202404/04掲載

炒り粉は金沢では飲み物だった

お湯ではなく冷たい水で溶いて冷たくして飲む


ドイツ文学者の西義之は1922年台湾生まれ。内地(1945年以前の言語)に来たのは、「四校」と呼ばれた、旧制第四高等学校に入るためだろう。ということは彼の国内での故郷は金沢ということになる。「四校」というと井上靖の「夏草冬濤」の世界である。
『定年教授の食卓』(春秋社)に、雑誌やラジオで何度も話題になったことのある「ドリコノ」とともに「炒り粉」の話が出てくる。
〈田舎(たぶん石川県金沢市)で「炒り粉」を冷たい水で溶かして、塩と砂糖で味つけをして飲んでいた〉
「炒り粉」は、ボクが小さい時は「はったい粉」。他には「麦こがし」、「香煎」、「おちらし」ともいう。麦を香ばしく炒って粉状にした食品で、中世以前からの食品である可能性が高い。
徳島県美馬郡貞光町(つるぎ町貞光)の家では、お湯で錬って食べていた。
どろっとしつつも飲めるくらい薄く溶いて、甘い味つけをして飲むというのはまったく未知の世界である

ココアのように見えるがココアよりもおいしいと思う


千葉県匝瑳市『小西製粉』の「香煎」をグラスに入れて、塩少々と砂糖を入れて少しずつ水を加えて錬る。
ちょうど濃い目のココアくらいにして飲んだら、やたらにボク好みであった。
はっきり言って好きな味だ。
ココアはめったに飲みたくならないけど、飲み物としての「炒り粉」はいくらでも飲める。

ボクの故郷のやり方、お湯で錬ってつくってもおいしい


久しぶりにボクの故郷でのやりかたで食べた。こちらもおいしい。
なんとも言えないが、「はったい粉」の食べ方がひとつ増えて得した気分になった。
この懐かしい食品は、呼び名が多いだけではなく、食べ方も多彩なのかも。


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