ヤマトカマス

Scientific Name / Sphyraena japonica Bloch and Schneider,1801

ヤマトカマスの形態写真

35cm SL 前後になる。体側に斑紋がなく、背鰭と腹鰭は同じくらいの位置から始まるが、腹鰭の方がやや後方から始まる。鰓に1本の鰓耙がある。
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35cm SL 前後になる。体側に斑紋がなく、背鰭と腹鰭は同じくらいの位置から始まるが、腹鰭の方がやや後方から始まる。鰓に1本の鰓耙がある。体側に斑紋がなく、背鰭と腹鰭は同じくらいの位置から始まるが、腹鰭の方がやや後方から始まる。似ているホソカマスは腹鰭の始まりの方が背鰭の始まりよりも前にある。オオヤマトカマスは背鰭の始まりは腹鰭の始まりと同位置。鰓に1本の鰓耙がある。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目サバ亜目カマス科カマス属

    外国名

    学名

    Sphyraena japonica Bloch and Schneider,1801

    漢字・学名由来

    漢字 大和叺、大和梭子魚 Yamatokamasu
    由来・語源 「大和」は学名にjaponicaとあるため。叺(かます)」とは長方形の筵(むしろ)を二つ折りにして袋状にしたもの。昭和30年代くらいまでは水産の世界でも盛んに使われたもの。この叺のように口が大きいことから。
    漢字の「梭」は機織りで縦糸に横糸を通すときに、糸の先につける細いとがったもの。これにカマスの体形が似ていることからだろう。
    〈棘鰭亞目ボラ族カマス科カマス屬ヤマトカマス〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    Bloch
    Marcus Élieser Bloch(マルクス・エリエゼル・ブロッホ 1723-1799 ドイツ)。医師、博物学者。ヨハン・ゴットロープ・テアエヌス・シュナイダー(Johann Gottlob Theaenus Schneider)とともに『110の画像付分類魚類学』を刊行。
    Schneider
    Johann Gottlob Theaenus Schneider(ヨハン・ゴットロープ・テアエヌス・シュナイダー 1750-1822 ドイツ)。博物学者。マルクス・エリエゼル・ブロッホ(Marcus Élieser Bloch)とともに『110の画像付分類魚類学』を刊行、完成させた。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。沿岸の浅場。
    新潟県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、小笠原諸島、瀬戸内海。
    朝鮮半島東岸・南岸、浙江省、台湾堆、香港。

    生態

    ■ 比較的沿岸域の浅場で一生を送る。
    ■ 産卵期は春〜初夏。

    基本情報

    琉球列島を除く日本列島の浅場にいる魚で、旬は初夏から秋。立秋(8月初旬)から秋にかけてまとまって入荷してくる。旬がはっきりしているのも本種の特徴である。
    国内で食用となるカマス類はアカカマスとヤマトカマスの2種だが、一般の人間で区別できる人はめったにいない。むしろ値段からして安い方が本種と考えた方がいいかも。鮮魚での流通もあるが、干もののなどに加工されることが多い。
    鮮度落ちが早いのが難点ではあるものの、とてもおいしい魚で、今以上に鮮魚で食べてもらいたい魚のひとつだ。
    珍魚度 一般的な食用魚である。ただし年間を通して流通しない上に、鮮魚での全国的な流通は少ない。手に入れるためには少々努力を要す。

    水産基本情報

    市場での評価/関東には千葉県や神奈川県からときにまとまって入荷してくる。安い。
    漁法/定置網
    産地/神奈川県、千葉県

    選び方

    触って張りがあり硬いもの。古くなると色があせて白っぽくなる。

    味わい

    旬は初夏〜秋。8月初旬から秋にかけてまとまってとれる。
    鱗は薄く小さく取りやすい。皮は厚みがありしっかりしている。骨は細いが硬い。
    透明感のある白身だが血合いが大きく、すぐに黒っぽく変色する。熱を通してもあまり硬く締まらない。
    料理の方向性
    水分が多く、皮に独特の風味がある。また血合いが大きくきれいではない。刺身は鮮度がよければとてもおいしいが、一般的な流通で鮮度のいいものは皮を生かして焼霜造り、酢じめにするといい。
    基本的な料理法は「焼く」だ。他には揚げ物に向いている。またうま味が強いのも特徴かも。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ヤマトカマスの料理・レシピ・食べ方/揚げる(フライ、天ぷら、唐揚げ)、生食(焼霜造り、酢じめ)、焼く(塩焼き、干もの、かます飯)、ソテー(ムニエル)、汁(みそ汁)

