シログチ


30cm SL 前後になる。頭は丸みを帯び、やや細長く側扁(左右に平たい)する。尾は尖形。

魚貝の物知り度 ★★★
知っていたら通人級
食べ物としての重要度 ★★★★
重要
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ニベ科シログチ属
外国名
Silver croaker
学名
Pennahia argentata (Houttuyn,1782 )
漢字・学名由来

漢字 白愚痴
由来・語源 浮き袋を使ってググっと鳴く。これが愚痴を言っているようなので。また「白」はニベを「黒ぐち」、「黄ぐち」に対しての呼び名。〈駿河にて「しろぐち」と云〉『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)
〈ニベ科イシモチ(グチ・シログチ)〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)

Houttuyn
Maarten Houttuyn (Martinus Houttuijn マールテン・ホッタイン 1720-1798年)。オランダの医師、博物学者。リンネの継承者。ドクダミなどを記載。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。水深15メートル〜140メートルの砂泥地。
青森県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、青森県〜九州南岸の大平洋沿岸、瀬戸内海、有明海、東シナ海、。
渤海、黄海、朝鮮半島西岸・南岸、済州島、中国東シナ海・南シナ海。

生態

■ 産卵期は5月〜8月。
■ 内湾などの砂泥地のやや沖合に生息する。
■ 砂泥地にいる環形動物や甲殻類などをエサとする。
■ 浮き袋を使ってグーグーと鳴く。鳴く魚。

基本情報

以西底曳き網で大量に水揚げされていたもの。練り製品の原材料として重要で、小田原で蒲鉾がさかんに作られるようになったのも、九州で水揚げされるシログチのためだとも言われている。
鮮魚としても人気がある。関東では塩焼き用の魚として用いられ、韓国ではごま油で焼いて食べる。
スーパーなどでも比較的よく並んでいる。魚屋では定番魚。
近年、やや人気が落ちてきているように思われる。

水産基本情報

市場での評価 年間を通して安定して入荷がある。安い。
鮮魚以外にも練り製品としての流通があり、こちらも非常に重要。練り製品の原料としては常に安定して高値。
漁法 底曳き網
主な産地 長崎県、愛媛県、香川県など

選び方・食べ方・その他

選び方

触って硬いもの(持ってピンとしている)。鰓が赤いもの。

味わい

旬/春〜初夏、秋
非常に鮮度落ちが早い。
鱗は柔らかく、取りやすい。皮は薄い。骨は細いが硬い。
白身で水分が多く、クセがない。卵巣の味は非常にいい。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

シログチの料理法/焼く(塩焼き、幽庵焼きなど)、ソテー(ごま油焼き、ムニエル)、揚げる(フライ、唐揚げ)、生食(刺身、酢じめ、焼霜造り)、煮る(煮つけ)
シログチの塩焼き 水分を多く含んでいて、適度に繊維質で身離れがいい。焼くと皮目に好ましい風味がある、まさに塩焼きに向いた要素だらけだ。塩をして30分以上置く。これをじっくり焼き上げる。皮目の風味がなんともいえずうまい。焼いても硬く締まらず、甘味がある。

シログチの幽庵焼き(祐庵焼き) 。酒、みりん、しょうゆを同量合わせた漬け地に半日から1日つけ込んで焼き上げたもの。季節の柑橘類、高知県の「ぶっしゅかん」、ゆず、すだちなどの香りをつけるとまたより一層美味に。
シログチのごま油焼き 水洗いして水分をよく拭き取る。これを多めのごま油でじっくりとソテーする。焼き上がりに、コチュジャン、ごま油、煮きり酒、少量の砂糖、ゆずを合わせたタレをかけてゴマを散らしてネギをのせる。皮目がぱりっと香ばしく身に香ばしさがある。
シログチのムニエル ムニエルにしてもうまい。水洗いしてよく水分を拭き取る。丸のままに塩コショウし、小麦粉をつけて焼く。バター、サラダ油、オリーブオイルなどお好みの油を使って欲しい。この油でなければならないとは限らない。
シログチのフライ 三枚に下ろして腹骨、血合い骨などを取る。好みで皮を引いてもいいし、そのままでもいい。塩コショウして小麦粉をまぶして溶き卵をくぐらせてパン粉をつけて揚げる。バターでソテーするようにしてもいい。水分が多く、適度に繊維質なのが揚げることで適度にしまって甘みがありうまい。
シログチの刺身 晩春、初夏の脂がのっていて鮮度がよければ刺身は絶品。三枚に下ろして腹骨、血合い骨を抜き皮を引いて刺身状に切る。青魚に優るうま味があり、脂の甘味もある。非常に美味である。
シログチの焼き霜造り 皮目のうまさは魚類中でもトップクラス。この皮目のうまさをあぶることで浮き上がらせる。三枚に下ろし、腹骨、血合い骨を取り、水分をよくペーパータオルなどで取る。皮目をあぶって急速冷凍庫で冷やし、皮が落ち着いたら切りつける。
シログチの酢じめ 三枚に下ろして血合い骨を抜く。皮付きのまま塩をして置き、一度水洗い。これを甘酢(生酢)に10分ほどつけて、酢をよく切る。1時間ほど酢を落ち着かせて刺身状に切る。翌日食べてもおいしい。
シログチの煮つけ 煮ても硬く締まらす、身離れがいい。東京などでは庶民の味の代表格なのは、この煮ても焼いてもうまいからだと思う。水洗いして鍋に入れやすい大きさに切る。これをしょうゆ・砂糖の味付けでコッテリと煮るとご飯に合う。酒・しょうゆであっさり煮ても、酒・みりん・しょうゆで煮てもいい。要は好みで。
シログチのみそ汁 水洗いして適当に切ってもいいし、姿を残して2〜3等分してもいい。一度湯通しして冷水に落とす、残った鱗やぬめりを流して水分をよくきる。これを水(昆布だしでも)から煮だしてみそを溶く。何回も煮返してもいい。

