ゲンゴロウブナ


30cm SL 前後になる。ヒゲがない。体高が高く、鰓耙数は92-128。

魚貝の物知り度 ★★★
知っていたら通人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱ニシン・骨鰾下区骨鰾上目骨鰾系コイ目コイ科コイ亜科フナ属
外国名
英名/Crucian carp
学名
Carassius cuvieri Temminck and Schlegel,1846
漢字・学名由来

漢字 「源五郎鮒」。
由来・語源
●応仁の乱の頃、滋賀県琵琶湖西岸堅田の漁師・源五郎というものがあり都にフナを売りに行き、大変評判がよかった。その内、今出川の大納言家の姫君に恋をする。自分の意を伝えるために立派な焼きフナを作り姫に献上、その腹の恋文を忍ばせて、やがて恋が成就した。
●堅田の漁師・源五郎というものがあり、常に大きなマブナを取り、安土城主に献上していたので、マブナの大きいものを「源五郎鮒」というようになった。
●堅田に源五郎という魚屋がいて、この魚だけを売ったから」など。
フナの語源
■ 「食う魚〈くふな〉」の語頭を落としたもの。
■ 「ふ」は田んぼを意味し、「な」は魚の意味。
■ 本来国内にいない魚(実際は間違い)で漢字とともに入ってきた。中国での漢字「鮒」を音読みし、魚名を表す語尾「な」をつけた。
■ 煮ると柔らかく骨まで食べられるところから「骨なし」の「ほねなし」が転訛した。

地方名・市場名
マブナ
場所滋賀県高島市今津 
カワチブナ[河内鮒]
備考主としてため池などで養殖したものを。 場所大阪府、茨城県霞ヶ浦 
ヘラブナ[平鮒] ヘラブナ[箆鮒]
備考釣りの世界ではヘラブナ(平鮒)、ヘラブナ(箆鮒)。この「へらぶな」という言葉は釣りを通して広がったもの。 場所釣り人の間で、全国的に 
オウミブナ[近江鮒]
備考霞ヶ浦など移入してきた地域ではオウミブナ(近江鮒)、カワチブナ(河内鮒)と呼ばれていた時期もあった。 場所茨城県霞ヶ浦など 

概要

生息域

淡水魚。
琵琶湖、淀川水系だけに棲息していた固有種。それが改良され「かわちぶな」となり、ヘラブナとなり日本全国に移植されている。

生態

フナ属では唯一、種として独立性が外見から感じられるもの。
フナの仲間ではもっとも鰓耙数が多く水中の植物プランクトンを漉しとって食べている。
産卵期は4月から7月。

基本情報

大阪府などで養殖されていたもの。釣りのために日本全国に移入されている。
食用に改良されたものは関西では少ないながら流通していおり、一部に味の良さが認められている。
対するに関東では食用と認識されていない。ゲンゴロウブナという名はほとんど知られていない。
もっぱら釣りの世界のヘラブナ(平鮒)で知られる。釣りの対象魚としては非常に人気が硬く、日本各地で盛ん。
青みを帯びて丸いのが胆嚢。つぶすと非常に苦い。

水産基本情報

市場での評価 関西などでは食用として細々と流通している。値段はあまり高くない。
漁法 養殖、えり(定置網)
代表的な産地 滋賀県、大阪府
食用としては重要ではないが、釣り関連では重要。ため池、ダム湖、湖などで釣り船、釣り宿などを経営する企業、人が少なくない。

選び方・食べ方・その他

選び方

原則として生きているもの。やせていないもの。

味わい

旬は冬から春。
生きているものを調理する。生で食べる場合には手早く内臓を取り除く。
養殖したものはクセも泥臭さもなく白身で美味
鱗は大きく取りやすい。皮は厚みがあり強い。骨は硬い。
血合いが赤く透明感のある白身。熱を通しても硬く締まらない。
注/肝吸虫が寄生している可能性があるので野生を食べる場合には自己責任で。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ゲンゴロウブナの料理法・調理法・食べ方/生食(洗い)、汁(みそ汁)、焼く(幽庵焼き)、揚げる(唐揚げ)、煮る(みそ汁)
●注/ 淡水魚の生食には寄生虫などの危険がともなう。食べるなら自己責任で。


ゲンゴロウブナの洗い 生きているものを鱗つきのまま三枚に下ろして、素早く皮を引き、流水でていねいに洗う。水分をよく切り、尾を手前、皮目を上にして薄くそぎ切りにする。これを流水で洗い、氷水で占める。酢みそで食べてもいいし、しょうが醤油、わさび醤油で食べてもうまい。フナの洗いは魚類中トップクラスの味わいである。


ゲンゴロウブナのみそ汁 ここではあらを使ったが、丸のままみそ汁に使ってもいい。苦玉(胆嚢)以外の内臓もていねいに洗って入れるといい。湯通しして冷水に落として表面の滑りを落として、水切りをする。この湯通しはしない人も多い。これを水から煮出してみそを溶き、じっくり煮る。骨も柔らかくなり余すところなく食べられて非常にうまい。
ゲンゴロウブナの幽庵焼き(祐庵焼き) そもそも幽庵焼き(祐庵焼き)は淡水魚、とくにコイやフナ、ニゴイなどのために考えられた料理だと思っている。酒・しょうゆ・みりんを同量合わせた地に半日つけ込んで焼き上げたみた。フナは基本的に臭味のない魚で、この調味料は臭み消しではない。むしろおいしさの相乗効果を生み出して美味。


ゲンゴロウブナの皮の唐揚げ 洗いなどにするときには、鱗を取らず一気に皮を引く。この鱗つきの皮を揚げたもの。鱗はやや硬いので低温でじっくり火を通し、最終的に高温にするといい。さくっとしてうま味豊かだ。
ゲンゴロウブナのみそ煮 あらをみそ仕立てで煮上げたもの。ここでは鱗を取り、あらを湯通しして表面のぬめりを流している。じっくり骨まで柔らかく煮て、ほぼすべてが食べられる。卵巣、内臓も非常にうまい。

好んで食べる地域・名物料理

琵琶湖周辺、京都、大阪


ゲンゴロウブナの子つけ フナの身を薄造りにするか、糸状に切り、ゆでて煎った卵をまぶしつけたものを、子造り、子まぶりともいう。滋賀県、京都府、島根県、岡山県などで造られているものだが、なかなか美味。

加工品・名産品

ふなずし

釣り情報

独特の腰のある竿に、長い立ち浮き、その下に2本バリをつけるというのが基本。ハリのは返しのない、へらぶなバリを使う。餌はマッシュかサナギ粉やサツマイモなどを合わせた複合練り餌。ハリだけでなく、竿、浮木などにも「へら」がつく人気の釣りである。この道具類であるが伝統工芸の粋をこらせたものも少なくなく、「へらぶな釣り文化」とでもいえそうである。また、へらぶな釣りは原則的にキャッチ&リリースである。

歴史・ことわざなど

河内鮒 大阪で飼育し改良したものが、カワチブナ(河内鮒)、ヘラブナ(平鮒)だ。琵琶湖からまた大阪などから全国各地の池、ダム湖などに移植されているが、在来のフナを脅かす存在となっている。
佐賀県には1933年(昭和8年)に移植したとされており、全国の移植の歴史も調べると面白いであろう。関西地区では食用となっているが、移植先ではもっぱら釣り魚となっている。
ヘラブナ(平鮒) 釣りの世界ではもっぱらヘラブナ(平鮒)と呼ばれている。