2004年10月7日
三河の旅 06 海老せんの青山 その1
2004年8月7日から翌8日まで、愛知県幡豆郡一色町を旅しました。
三河の旅目次へ! ■市場魚貝類図鑑
一色魚市場から吉良に向かう道から底引き網の船が見えた。これが一色トロールの大軍団ではないか?
青山さんおすすめの食べ方が、海老せんのトースト。これにチーズをのせると和風のカナッペとでもいえそうだ
→海老せんの青山東部店。この裏側に工場があり、ここで昔ながらの海老せんが作られている
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 一色には無数の海老せんの製造業者があり、生産量はだんとつの日本一である。一色に魚市場に来ただけで大きな海老せんの工場が目について、「海老せんの町に来たのだな」と思ってしまう。
 これは三河湾の豊富なエビの水揚げがあり、小エビの場合には主に干しエビなどにされていた。ところが干しエビに加工するのにも当時は当たり前のことではあるが天日で乾燥するしかないわけで、加工できる量は天気次第であるし、また量的にも制約があった。加工が追いつかないものはときに肥料として畑にまかれてしまっていたようだ。これは57歳の毎味水産の藤井社長、今年61歳になる青山の専務取締役である青山旭さんから聞いた話であって、こんな夢のような話なのだけれど戦後でもエビは有り余るほどとれていた。

 ここでの主題は海老せんと加工原料となる三河湾で「あかしゃえび」と呼ばれる小エビである。これから話は脇道にそれるが名古屋、愛知といえばエビフライ(名古屋では「えびふりゃー」だったかな)といわれるが、これも本来は三河湾、伊勢湾でたっぷり大型のクルマエビがとれたからかもしれない。実際、今でも一色の市場には大型のクルマエビやクマエビ、中型のヨシエビ、やや小型のサルエビ、小エビでしかないアカエビ属の根鰓類であふれている。

 閑話休題。この小エビを最初に海老せんべいに加工、販売を始めたのが明治中期のこと。以後、現在に至るまで一色は海老せんべいの生産では日本一を続けている。
 ただ一色で生産されている海老せんべいといっても多種多様である。多くは機械を使い大量生産されたものから昔ながらの手焼きのものまで、生産量とともに生産者・生産される海老せんべいも多彩であるのだ。
 この多彩な海老せんであるが一色に来るならぜひ味わって見たいとともに、どのように作られているのかも知りたいものだと思っていた。そこで一色でエビの加工をしている毎味水産社長、藤井務さんに単刀直入に聞いてみた。
「一色のえびせんではどの店のものがいちばん好きですか?」
「そうだな、うまいのは青山。わしもときどき買うてくる」
 取引先ではないという青山にはその藤井社長に連れて行ってもらった。
●今回の海老せんの製造工程に関しては「毎味水産水産でのエビ加工」から続けて見ていただくとわかりやすい。

 一色の町並みからはずれて吉良のほうに車を走らせて到着したのはあまりにもそっけない国道沿いの店舗(青山の店舗は一色町一色にもあり、そちらが本店)。その裏に工場がある。ここで迎えてくれたのが前記した青山旭さんである。考えてみれば毎味水産の藤井社長に会ったのもほんの1時間ほど前であり、ましてやその初対面の方に連れられた怪しい人物に青山さんはどう思っているだろうか?
「わしはこれがいちばんうまいと思う」
 試食の容器から取り出したのは特上花丸という商品。つられて口に入れて驚いた。これはせんべいではない。せんべいといえばパリパリしたものと思いこんでいたのが、これはしっとりして柔らかい。しかも、これがお菓子なのだろうかと疑問に思ってしまったのはそのエビの風味と味の濃さである。
「どうじゃ、パリパリせんじゃろう」
 相変わらず、藤井社長は笑いじわをいっぱい作っていたずらっ子のようにこちらを見ている。
 これをかたわらで見ていた青山さんが、
「乾燥剤も入っとらんでしょう。それでぱりっとしていないんで、知らない人は湿気とると思うんです。それで一般の贈答用のセットには昔ながらの『特上花丸』と、『きわめ』(本来のエビを主に使いでんぷんなどが少ないもの)は入っとらんのです」
 別物として食べた味わいの深さは生えびだけを使い、味つけは少量の塩と砂糖だけであるから出せるものだという。またぱりっとさせたかったら軽くあぶってもいいという。奥から若い女性がチーズを乗せて軽く焼いたものを持ってきてくれた。これは香ばしく、チーズを乗せるとちょっと洋風、カナッペのようだ。ぱりっと焼き上げるためにはでんぷんの量を多くすればいい。ただそれではエビのうまみがなくなってしまう、それよりも昔ながらの焼き方の方がエビの味が生きているのだ。
 藤井社長は人が待っているからと会社にもどっていかれた。それで青山旭さんの息子の拓司さんに工場で実際に海老せんべい作りを見せてもらうようお願いする。すると午後から「きわめ」を作るので、と快諾いただいた。
 ひとまず、辞去して車を走らせる、そのときにも舌と口腔にエビの強い味わい残って、また海老せんをつまみたくなってしまう。昔ながらの手焼きの海老せんというのは、こんなものであるようだ。
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