    ヤマトカマスのフライ アカカマスと比べると確かに水分が多い。ただうま味豊かで皮に風味があるなどフライ材料として非常に優れている。
    水洗いして皮付きのまま開く。背鰭、背鰭の担鰭骨などをていねいに取る。腹骨・血合い骨もとっておく。これに振り塩をしてペーパータオルなどにくるんで冷蔵庫に保存する。このとき余分な水分がとれる。さらに水分を拭き取り、コショウやハーブなどを振り、小麦粉をまぶし、溶き卵をからめ、パン粉をつけて高温で揚げる。
    上品な白身に皮目の独特の風味がパン粉の香ばしさの中で浮かんでくる。揚げた香ばしさ以上に本種のうまさが際立つ。

    ヤマトカマスの唐揚げ 漁港などで春から初夏にかけて目にする幼魚は、選別さえできればそれなりに値段がつく。骨が柔らかいので丸ごと食べられる料理がいい。水洗いして頭部を落として、水分をよくきる。片栗粉をまぶしてじっくり二度揚げする。おいしさが詰まったスティックのようで食べ始めるととまらなくなる。
    ヤマトカマスの梅青じそ揚げ 小振りのカマスを開いて中骨と小骨を抜く。小麦粉をまぶして大葉と梅肉(梅干しの果肉をすり鉢ですり、砂糖、水を加えてペースト状にしたもの)を巻き込むようにして楊枝で止め、小麦粉をまぶして衣をつけて揚げたもの。さくっと揚がって香ばしく、大葉(青じそ)の香りが鼻に抜け、カマスの味の中に梅のさっぱりした味がきて、いくらでも食べられる。
    ヤマトカマスの南蛮漬け 小振りのもの(幼魚)は水洗いして頭部を切り取る。水分をよく拭き取り、片栗粉をまぶして2度揚げする。これを三杯酢(塩・醤油・砂糖・酢を合わせて一煮立ちしたもの)に香りの野菜と一緒に漬け込む。半日寝かせると出来上がる。

    ヤマトカマスの刺身 鮮度がよいものは刺身になる。非常にうま味が豊かで味は魚類中でも最高峰のひとつ。ただし鮮度落ちが早いので、水揚げ後、せいぜい1日限定の味である。
    三枚に下ろして腹骨・血合い骨をとる。皮を引き、刺身状に切る。産地などでもっとも食べたい味であるが、意外にありつけない。

    ヤマトカマスの酢じめ 三枚に下ろして腹骨、小骨を抜く。振り塩をして汗をかかせて水分をよく拭き取り、生酢(ゆずやすだちでもいい)に着ける。塩で身が適度にしまってとても味わい深い。
    ヤマトカマスの開き干し 水洗いして背開きにする。内臓や血液などをよく洗い流し、水分をよく切り、立て塩の10〜20分(気温、大小によって違ってくる)漬け込む。これを引き上げ水分をよく拭き取り、冷蔵庫にラップをしないで半日入れておくと出来上がり。干し加減は好みで。 焼いてほぐし、ご飯に混ぜ込んだものが「かます飯」。「カマスの焼き食い一升飯」というのは飯との相性が抜群にいいからだ。
    ヤマトカマスのかます飯 干ものを焼き上げる。もしくは塩焼きを作る。この身をほぐして骨を取り除いて炊きたてのご飯にませ混んだもの。ほんのり酢を利かせてもいいし、カマスを混ぜ込むときに柑橘類を搾り込んでもいい。「かますの焼き食い一升飯」の意味がわかる。
    ヤマトカマスの塩焼き 水洗いして振り塩をして1時間以上置く。これをじっくりと焼き上げる。あまり焼きすぎるとぱさつくので要注意。皮目がいちばんうまい。身はほどよく繊維質で見場なればいい。柑橘類との相性がとてもよい。干物ほどではないが、焼いて身をほぐしてご飯に混ぜ込んでもいい。