好んで食べる地域・名物料理

塩焼きの定番魚 東京を始め関東では塩焼き用の魚という認識が根強い。これは東京湾でよく揚がったためだ。今でもそれなりにとれている。

加工品・名産品

蒲鉾 日本各地で上質の練り製品に利用されている。
シログチの開き干し 底曳き網などのある産地ではときどき干ものを見かける。みりんとしょうゆ、塩味だけのものなど多彩。[徳島県鳴門市北灘など]
シログチの蒲鉾 蒲鉾材料としては上等の部類。近年、原材料不足から単独で作られるものは希。
とり入れ(安平) 「ぐち(シログチ)」、タラ類などが原料の浮き蒲鉾。口の中でほどよく崩れて微かに溶けていくような感じがする。夏の味だが最近では季節を問わず作られている。[青木蒲鉾/徳島県徳島市]

釣り情報

ひところ東京湾の汚染が顕著になり(今はもっと深いところで深刻化しているようだ)、釣り魚が激減したときでもけっこう釣れて人気があったのが本種である。三浦半島でも有数の深い湾である金沢八景でも多くの遊漁船がでていた。東京ではこれを「イシモチ釣り」といった。胴突きの2本バリに片天秤、エサはゴカイかアオイソメ。これが良く釣れる。また釣り人しか知らない味わいに刺身があるのだ。

歴史・ことわざなど

■ すり身原料(練り製品の原料)として重要。高級とされる。
■ 関東を中心に各地で頭部にある耳石が硬いので「石持」と呼ぶ。
■ 「イシモチ」と呼ぶのは関東ではシログチとニベ。
■ 「イシモチ」とつくのはニベ科シログチだけではなくテンジクダイ科などにある。
■ 韓国などでは珍重して、干して調味料。食材として利用する。
関東での呼び名、「石持」の由来 関東ではもっぱらイシモチと呼ばれる。ニベ科の魚には頭部に比較的大きな耳石がある。頭部などを割るときに包丁に当たるし、煮つけを食べているときれいな石が出てくるので印象に残るのだろう。

地方名・市場名

ガマジャコ[蝦蟇雑魚]
参考文献 場所三重県熊野浦、和歌山 
クジ
参考文献 場所島根県松江 
アブライシモチ
参考文献 場所福島県小名浜 
ガクガク
参考文献 場所長崎県長崎・長崎魚市場 
アカグチ キグチ キングチ
参考文献 場所長崎県長崎魚市場 
イシモチ[石持・石頭魚・石首魚]
備考「石持」は内耳にある扁平石(耳石のいちばん大きいもの)が大きく、頭部を食べていると口にあたるため。1950年代まではイシモチが標準和名だった。 場所関東、富山県高岡市 
クチ
場所和歌山県和歌山市雑賀崎 
グチ
場所徳島県鳴門市北灘・徳島市漁業協同組合、愛媛県西条市 
ハダカイシモチ[裸石持]
場所福島県いわき市久ノ浜 正栄丸 
ヒラクチ
場所和歌山市(高瀬有希子) 
コイチ シラクチ シラグチ シラブ シラブ ヌベ モチウオ
参考文献より。