丑の日には大穴子蒲焼き丼なのだ!

マアナゴの旬にマアナゴを食うから暑気払う、なのだ


八王子綜合卸売協同組合、マル幸に宮城県産の大アナゴがあった。触った感じ締まっていないし、料理屋の店主が仕入れているのを見て、釣られ買いした。
こんち丑の日とはいかなかったが、少し遅れて長いものを食い暑気払う、のだ。
75cm TL・713gなので、兵庫県明石ではデンスケ、広島ではトウヘイと呼ばれるサイズである。このサイズ、すし屋、天ぷら屋が使いにくいので少々安く買えるのもありがたい。
その上、安いからと言って味が劣るわけではない。むしろ余計に脂がのっていたり、焼いてふっくら福福するなどいいところだらけである。
さて、土用丑の日に鰻を食べる習慣は明らかに江戸時代後期からだと思う。平賀源内とか太田蜀山人だとかの説があるが、時代的に合わない。意外に普通の鰻屋が、何気なく考えたら当たったというあたりが正しそうだ。ちなみに関東のウナギ漁を何カ所かで見ているが、天然ウナギの旬は秋なのである。天然ウナギの旬ではない時季だからこその土用丑の日なのだ。
土用丑の日に「うがつくものを食べる」などというが、むしろ「長いものを食べる」という地域の方が多い。
だからうどんを食べる地域もあるし、ドジョウを食べる地域もある。長いと言えば穴子(マアナゴ)も同じ、ボクの昔の仕事場近くの鰻屋にも大行列が出来ていたようで、死ぬ思いをして食べたと自慢された、今年の土用丑の日だが、土用丑の日こそ自宅で穴子を食うべしなのだ。

土用丑の日は長物の蒲焼き丼


さて、帰宅したらすぐデンスケを裂く。
ぬめりを包丁でしこしこしごき落とす。背開きにして中骨を取り去る。
もうかれこれ40年以上長物を裂いているのに、「ヘタは死ななきゃ治らない♪」なんて歌いながら、中骨に身をいっぱいつけている自分を笑い飛ばす。臀鰭・背鰭を切り落とす。
尾に近い部分と兜をじっくりガス台の真ん中のところで、焼き上げていく。
扉を閉めていてもピチパチと音がするのは脂がのっているためである。
尾の部分は九分通り火が通ったらタレ(みりん・醤油を同割りにして煮つめたもの。市販のタレで結構毛だらけ)を2、3回つけて出来上がる。
兜は素焼きだけして冷蔵庫に仕舞い込む。
焼き上がりを撮影して、戻したて(要するにチンしたということ)のご飯にタレを2回り回しかけ、蒲焼きを乗せ茶碗に蓋をして数分待つ。
後は食べるだけ。
1本1500円也の4分の1なので、原価もほぼこれくらいである。
あまりにもうますぎて、また4分の1焼いたか、焼かなかったかは内緒だが、ウナギに決してひけを取る味じゃ、ござんせん。


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