202008/29掲載

奄美大島魚味噌(いゅうみすぅ)

なり味噌(ソテツ味噌)

ソテツ味噌、いゅうみすぅ

たえず飢餓に脅かされてきた奄美大島で、貴重な栄養源となったのがソテツ(裸子植物門ソテツ綱ソテツ科ソテツ属)だ。利用するのは雄株の幹(ソテツは雌雄異株)と実(なり)。ともに有毒で水にさらすなどして毒性分を除いて利用される。この毒抜きが不十分だと死に至ることもある。
「なり味噌」はソテツの実と玄米で発酵させて麹を作り、蒸した大豆と合わせて作る。
現在作られているものは塩分濃度が低いが、これが本来の味なのかは不明。
魚味噌(いゅうみすぅ)はスズメダイ(オヤビッチャ、アマミスズメダイなど)、タカサゴ、クサヤモロなどを焼いてほぐしたものと合わせたものだ。
『新版 シマヌジュウリ 奄美の食べものと料理法』(藤井つゆ著 南方新書)、『奄美の伝統料理』(泉和子 南方新書)

アカウルメの魚味噌(いゅうみすぅ)

ニセタカサゴの魚味噌、奄美大島

奄美大島では魚を「いゅう」、「いゆう」という。この魚を素焼きにして、「なり味噌(ソテツ味噌)」と和えたものである。
『聞書き 鹿児島の食事』には「なり味噌」と島ざらめ(サトウキビで作った砂糖)と合わせておき、焼いた魚と和えるとあるが、みそとざらめ、魚の一体感がない。
『奄美の伝統料理』(泉和子 南方新書)には「なり味噌」とざらめを合わせたものを油で炒めて、焼いてほぐした魚を合わせまた炒めるとある。
油で炒めた方が遙かに一体感がありおいしい。
ここではアカウルメ(赤潤目。タカサゴもしくはニセタカサゴ)を焼いて置く、炒めた「なり味噌」とザラメに焼いた魚の身を加えて、少ししっとりするくらい炒める。
あまくまったりした優しい味わいで、おかずというよりも、おやつのような味だ。

シロウルメの魚味噌(いゅうみすぅ)


『奄美の伝統料理』(泉和子 南方新書)にあるシロウルメ(クサヤモロ)で作ってみた。
シロウルメを焼き上げて冷まして、ほぐし骨などを取り除く。
「なり味噌」とざらめを合わせて油で炒め、ほぐしたシロウルメの身を加えてまた炒める。
アカウルメ(タカサゴ、ニセタカサゴ)よりもシロウルメ(クサヤモロ)の方がうま味があり、身が緻密などでおいしいと思う。

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