカムツの味は外見ではわからない。島根県では鱗がはげやすいものの方が味はよいとされている。触って硬いもの。目が澄んでいるもの。

    味わい

    旬は秋から春であると思うが1年を通してあまり味が落ちない。小さくても味がいい。
    鱗は柔らかく取りやすい。皮は比較的しっかりして厚みがある。中骨はやや硬い。
    上質の白身で脂は身全体に混在する傾向がある。皮にもにじみ出るほど脂の含有量が多い。熱を通しても硬く締まらない。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    アカムツの料理法・調理法・食べ方/生食(刺身、あぶり、小形は昆布締め、小形は酢じめ)、煮る(煮つけ、ちり鍋)、焼く(塩焼き、みそ焼き、魚田)、汁(潮汁)、蒸す(酒蒸し)

    アカムツの刺身 『宍喰漁業協同組合』(徳島県海部郡海陽町)から来たもの。船上で釣り上げてすぐ鰓を切り血抜きして、塩氷でしめた上物の刺身。脂が身に混在していて、まるでダイヤモンドダストのように見える。適度な食感があり、実に甘味・うま味が強い。

    アカムツの焼霜造り 身自体にもうま味があって、単に刺身にしてもいいが、皮は柔らかく熱を通すと実にいい味になる。水洗いして三枚に下ろし腹骨と血合い骨を取り、皮目をあぶって冷やす。皮が落ち着いたら切りつける。
    アカムツのとも和え 刺身の端の部分や食感のいい尾に近い部分をゆでた肝と和えたもの。湯引きした皮も添えている。肝のうまさは魚類中の最高峰のひとつだが、それだけ食べると少しくどい。これを甘味とほどよい食感が楽しめる身がやわらげてくれる。
    アカムツの煮つけ 大きなものは兜(頭部)だけ、小さければ丸ごと煮つける。水洗いし、湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、酒・醤油・水、しょうがで煮つける。砂糖、みりんなどで甘味をつけるとご飯にもよく合う。煮上がりに柚子を絞り入れたが、千切りのショウガと一緒に煮てもいい。
    アカムツの塩ゆで 山形県で「湯あげ」、北海道で「湯煮」などともいう。昆布だしでもいいし、単純に塩水でもいい。ここでゆっくり魚のエキス分が煮汁に出過ぎないように熱を通す。煮汁と一緒に食べる。
    アカムツのちり 水洗いして小振りのものは適当に切る。大型はあらを使ってもいい。湯通しして冷水に落として水分をよくきり昆布だし・酒・塩で煮ながら食べる。実にうま味豊かなだしが出て、汁も魚ともに美味。野菜などはお好みで。
    アカムツの塩焼き 水洗いして大型は切り身に、小さい者は丸のまま使ってもいい。振り塩をして1時間以上置く。脂が強いものほど塩の馴染みが悪い。身から染み出た脂が皮目を油で揚げたときのように泡立つ。皮目が非常に香ばしく、身はしっとりしてとてもうまい。
    アカムツの魚田 水洗いし二枚に下ろして骨のある方を適当に切り身にする。小さいものは丸のままでもいい。水分をよくきり、素焼きにし、7分通り火が通ったら合わせ味噌をのせて焼く。写真は蕗のとう味噌。山椒・味噌・砂糖・酒・少量の水を合わせて弱火で練り上げたものでもいい。
    アカムツのみりん干 小型の個体を使う。水洗いして頭部を落とし、開く。水分をよくきり、みりん・砂糖・醤油の地に漬ける。これを半日から1日干し上げる。焼くと脂が染み出して泡立つ。身はふっくらと柔らかく、みりんなどの甘味と身の甘味があいまって非常においしい。
    アカムツの酒蒸し 今回は大型を使ったので二枚に下ろし、骨つきの方の水分をよくきる。昆布の上に半身を置き、酒を振り蒸す。季節のきのこなどを添えるといいが、ここでは松茸を使ってみた。これをすだちしょうゆで食べる。
    アカムツの潮汁 あらを昆布だし(水でも十二分にうまい)で煮だして酒、塩で味つけしたもの。汁の味わいは最上級。骨に付着する身がとても甘い。

    好んで食べる地域・名物料理

    喉黒ご飯 丸ごとご飯に炊き込む豪快な料理だ。
    みそ焼き みそをつけて焼くというもの。新潟県などでよく作られる。

    関連コラム(郷土料理)

