ハチビキ

Scientific Name / Erythrocles schlegelii (Richardson, 1846)

ハチビキの形態写真

70cm SL 前後になる。細長い紡錘形で、断面は楕円形で側へんしない。全身が赤く、背の方が濃い。下あごが上あごよりも前に出ている。尾柄部に隆起線がある。鰓腔後縁に2つの肉質突起がある。[35cm SL ・0.774kg]
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70cm SL 前後になる。細長い紡錘形で、断面は楕円形で側へんしない。全身が赤く、背の方が濃い。下あごが上あごよりも前に出ている。尾柄部に隆起線がある。鰓腔後縁に2つの肉質突起がある。[35cm SL ・0.774kg]70cm SL 前後になる。細長い紡錘形で、断面は楕円形で側へんしない。全身が赤く、背の方が濃い。下あごが上あごよりも前に出ている。尾柄部に隆起線がある。鰓腔後縁に2つの肉質突起がある。70cm SL 前後になる。細長い紡錘形で、断面は楕円形で側へんしない。全身が赤く、背の方が濃い。下あごが上あごよりも前に出ている。尾柄部に隆起線がある。鰓腔後縁に2つの肉質突起がある。70cm SL 前後になる。細長い紡錘形で、断面は楕円形で側へんしない。全身が赤く、背の方が濃い。下あごが上あごよりも前に出ている。尾柄部に隆起線がある。鰓腔後縁に2つの肉質突起がある。[35cm SL ・0.774kg]尾柄部に隆起線がある。鰓腔後縁に2つの肉質突起がある。
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ハチビキ科ハチビキ属

    外国名

    Japanese rubyfish
    言語英語 
    史氏紅諧魚
    言語中国語 

    学名

    Erythrocles schlegelii (Richardson, 1846)

    漢字・学名由来

    漢字 葉血引、端血引 Hatibiki
    由来・語源
    〈血引魚(ちびき) 思うに、血引魚の形は鯔(ぼら)に似ていて、大きなもので二、三尺。全体は深赤色。肉も血のような色をしている。味は美(よ)くない。それで血の色を悪(い)んでこれを食べる人は少ない。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
    〈和歌山県田邊でハチビキ又はニセチビキ〉。
    和歌山県田邊での呼び名。血引は身が血のように赤いという意味。古くは単にチビキだったが、同県でヒメダイを「本チビキ」というのに対してハチビキ、ニセチビキと呼ばれてもいたので、「チビキ」をヒメダイにあて、本種に「ハチビキ」を当てた。「端物」もしくは「半端なチビキ」の意味でヒメダイ(チビキ)よりも劣るという意味合いである可能性があるがいずれにしても意味がわからない。
    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
    〈チビキ科チビキ属チビキ〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    血引魚 〈思うに、血引魚の形は鯔に似ていて、大きなもので二、三尺。全体は深い赤色。肉も血のような色をしている。味は美くない。それで血の色を悪んでこれを食べる人は少ない〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
    小種名「schlegelii」 ヘルマン・シュレーゲルに献名。

    Richardson
    ジョン・リチャードソン(Sir John Richardson 1787-1865 スコットランド)、博物学者、魚類学者(ichthyology)。
    Schlegel
    ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。水深65〜300メートルの岩礁域。
    青森県下北半島、茨城県、小笠原諸島、千葉県館山から土佐湾の太平洋側、宇和海、新潟県〜九州北岸の日本海沿岸、琉球列島、東シナ海、九州-パラオ海嶺。
    朝鮮半島東岸・南岸、台湾、南沙諸島、アフリカ東岸ケニア。

    生態

    産卵期は夏だと思われる。

    基本情報

    比較的暖かい海域のやや深場にいる大型魚。身色が赤いのが特徴である。この赤い色合いは色素からくるもので、カツオなどの赤身魚がヘムタンパク質ミオグロビンで赤いのとは根本的に違っている。
    関東などでは昔、筋肉が赤いので「赤鯖」と呼ばれて非常に安い魚であった。なかなか売りにくい魚であったようで、なんども安く買い求めている。それが長崎県、鹿児島県などがていねいな荷の作りをして出荷するようになり、評価が上がる。今現在、大型は高級魚そのものといってもいいだろう。
    白身なのにミオグロビンで赤い赤身魚のように赤い、という逆手にとった提供の仕方で飲食店でも人気が高まってきている。味のよさからも将来的にも評価が下がることはないと思われる。