    ヤマトカマスのみりん干し 大小は問わない。水洗いして開いて水分をよくきる、これを砂糖・醤油・少量のみりんの地に漬け込む。数時間(大きさや気温で変わる)漬け込んで、地を拭き取り、半日以上干す。干し上がったら焦がさないように気をつけて焼き上げる。
    ヤマトカマスのムニエル 水洗いして背開きにして小骨や鰭下の骨を取る。塩コショウして1時間以上寝かせる。出て来た水分をよく拭き取り、小麦粉をまぶして、多めの油でソテーする。皮目を強く香ばしくソテーするといい。火が通ったらカマスを取りだし、バターを加え、キノコなどをソテーして、白ワインを入れて味見する。もの足りなかったら塩コショウ。これを皿に盛り、上にカマスを乗せる。
    ヤマトカマスのちゃんちゃん焼き風 北海道にサケをソテーしてバター、甘めの加減味噌をかけ回し、野菜をくわえて焼きながら食べるという「ちゃんちゃん焼き」がある。これを水分が多い本種でやると意外やとてもうまい。開いて小骨や腹骨、鰭際の部分などをとり、塩コショウしてソテーする。ここに好みの野菜、バター、みそ(酒・みりん・砂糖・みそを錬ったもの)をくわえて焼き上げる。
    ヤマトカマスの梅干し煮 小振りの方が使いやすい。水洗いして頭部だけ取る。これを湯通しして、冷水に落として表面のぬめりや残った鱗を取る。水産をよくきり、梅干し・酒・少量のしょうゆを入れて煮上げる。砂糖などを使って甘くするとご飯に合うし、常備菜としても優秀。
    ヤマトカマスの塩煮 水洗いして頭部を切り、水分をよくきる。これを4パーセントの塩水で4〜5分ゆでて陸揚げする。表面の水分が引いたら、そのまま柑橘類などをふり食べる。これを干し上げたものが煮干しだ。カマスの煮干しはとてもいいだしが出る。
    ヤマトカマスの煮干し 春の小さな個体を水洗いする。頭部を落として水分をよくきり、強めの塩水の中で完全に火が通るまでゆでる。放冷してからからになるまで干す。昆布と一緒に煮出すと、とても澄んだ、うま味豊かなだしがとれる。
    ヤマトカマスのみそ汁 水洗いして、適宜に切り一度湯通し、鱗やぬめり、汚れを落として水分をよく切る。これを昆布だし(水)で煮だしてみそを溶いたもの。幼魚は煮干しにもなるくらいにヤマトカマスにはうま味があるので、濃厚でうまいだしが出て美味だ。

    好んで食べる地域・名物料理

    かますずし 紀州(三重県、和歌山県)、四国に姿寿司がある。秋の祭りなどに酢締めのカマスで姿寿司にする。
    大根なます カマス(見た目からヤマトカマスと判断した)と大根、きゅうり。にんじんの酢の物(なます)。カマスは塩で締めており、非常にあっさりと軽い味わいの合わせ酢で和えている。魚はときどきのものでいいのかも知れない。[高知県室戸市]

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    加工品・名産品

    干もの、乾物になることが多い。

    かますの塩辛 鹿児島県甑島で揚がったヤマトカマスを干ものにする。そのときの内臓を集めて塩をして寝かせた本格的な塩辛である。塩のなれは当然のこと、内臓が適度に分解して熟成、とてもうま味が強い。しかも独特の苦みが後からやってくる。言うなれば塩辛の名品である。柑橘類と合わせると無類のうまさである。

    カマスの丸干し丸干し 全長12cm前後の小型のカマスを丸干しにしたもの。意外に身離れがよく、小さいのに脂がのっていて甘味がある。非常に美味。[ぬしま鮮魚 徳島県海部郡海陽町宍喰浦]
    カマスの煮干し煮干し 小振りのカマスを塩ゆでして、強く干し上げたもの。非常に上品でいながら強いうま味のあるだしがとれる。麺類や根菜類の煮炊きにも合う。[ぬしま鮮魚 徳島県海部郡海陽町宍喰浦ほか日本各地]
    開き干し ヤマトカマスを小田原開き(頭部を開かない)にして塩味をつけて干し上げたもの。塩加減も絶妙で実に美味。[牧屋 神奈川県小田原市]

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    釣り情報

    現在でも真鶴などでゴムチューブを使った疑似餌でのカッタクリ釣りが行われている。比較的岸近くでの釣りで手軽に楽しめる。

    歴史・ことわざ・雑学など

    「かますの焼き食い一升飯」はカマスは焼くとご飯に合いうまいということ。本種とアカカマス共通のことわざだ。

    参考文献・協力

    『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)

    地方名・市場名

    ヤエゴ
    場所三重県尾鷲市 サイズ / 時期小型 参考岩田昭人さん 
    ヤヨイ
    場所三重県東紀州 参考三重県『東紀州のお魚リスト』 
    ミヅガマス
    場所別名 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    アオガマス[青ガマス] アヲガマス
    場所和歌山県周参見 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    イソガマス[磯がます]
    場所和歌山県湯浅 備考アカカマスと比べると岸寄りにいるため。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    ヒュウヒュウ ヒユウヒユウ
    場所和歌山県田辺 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    トウジン
    場所和歌山県田辺市 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    ビリガマス
    場所福岡県玄海灘 参考江崎恭志さん 
    ミズカマス[水かます]
    場所関東、神奈川県小田原市、静岡県伊東市富戸 備考水かます(水ガマス)と呼ぶ地域は非常に多い。 参考聞取 
    カマス
    場所東京都、神奈川県など、三重県鳥羽市・志摩市、鹿児島県種子島 備考単にカマス。と呼ばれることが多い。三重県鳥羽市・志摩市ではアカカマスを{荒肌(アラハダ)}といい単にカマスは本種のこと。 参考聞取、『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    クロガマス クロカマス[黒カマス]
    場所三重県尾鷲市、和歌山県塩屋、徳島県海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』 備考アカカマスはアカカマス。 参考聞取、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
  • 主食材として「ヤマトカマス」を使用したレシピ一覧

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