202403/17掲載

最高にうまい刺身を凌駕する、イシダイのバター焼き

イシダイは旬と大どれが重なる魚だ


相模湾でイシダイは、3月から4月いっぱいまでまとまって揚がる。この大どれと旬と重なる。
これは全国的な傾向なので、神奈川県だけでなく日本全国がイシダイの食べ頃を迎えているのだ。
神奈川県小田原でも当然の如くイシダイが大漁である。扱いきれないくらいの量が揚がると漁師さんなどはてんやわんやで大変なのである。
イシダイのすごいところは、形がいいと、どんなにとれても、買い手がいることだ。


さて、神奈川県二宮町で料理店を営む、Kai君(ボクと比べると遙かに若いので「君」でもいいかな)と話を始めると止まらなくなる。ボクの場合、食べ歩きとか、うまいもん食いたいだけ部族は苦手である。むしろ、食材好きすぎて困る人こそが同じ部族だと思っている。Kai君の場合、若いのに食材とか、魚の良し悪しに対して非常に鋭いのだ。
そんな話をしている傍らで、いつも珍しい魚などを探させて頂いている、二宮定置でもイシダイ祭で大騒ぎ、といった感じになっていた。イシダイは活魚出荷なので、重労働なのだ。扱いきれないときや出荷できないものは、ときどき彼らのおかずにもなる。
Kai君から、「(二宮定置の若い衆は)最近、バター焼きにして食べているみたいですよ」という話を聞く。確かに刺身だ、煮つけだでうれしいのは、ボクのように年寄りだからで、若いと飽きるだろう。
ちなみに二宮定置の若い衆はそのへんにいる、所謂グルメ気取りが束になっても敵わないくらいに魚を知っているのである。だから魚の扱いがていねいだ、ともいえるだろう。
さて、そのイシダイを二宮定置の若い衆に分けていただく。いつもながらにありがとう。


朝どれのイシダイを、お昼ご飯のおかずにするボクって、なんて贅沢なんだろう。
まずはイシダイを水洗いする。
三枚に下ろして皮を引き、適当に切る。
塩コショウして全粒粉(実に素晴らしい食材である)をまぶして多めの油でソテーする。
つけ合わせは、秦野市にある直売所、『じばさんず』で買ったザーサイの薹立ち菜、はなびらたけ、加温時間も少なくなったというので買ったトマトだ。
ザーサイとはなびらたけは一緒にソテーする。
切り身の表面がこんがり香ばしくなったら余分な油を保存容器に移して、バターで風味づけする。ちなみに最近、ボクはバターがダメになったのでマーガリンを使っている。ときどきマーガリンをバターの代用品とか蔑むバカがいるけど、マーガリンとバターは同格だと明言しておきたい。
風味づけして醤油をたらすとご飯に、そのままだとパンに合う。
一緒に作った刺身なども、腰が抜けるほどおいしかったのだけど、ムニエルの方が上だった。
脂ののったイシダイはうま味からして群を抜いているのだ、そこにオイルがきて、全粒粉の香ばしさが来るのだから、まるで鉄人28号みたいだ。
そろそろこの国も人間も、ムニエルやポワレなどソテーものが御馳走だ、とわかってもいいと思うな。
ボクはがちがちの保守主義者(いいものは残し、悪いものは放棄するという考えで、自分に対しての保守ではない)だ。できるかぎりこの国の料理法を残したいけど、温暖化と漁獲量の激減がそれを許さない。
取り分け刺身至上主義はダメだ。
今回だけは刺身よりもムニエル(バター焼き)に軍配を上げる。
ちなみにこの最上級のイシダイは、小田原に来れば買える。
小田原は新宿から1時間半弱なので、お買い物圏内の人はいらっしゃい! なのだ。

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イシダイのサムネイル写真
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