    水産基本情報

    市場での評価 入荷量は増えてきている。小さいものは安いが大型は徐々に値を上げており、今現在のところ間違いなく高級魚である。
    漁法 釣り
    主な産地 鹿児島県、長崎県、沖縄県、静岡県など


    チョウチンマチの由来提灯まち 沖縄では「マチ類」といって、やや深場での釣りもののひとつ。口は獲物を捕るときに伸びて、餌を食べてかかった魚は頭を上に口を伸ばして上がってくる。ちょうど伸ばした口が提灯の重化(じゅうけ/化粧輪)で胴体が提灯(ちょうちん)の火袋ように見える。それで沖縄では「提灯まち(チョウチンマチ)」という。

    選び方

    身が硬く、目が澄んでいる。鰓が鮮紅色のもの。

    味わい

    旬は春から秋。産卵後以外は味がよく、寒い時季にも脂がのっている固体がある。
    鮮度落ちは遅い。700g以上くらいから味がぐんとよくなる。大型の方がうまい。
    鱗は強いがそれほど取りにくくない。皮はしっかりしている。
    筋肉は赤く、血合いは紫色を帯びた濃い赤だが、カツオなど赤身の魚とは違い硬く締まりすぎず、ほどよく繊維質で白身同様の食感をしている。頭部の筋肉量は少ない。頭部、あらあどからいいだしが出る。


    ハチビキのフィレハチビキの身色背側 筋肉は血合いと見わけがつかないくらいに赤い。血合いは紫色を帯びた濃い赤なので、カツオなどの赤身の魚とは別種の色合いに見える。熱を通すと明らかに白身である。
    カツオとハチビキの身色比較 (上)カツオ、(下)ハチビキで、身色はそっくりといってもいい。ハチビキの赤は色素によるもので、カツオのようにミオグロビン(色素タンパク質ではあるが、酸素を蓄えることができる)由来ではない。ただ色が似ているだけではなく、味も似ているところがある。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ハチビキの料理法・レシピ・食べ方/生食(刺身、焼霜造)、焼く(塩焼き)、煮る(煮つけ)、汁(みそ汁)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(ムニエル、バター焼き)

    ハチビキの刺身 下ろすと身色が赤いので驚くかも知れない。関東ではこの色合いで嫌煙されてきた。水洗いして三枚に下ろす。皮を引いて刺身にする。見た目の赤さに驚かされるかも知れないが、実際に食べてみるとうま味が強く、食感もほどよくとても味わい深い。強い味なのに、後口がいいのも魅力だろう。料理店などでは、赤いのに白身の味というのも面白いのでは。

