フグ科の最高峰の味のひとつ、水フグの湯引き

目がついた風船のような姿なのである


静岡県熱海市、網代漁業、網代魚市場で分けていただいた魚の中に大きな「水フグ(ヨリトフグ)」が混ざっていた。大好きな魚で、こいつだけはどうしても食べたかったために分けていただいた。
非常に昔の話になるが電動リールと言ったら深海のものしかなく、水深200mくらいなら手巻きであった。中深場釣りになると錘が重いので手巻きだと重労働なのだ。その重い仕掛けに白い風船、「水フグ」が2尾もついてくると、寒い時季でも汗が噴き出すくらいたいへんだった。この「水フグ」が3連発、すべてのハリについていようものなら、重いし、ハリス切れはするしでどうにもやりようがなかった。
釣り師は捨てるが、これを船頭は拾って帰っていた。当時、下田の船宿で出してくれていたのが「水フグ」のみそ汁である、皮も肝も全部入ったみそ汁は想像を絶するうまさだった。
こんなにうまい魚なのに、残念なことに今や相模湾では深刻な未利用魚なのだ。売れない魚の代表格で、売れなくしている犯人は厚生労働省である。フグをフグ調理師(県によって名称が違う)以外に出来なくしているためだ。
完全に無毒のシロサバフグや本種などさえ、資格のない料理人に扱えなくしているのは非科学的である。
フグは種の同定が出来、毒の部分を分けられるだけでいいはずだ。
なのに技術面での制約がある。ついでに言わせてもらうと皮に毒のないトラフグの、皮の処理は安全とは何ら関わりがない。
厚生労働省と各都道府県に、あの「水フグのみそ汁」を返せ! といいたい。

ぷるんぷるんほどうまいものはない


さて、現在、フグと名のつくものの肝は食用不可(これも変だ)なので、水洗いして皮と筋肉だけにする。
この皮付きの筋肉を沸騰した塩水でゆでる。
氷水に落とし、表面のぬめりと食感の悪い皮膜などを取り去る。
これを食べやすい大きさに切る。
料理といってもこれだけのことだ。
大根おろしと赤おろし、すだちを添えて、皿の中で即席に、おろしポン酢を作り食べる。
食感はアンコウ(キアンコウ)に似ている。アンコウの湯引きは普通だが、それ以上に味がいい。
ぷるんとした食感の中に味があるのである。
ポン酢がとても合う。
これで飲んだ、白隠正宗正1合がよかった。
こんなにうまいヨリトフグを未利用にしたらもったいないぞ、と繰り返し言いたい。


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