ヒラスズキはいつもは塩焼きだけど、気分をかえて若狭焼き

いちばんうまいのは冬だけど4月のヒラスズキも矢鱈にうまい


八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で高知県須崎産ヒラスズキ36cm・868gを買った。最近、高知県からの荷が多いのは、産地としての高知県ががんばっているためかも知れぬ。
さて、ヒラスズキとスズキは系統的に近い種で、非常に似ている。実際、片山正夫が1957年に記載するまでスズキ属はスズキ1種だけだと考えられていた。
分類はともかく、両種、味はまったく違っている。ヒラスズキは外洋に面した岩礁域にいる魚なのに対して、スズキは淡水の影響を受ける水域にいることが多い。
ヒラスズキは白身のマダイなどに似た身質で、スズキはどことなく淡水魚的な風味がある。これが生息環境の違いと、エサとなる魚や甲殻類もまったく違うためではないかと思っている。
産卵期は秋から春にかけてと長く、旬は秋から春で最旬は冬だと思っている。
4月末の今回の個体は、生殖巣はほとんど痕跡的で産卵後の個体だ。産卵のダメージからの立ち直りが早いようで、脂がほどほどあった。刺身にすると非常に味わい深い。
改めてヒラスズキの旬は非常にわかりにくい、と感じさせられた。

焼いた魚の香りと焼けた発酵調味料が混ざり合う


さて、高級魚ヒラスズキは、「まずは生で食べて」となるが、今回だけは初手から焼き物にする。
単純に塩焼きにしてもいいが、今回はご飯の友なので、調味料の風味をプラスしたいと考えた。幽庵焼きにしてもいいし、西京漬けにしてもご飯に合うが、すぐに昼時だったので、時間が許さない。手っ取り早く作れる「若狭焼き」に決めた。
本来、「若狭焼き」は「若狭もの」と呼ばれる、グジ(アカアマダイ)の一塩もの(一汐ものとも。産地で軽く塩をしたもの)などを焼き上げるときの料理法である。単なる塩焼きは素材としての魚そのものを味わうものだが、若狭焼きはその直接的な部分を軽減させたものである。言い換えると洗練させたといってもいい。
ちなみに、基本的には「若狭地」と呼ばれるたれを塗りながら焼き上げれば、若狭焼きである。ただ酒を塗りながら焼き上げても若狭焼きという向きもあるので、「若狭焼き」の定義を狭めすぎてはならない。
水洗いして三枚に下ろして切り身にする。
水分をていねいに取り除く。
本来は軽く塩をして表面に出て来た水分を拭き取るのだが、ここでは省略する。最近、塩分に弱くなったためか、軽い振り塩でも舌に余分な塩分が感じられるからだ。塩味(しおあじ)が好きなら下ごしらえに振り塩をすると焼き上がりがきれいに上がる。
中火で焼き上げて、8分から9分通り火が通ったら「若狭地(酒多めと醤油を合わせたもの)」を塗りながら仕上げる。
魚の焼き物はどうしても魚魚した香りが感じられるが、発酵調味料を使うことで、ほとんど感じられなくなる。
マイルドになるといってもいいだろう。
どことなく着飾った味というべきだが、意外にご飯に合う。
当たり前だけど酒にも合う。


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