    ハチビキの焼霜造り 皮は厚く強くうま味がある。湯をかける皮霜造には剥かないが、焼き切ると皮の味わいが堪能できる。水洗いして三枚に下ろし、腹骨・血合い骨を取る。皮目をバーナーでやや強めに焼く。氷水に落として粗熱を取る。布巾などにくるみ冷蔵庫で皮目を落ち着かせて刺身状に切る。身色が赤いのに白身とはいいながら単に白身以上に味がある。ここに皮を焼いた香り、食感、うま味が加わると至極美味である。
    ハチビキのづけ山かけ 水洗いして三枚に下ろし皮を引く。やや小振りに切り、醤油・みりんの地に1時間以上つけ込む。水分をよく切り、すった大和芋をかける。タイ科などの白身魚は大和芋の味の強さに負けてしまうが、本種は赤身魚のような独特の風味を併せ持つ。大和芋(とろろ)との相性がいい。
    ハチビキのセビチェ 刺身にしたときの端切れや、刺身の残りを使ってもいい。細かく切り、塩・ライムと紫玉ねぎ(普通の玉ねぎでもいい)、辛い青唐辛子を刻んだものと和えて、1時間程度寝かせる。とても酸味と塩味が強いが食べて爽やかである。スピリッツにあう。
    ハチビキの兜焼き(塩焼き) 頭部・かまにはあまり筋肉が着いていない。焼いても食べるところがない、以上においしい。頭部は梨子割りにする。振り塩をして1時間以上寝かせる。1日くらい寝かせてもいい。これをじっくり焼き上げる。香ばしい香り、身の味わい深さと結構としか言いようがない。食べた後の骨湯がさらに美味。
    ハチビキの塩焼き 小さいものよりも大きなものを切り身にしてよし。焼きすぎるとぱさつくが、クセがなく上品ななかに甘みと青魚に似た旨みがある。赤鯖の由来は味わいからも感じられる。
    ハチビキの兜煮(煮つけ) 大型魚なので身(体幹部)だけではなく頭部やあら、卵巣、白子などを使ってもいい。湯通しして、冷水に落とし、鱗や血液などを流す。これを酒、砂糖、しょうゆ、水の地で煮上げる。酒と塩のみの味つけでも、みりん、酒、しょうゆの味つけにしてもいい。甘味をつけるとご飯に合う。煮ると硬く締まるがイヤミのない味である。
    ハチビキのみそ汁 刺身などにした残りのあらを湯通しして、冷水に落とし鱗やぬめりなどを流す。水をきり、水から煮出してみそを溶く。みそとの相性が抜群によくておいしい汁になる。ご飯のおかずにも酒の肴にもいい。
    ハチビキのフライ 筋肉の色は赤だけど、身質はマアジなど背の青い魚と、ハマダイなどとの中間的なもの。小型はフライにすると実に味わい深い。水洗いして三枚に下ろし、塩コショウして小麦粉をまぶし、衣(小麦粉・卵・水。溶き卵でもいい)を絡ませ、パン粉をつけてやや高温で短時間に揚げる。
    ハチビキの唐揚げ 水洗いして刺身にしたときの切り落としや鰭下の部分を集めて作る。水分をよくきり片栗粉をまぶしてじっくり二度揚げにする。鰭や小骨などが香ばしく揚がり、ビールによく合う。
    ハチビキのムニエル 水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、水分をよくきる。塩コショウして小麦粉をまぶして多めのオリーブオイルでじっくりとソテーする。皮が香ばしくなったら身側もソテー。皿に移しておく。火を止めて白ワイン、バター、柑橘類、フルーツ、ナッツ類を加えてデグラッセする。バターを加えてもいい。
    ハチビキのポワレ 水洗いして三枚に下ろして適宜に切る。単に熱を通すとぱさつくが油でソテーすることでそれが補える。ここでは赤い身に赤ワインでデグラッセしてみたが、バターを加えたり、ソテーして新たにオリーブオイルを垂らしてもうまい。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品


    ハチビキの開き干し 加工品はほとんどないと考えている。写真は静岡県沼津市で作られている開き干し。沼津市は開き干し加工が盛んで見た目にも上物である。実際食べると非常に美味で、マアジなどよりもより白身魚に近い。最上級の味である。

    釣り情報

    三浦半島などからの中深場サビキ釣りでは本種も対象魚のひとつ。水深100以上の海底近くで釣れる。これを関東では「赤さば」という。サバに似ているとは思えないが、外見も身の色までもも赤い。

    歴史・ことわざ・雑学など

    血引魚 〈思うに、血引魚の形は鯔に似ていて、大きなもので二、三尺。全体は深赤色。肉も血のような色をしている〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳二年 1712)

    参考文献・協力

    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『原色魚類大図鑑』(安倍宗明 北隆館)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『魚の辞典』(能勢幸雄 東京堂出版)、、『伊豆・小笠原の魚たち』(東京都水産試験場 2004)

    地方名・市場名

    ホテイ
    場所三重県志摩市波切 参考聞取 
    チイキ
    場所和歌山県塩屋 参考文献 
    ホンチビキ
    場所和歌山県田辺、広島 参考文献 
    ハチビキ
    場所和歌山県田辺・標準和名 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    ニセチビキ
    場所和歌山県田辺市 参考文献 
    メダイ
    場所広島 参考文献 
    アバレンボウ
    場所東京都大島波浮 参考文献より。 
    アカムツ
    場所茨城県水戸 参考文献 
    アカトンボ
    場所静岡県伊豆半島 参考文献 
    アカヘイジ
    場所高知県室戸 
    アカヒタチ
    場所高知県柏島 参考文献 
    アカキコイ マルダイ
    場所鹿児島 参考文献 
    シロマツ
    場所鹿児島県奄美大島 参考文献 
    アカサバ[赤鯖]
    場所関東全域、東京都小笠原諸島・伊豆諸島、駿河湾 
    アカボ
    場所屋久島安房 
    チビキ[血引]
    場所東京都諸島部、和歌山県串本町、福岡県福岡市 備考筋肉が血がにじんだように赤いため。 参考聞取、長浜鮮魚市場20181119 
    チョウチンマチ
    場所沖縄県 
    ホテ
    場所三重県鳥羽市和具 参考林一兵衛さん、聞取 
    レンヤ
    場所和歌山県太地 参考文献 
  • 主食材として「ハチビキ」を使用したレシピ一覧

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