ヒガンフグ

代表的な呼び名アカメフグ

ヒガンフグの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
31cm SL 前後になる。体表の棘はなく小疣状のものが密集する。触るとごつごつした感じだ。断面は円形に近く全体に丸みをもつ。側面から背部は薄い褐色のなかに褐色の斑紋が密に散らばる。[20cm SL ・253g]
31cm SL 前後になる。体表の棘はなく小疣状のものが密集する。触るとごつごつした感じだ。断面は円形に近く全体に丸みをもつ。側面から背部は薄い褐色のなかに褐色の斑紋が密に散らばる。
31cm SL 前後になる。体表の棘はなく小疣状のものが密集する。触るとごつごつした感じだ。断面は円形に近く全体に丸みをもつ。側面から背部は薄い褐色のなかに褐色の斑紋が密に散らばる。
体の表面に小さな瘤状(こぶ)の突起がたくさん密に散らばっている。

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珍魚度・珍しさ★★★
がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系フグ目フグ亜目フグ科トラフグ属
外国名
英名/Globefish, Blowfish, Puffer
学名
Takifugu pardalis (Temminck and Schlegel, 1850)
漢字・学名由来

漢字 彼岸河豚 Higanfugu
由来・語源 神奈川県三崎での呼び名。春の彼岸頃よくとれるからで、三月河豚という呼び名もある。また、「食べると彼岸に渡る」、すなわち死んでしまうという意味だという説もある。
『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)では裸歯類マフグ科マフグ属ヒガンフグ。

Temminck
コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
Schlegel
ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。日本各地。浅い岩礁域。
北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海、北海道南西部〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海、東シナ海。
朝鮮半島沿岸、渤海、黄海、済州島。

生態

基本情報

関東では「あかめふぐ」と呼ばれているので要注意である。本種も標準和名のアカメフグは白子が食べられるが、本種は食用不可だ。あくまでも標準和名のヒガンフグについてだ。
琉球列島をのぞく、国内全域で水揚げのある中型のフグだ。冬になると入荷が増え、5月、6月くらいまで市場で見かける。「彼岸河豚」、「三月河豚」などの呼び名通りに、流通上で見かける機会が多くなるのは春。市場に春を感じさせてくれる魚でもある。関東などではトラフグと比べると安いので、ショウサイフグとともに人気が高い。
産卵後以外は比較的味がよく、フグのなかではやや高値がつく。養殖されていないので総て天然。
テトロドトキシンを含む魚だということを忘れないこと。
珍魚度 珍しい魚ではなく食用魚だ。ただし消費地では管理が行き届いていて、めったに丸のままを見る機会がない。

水産基本情報

市場での評価 冬から春にかけて入荷してくる。やや高値。
漁法 釣り、定置網
産地 神奈川県、宮城県

赤目河豚 関東では「あかめふぐ」と呼ばれている。流通上も「あかめふぐ」とされることが多い。標準和名のアカメフグは別にいる。

選び方・食べ方・その他

選び方

味わい

旬は秋から春。初夏にも味のいい個体がある。
皮は硬く剥きやすい。骨はあまり硬くない。
透明感のある白身でトラフグ属の中でも比較的しまっている。
食用となるのは筋肉だけなので、生殖巣が膨らんでくると歩留まりが極端に悪くなる。

ヒガンフグの部位 食用となるのは筋肉のみ。産卵前は毒を除去すると雌だと歩留まりは半分、雄の場合は7割ほどだ。可食部は筋肉だけなので、成熟が進むと歩留まりがもっと悪くなる。
筋肉は無毒だとされてきたが弱毒の固体もある。精巣(白子)は弱毒。肝臓と卵巣は猛毒。皮膚と腸は強毒。腎臓や脳みそ、目などの毒性は不明だが、ていねいに取り去る。

栄養

危険性など

筋肉以外は食用不可。テトロドトキシンを含む。

食べ方・料理法・作り方

ヒガンフグの料理法・調理法・食べ方/煮る(鍋、煮つけ)、汁(潮汁、みそ汁)、生食(刺身、焼き切り)、揚げる(唐揚げ)、焼く(幽庵焼き、塩漬け、干もの、ポン酢焼き、酒塩焼きなど)、ソテー(韓国風焼き魚)
ヒガンフグのふぐちり フグ科でもっともおいしい、トラフグ属の中でも、味のよさが知られている。締まった身質で味がある。
みがき(毒の除去済み)を買って作ったもの。身は適当に切り、湯通しして冷水に落として表面のぬめりを流す。これを昆布だしに酒・塩味で煮ながら食べる。野菜などはお好みで。
身は適度に締まり、微かに甘味があって味わい深い。ポン酢や柑橘類と醤油で食べるととてもうまい。

