202402/03掲載

穴子でじゅんじゅん、あり、か? なしか?

滋賀県ではすき焼きをじゅんじゅんという


この料理名を初めて聞いたのは、1980年前後のことだ。
まだおんぼろシビックに乗っているとき、滋賀県安土あたりで大迷いに迷っていたとき田園のど真ん中で、地獄で仏、若い夫婦にやっと出会え、道を聞くことができた。
二人は、弁当をつかっていた。ナビのない時代ならでは行き着いた人気のまったくない畑、もしくは水抜きした田んぼの周りは実にのどかだったし、きれいなところであった。
「昼ご飯が食べたいので店を探している」と言ったら、近江八幡市の食堂の場所を教わり、少しだけ話し込んだ。
ついでに梅干し入りのお握りを恵んでくれたのは、懐かしい想い出である。そのとき、「●●●なんとか入りの方がいいけど、もうない(意訳)」という話だった。この「●●●」が気になってしゃないけれど、やや塩加減のきついお握りのうまかったことの方が印象に残っている。
それから30年後に、滋賀県長浜市余呉川で魚取りをしていたときに会った、聞いたことにはぜんぜん答えてくれない、語りまくるバアサマ達が、その「●●●●●●」のヒントをくれたのだ。要するにすき焼きの残りである。
たった2名から聞いた話で判断してはいけないけど、このユニークな料理名が日常的に作られていて、残ったものをお握りの種に使うのは1人だけではない、ようだ。
滋賀県ではすき焼きのことを「じゅんじゅん」という。牛肉で作ることが多いようだが、湖魚のイサザ(ハゼの仲間)、ナマズ、モロコ(ホンモロコ)、ウナギなどでも作る。
「じゅんじゅん」と知り、自分でもで作り始めたのは、1991年に『聞書き 滋賀の食事』(農文協)に作り方が載っていたからだ。
滋賀県の素晴らしいところは、この聞書きシリーズの後にも、日常的な食事の歴史と現状を調べ続けたことである。

宮城県産活け締めマアナゴは大振りで脂がのっている

マアナゴ

個人的にはウナギとイサザがいちばんうまいと思っているが、まだまだ決断を下すには食べている回数が少なすぎる。
「ウナギのじゅんじゅん」は八王子総合卸売センター、八王子淡水で1尾開いてもらってときどき作っているが、久しぶりに作りたいなと思って、ウナギ買いに向かっていたのだ。
そのとき、八王子総合卸売協同組合、舵丸水産に冬なのに脂ののっていそうなマアナゴを発見。これで、「じゅんじゅん」を作ってみたらどうだろう? と閃いたのである。
0.5kgなのでかなりの大アナゴである。クマゴロウが下ろしているのを見ても脂があるのがわかる。

煮え加減によって味が変わる、そこがじゅんじゅんのよさ

マアナゴのじゅんじゅん

持ち帰り、背鰭や腹鰭を取る。
半身をまな板に乗せて湯をかけるとぬめりが白く浮き上がるのでこそげ取る。
左右に切り分け、できる限り薄くそぎ切りにする。
これを割り下(酒・みりん・好みで砂糖・水を合わせて一煮立ちしたもの)で煮ながら食べる。
野菜は玉ねぎ、芹で、糸こんにゃくは必須である。
これが意外にうまいのにびっくり。
割り下の中で好みの煮え加減にして食べるのだけど、やや煮すぎくらいの方がボク好みであった。
ただ、ウナギと比べると、味にこくがない。
割り下をもう少し濃くするか、マアナゴの骨などで別にだしを取り、加えるべきだったかも。

このコラムに関係する種

マアナゴのサムネイル写真
マアナゴConger-eel海水魚。沿岸砂泥底。北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、屋久島、北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海、喜界島。渤・・・・
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