202312/28掲載

ハマトビウオは春トビから冬トビへ

頭が小さくて非情にスマートな個体を選ぶべし

千葉県鴨川産ハマトビウオ

房総半島以南の太平洋側を回遊しているトビウオである。伊豆諸島では「くさや」になり、また大型なので鮮魚としても人気が高い。関東ではもっぱらは「角トビ」とか「春トビ」と呼ばれている、トビウオの魁である。
標準和名、ハマトビウオは正体不明の標準和名で、意味がわからず、だれの命名なのかわからない。フエフキダイ科のハマフエフキ、フエダイ科のハマダイとともに理解不能だ。
さて、ハマトビウオは一昔前は、1月後半くらいから市場で見かけるようになり、だいたい5月くらいまでやってきていた。当時は、「春トビウオ」でよかったが、近年は12月になるとすぐにやってきている。しかも伊豆諸島や宮崎県、鹿児島県からではなく、関東周辺の千葉県からやってくる。魚屋に言わせると11月にも荷があったというが、これじゃ「冬トビウオ」と言った方がいいくらいである。
関東では春夏秋冬、トビウウオの種類が入れ替わりながら入荷してくる。
八王子総合卸売センター、福泉で見つけた、今年最後のトビウオは非情に大型で全長51cmもあった。千葉県鴨川の定置網のもので首折りで触るととても硬く、どことなく脂が感じられる。千葉県鴨川の魚は年々鮮度がよくなり、荷の作りも上手になってきている。
1尾だけ味見に買ってみた。

焼霜造りはだれが食べてもうまいが、それだけに

ハマトビウオの焼霜造り

今回の大型のハマトビウオは背の青い魚の典型的なもので、さすがに脂が豊かとはいえないが、膨らみの弱い白子の周辺、内臓などに脂があり、その周辺部分にも脂が少なからず感じられる。身に張りがあり、舌に触れただけで非情に豊かなうま味が感じられる。
舌にねっとりするのはトビウオなりに脂があるためだと思われる。
これを刺身と焼霜造りにする。ツクシトビウオやホソトビウオなどの中型は焼霜造りだが、ハマトビウオの大きさになると刺身がうまい。
三枚に落として腹骨を取り、血合い骨は抜きにくいので切り放す。
皮を引いて刺身にする。
間違いなしの焼霜造りがいいと思ったが、実は刺身の方が上だった。
焼霜造りは身の味わいよりも皮の風味が強い。
この強さが身の味わいの邪魔になる。

皮の風味は不要、身の味だけで勝負できる

ハマトビウオの刺身

それにしてもハマトビウオの刺身がこんなにうまいなんて思いもしなかった。
これから白子も卵巣も膨らんでくると思う。
この成熟度による味の変化も楽しみたい。

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ハマトビウオのサムネイル写真
ハマトビウオJapanese giant flyingfish海水魚。海の表層域。希に石狩湾・北海道太平洋沿岸、岩手県〜九州南岸の大平洋沿岸、屋久島、九州西岸、幼魚が奄美大島西方海・・・・
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