ヒガンフグの鍋韓国風 基本的に液体をかいする料理に合う。ここではみがきを適当に切り、湯通しする。冷水に落としてぬめりを流す。これを煮干しだし、酒・塩味で煮ながら食べる。好みで唐辛子と一緒に煮る。筋肉自体に味がない分を煮干しだしで補う。唐辛子の辛味がいい。
ヒガンフグの魚すき みがきをやや薄めに切る。これをしょうゆ、酒、砂糖と水の下地で煮ながら食べる。砂糖の代わりにみりんを使ってもいい。淡泊な味わいなので、ややこってり甘辛味が合う。ご飯にも合う。
ヒガンフグのみそ汁 中骨や頭部を適当に切る。湯通しして冷水に落として表面のぬめりを流す。これを水から煮出してみそをとく。ここでは出始めのナスを使ったが野菜はお好みで。豆腐や麩などを合わせてもいい。とてもご飯に合う。
ヒガンフグの煮つけ みがきを適当に切る。頭部などからおいしいだしが出るので、必ず使いたい。湯通しして冷水に落として表面のぬめりを流す。これを酒・醤油・水で煮る。砂糖、みりんで甘味をつけてもいい。たまり醤油を使ってコッテリした味つけにしてもおいしい。
ヒガンフグのがねだき(モガンバのがねだき) 「がねだき」は島原半島の郷土料理。フグの身(主に産卵回遊のトラフグ)を梅干しと葉にんにくと一緒に煮つけるもの。濃い目の味つけなので煮汁が「がね(カニ)」が出す泡のようだとも、炊き上がったとき骨が身から飛び出してカニを思わせるからとも。身欠きを適当に切り、湯通しして冷水に落とす。水分をよくきり、梅干し、葉にんにくとともに酒・砂糖・醤油・水で煮上げる。
ヒガンフグの薄造り できるだけ鮮度のいいものを買い求める。活魚がいちばんいい。みがきを三枚に下ろしてさらしに巻き、一日(24時間)寝かせる。適度に水分が抜けたら、できるだけ薄く切りつける。これをポン酢か柑橘類と醤油で食べる。味のよさと値段を考えるとコストパフォーマンスはいちばんかも。
ヒガンフグのたたき みがきを三枚に下ろして、さらしなどに巻き一日寝かせる。薄皮の方をあぶって温かい内に薄切りにする。やや温かいときにポン酢で食べて美味だし、冷やして食べてもいい。柑橘類がとても合う。
ヒガンフグとギョウジャニンニクのぬた 春になると酢みそで和えたものを食べたくなる。野菜は風味、辛味、苦みのあるものを使いたい。みがきは三枚に下ろして表面をあぶり氷水に落として水分をきる。ギョウジャニンニクはゆでて氷水に落とし粗熱をとり水分をきる。ともに食べやすい大きさに切り、まぜて盛り、辛子酢みそを添える。酢みそで和えてしまってもいい。
ヒガンフグの唐揚げ 頭部やかまの部分、中骨周りを使う。食べやすい大きさに切り、水分をていねいにとる。片栗粉をまぶしてじっくり二度揚げする。揚げたてに塩コショウもしくは、パプリカを振る。
ヒガンフグの一夜干し 毒を除去した筋肉部分を三枚に下ろす。頭部は梨子割りにする。水分をよくきり塩水に20分くらいつける。水分をきり、半日から1日干す。これを焼き上げる。このまま食べてもいいが、適当にほぐして供すと食べやすい。
塩ヒガンフグ 彼岸を過ぎて痩せた個体を使って塩漬けを作る。毒の除去をして筋肉を三枚に下ろす。左右の身をべた塩にして数時間ごとにひっくり返して塩に馴染ませる。これを1日繰り返す。表面の塩をさっと洗ってビニールに密閉して数日寝かせる。適当に切り、焼いてそのままつまんで食べたり、お握りに入れたり、チャーハンなどに使うといい。
ヒガンフグの祐庵焼 身欠きはよく水分をきり、酒・みりん・醤油の地につけ込む。半日以上漬け込んで水分をよくきり、じっくりと焦げないように焼き上げる。身は適度に締まり、合う網があり、調味料と相まってとてもおいしい。
ヒガンフグの韓国風焼き魚 韓国の焼き魚にはソテーと、国内と同様火であぶり焼きにするものとがある。三枚に下ろし、適当に切り、塩コショウする。小麦粉をまぶしてごま油でソテーする。火が通ったらコチュジャン、酢、甘味(梨やリンゴのすりおろしたもの、もしくは砂糖、ハチミツなど)のタレを回しかける。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

釣り情報

千葉県外房でのフグかっとう釣りでは本種も狙いのもの。味がいいので人気があるが、数は釣れない。

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

アカメ
参考京都府 場所京都府丹後地方 
オンビキ
参考文献 場所兵庫県明石 
モンバフグ
参考文献 場所兵庫県浜坂 
サンガツフグ[三月河豚]
参考文献 場所宮城県松島 
アカフグ
参考文献 場所富山県氷見 
チンチンフグ
参考文献 場所島根県浜田 
モチダフグ
参考文献 場所広島県旧加茂郡 
ヒンガンフグ
参考文献 場所神奈川県三崎 
ヨリトフグ
参考林一兵衛さん、文献 場所神奈川県三崎、三重県・志摩市大王町 
ナゴヤフグ[名古屋河豚] ナゴヤ
参考文献 場所神奈川県三崎、兵庫県淡路 
ヒガンフグ
参考文献 場所神奈川県三崎、山口県下関、福岡県柳河 
ヒガンブク
参考文献 場所福岡県志賀島 
ナメラフグ
参考文献 場所福岡県玄海 
モガンバ[藻がんば]
備考藻に居る「がんば」、フグという意味。 参考佐藤厚さん 場所長崎県雲仙市小浜 
モフグ
参考文献 場所香川県 
アカメフグ[赤目河豚]
場所秋田県男鹿、関東、熊本県天草 
コメフグ
場所石川県七尾市七尾魚市場 
メアカフグ[目赤河豚]
場所宮城県石巻、静岡県伊豆