    記事のサムネイル写真のどぐろ煮干しで煮ものを作る
    小型のアカムツを島根県西部で「めきん」などと言う。干ものにするにも小さすぎるので、煮干し加工が盛んな大田市などで、煮干しに加工されている。  白身魚の煮干しは・・・ 続きを開く

    加工品・名産品

    干もの、煮干し、総菜、塩辛など様々な加工品がある。
    のどぐろの開き干し 底曳き網が盛んな島根県浜田市のもの。ほかにも三重県尾鷲市や京都府など産地で作られている。脂がのっていて身に甘さがあり美味。
    のどぐろ味醂干し 島根県浜田市で「めきん」と呼ばれる底曳き網ものの小振りのアカムツを開いてしょうゆと砂糖で味つけ。干し上げたもの。[サエキ 島根県浜田市]
    のどぐろの煮干し 底曳き網で揚がった「めきん(小さなアカムツ)」を煮干しにしたもの。うま味は淡いが素材の持ち味を生かす料理に向いている。島根県萩市などでは小形の白身魚の煮干しで里いもを煮る。[山根商店 島根県大田市仁摩町]
    ノドグロささ漬け 福井県名物「ささ漬け(笹漬)」を小振りのアカムツで作ったもの。酢の加減がよく、ほどよい硬さと味つけで実に魅力的な酒の肴だ。下戸も喜びそう。[枡屋商店 福井県小浜市]
    炙りノドグロ 島根県浜田市に揚がった脂ののったアカムツの皮目をあぶったもの。冷凍食品だが、まったく解凍したことがわからない。非常に生に近い味。あぶった風味もいい。[浜田 いそまる本舗 島根県浜田市]
    のどぐろしおから 「のどぐろ(アカムツ)」の身も内臓もそのまま塩漬けしたもの。島根半島の日本海側でマサバの塩辛を製造する会社なので、この技術をアカムツに応用したものと思われる。味に奥行きがあり佳肴である。[マルコウ 島根県松江市鹿島町]

    釣り情報

    東京湾口、千葉県外房沖、茨城など100メートルから150メートルで身エサ、天秤仕掛けで釣る。

    歴史・ことわざ・雑学など

    ■島根県浜田市では「どんちっちノドクロ」という名でブランド化している。
    ■長崎県対馬では「紅瞳」というブランド名をつけて売り出している。
    ■2009年現在、もっとも高値がつく魚のひとつ。
    ■1940年代にはやや大量にとれた。

    参考文献・協力

    協力/『宍喰漁業協同組合』(徳島県海部郡海陽町宍喰町)、島根のタメさん
    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『魚』(1940 田中茂穂 創元社)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)

    地方名・市場名

    キンギョ
    場所兵庫県香美町香住、高知県御畳瀬 サイズ / 時期小型 参考文献、聞取 
    アカムツ
    場所千葉県金谷、東京都、神奈川県、富山県魚津、三重県志摩市志摩町和具、鹿児島県種子島 備考標準和名 参考日比野友亮さん/和具の方言、文献、『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897)、『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    ダンジュウロ
    場所富山県富山市 参考文献 
    ギョウスン
    場所富山県富山市四方 参考文献 
    トラハツメ
    場所富山県富山県東岩瀬 参考文献 
    ギョウシン
    場所富山県氷見市・魚津 備考「魚神」。 参考鮮魚丸和さん 
    オオメ(オオメダイ)
    場所熊本県熊本市 参考田崎鮮魚市場20181121 
    アカウオ キンメ
    場所高知 参考文献 
    アカモツ
    場所徳島県阿南市、海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』、高知県宿毛市田ノ浦『すくも湾漁協』 
    ノドグロ[喉黒]
    場所山形県鶴岡市由良漁港、新潟県上越・村上、兵庫県香美町浜坂・香住、島根県全域など日本海沿岸 備考ノドクロ(喉黒)、ノドグロ(喉黒)。一般的にもノドグロの方がとおりがいい。 参考聞取 
    ノドクロ[喉黒]
    場所山形県鶴岡市由良漁港、兵庫県香美町浜坂・香住、島根県全域など日本海沿岸では 備考ノドクロ(喉黒)、ノドグロ(喉黒)。一般的にもノドグロの方がとおりがいい。 参考聞取 
    メキン メッキン
    場所島根県浜田 サイズ / 時期小型 
    メブト
    場所長崎県 参考文献 
  • 主食材として「アカムツ」を使用したレシピ一覧

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