202402/18掲載

伊豆川奈沖のカイワリで2日暮らす

小型魚だけど味は横綱級

カイワリ

2月12日。八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産のクマゴロウは久しぶりの釣行に欣喜雀躍、静岡県熱海市網代まで押っ取り刀で駆けつけた。まではよかったが、絶不釣だった。焼け糞になって釣れた魚を全部くれた。
焼け糞になるくらいなので大した量ではないが、中にカイワリが2尾混ざっていたのだ。
体長18cm 190g 前後なので、相模湾静岡県川奈沖としては小振りである。あくまでもボクの私見だが、釣りとは不思議なもので、釣れるときは数釣りもできるし、大物も来る。釣れないときは比較的可愛いのが少しだけくる。
たぶん、魚界の味の大御所はカイワリである。キチジ(キンキ)もアカムツも吹っ飛ばすくらいの、横綱級の安定感がある。大御所で横綱なのにスーパースターではない、ことが不思議である。世の中、ド派手な方が好きみたいなのだ、見た目に惑わされてはならぬ、味に酔え。
最大級でも体長30cm弱の体高の高い可愛らしい魚で、北海道にもいるが、水揚げを考えると本州以南、九州の魚だ。水揚げは西日本の方が多い。
アジの中のアジであるマアジが稚魚期などは水深2m前後にいて、成魚になっても比較的浅場にいることが多く、水温が下がっても100m前後までしか落ちないのに対して、稚魚期ですら水深60m前後、成魚では常に水深100m以上にいる。この深場にいるからこそだとは思うけど、季節による味の変化が少ない。
もっとも味が上昇するのは3月からだとは思うけど、2月初旬の個体も水洗いして内臓を包んでいるところを指でこしこししたら、脂がねっとりついてきた。

塩焼きは冷めた方がうまいけど、カイワリならなおうまい

カイワリの塩焼き

せっかくもらったので、刺身といきたいが、本能に任せて塩焼きにした。小島政二郎ばりに塩焼きは冷めてからの方がうまい(小島政二郎の場合はご飯)を実践して、おやつにカイワリの塩焼きといきたかったためだ。
酒を控えるようになり、なぜか塩にも敏感になったこともあり、最近、魚でお茶が出来るようになっている。
さて、2尾の片方は水洗いして内臓をずぼ抜きする。
適当に切れ目を入れて振り塩をする。
片方は三枚に下ろし腹骨・血合い骨を取り、塩を振る。
これを2日間にわたり食べる。
塩焼きは振り塩をしてできれば1時間以上安静にする。
表面に出て来た水分を取り、じっくり焼き上げる。
焼きたてもうまいが、少しほっといて冷めてから、嬉野の深蒸し茶の茶魚にする。
眩暈に襲われるようになって、本能からこんな奇妙なことをするようになったが、なかなかイケるのである。ちなみに塩は控えめなので、やたらとカイワリ本来の味が舌に感じられ、喉の奥に消えつつ、独特の香りも感じられる。
世の中、なにが幸いするかわかったものではない。

アジ科2大フライのひとつ

カイワリのフライ

さて、翌日昼ご飯の主菜はカイワリフライである。
アジ科のフライはみなうまいけど、カイワリはマアジと1位、2位を争う味だと思っている。
三枚に下ろした身は塩をしているのでコショウだけを振る。
塩をして1日寝かせると少量の塩でもよくきく。
小麦粉をまぶし、溶き卵をパン粉をつけて高温で短時間揚げる。
あとは大好きなウスターソースをじゃぶじゃぶではなく、じゃぶと一振りして食べる。
これが飯に大合い(だい・あい)なのだ。
さくっとした後の脂の口溶け感はカイワリならではだ。
魚のうまさだけではなく、それ以上が楽しめる。
別に人の不幸をヨシとは思わないけど、釣り師の不釣もヨシだと思う。

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カイワリのサムネイル写真
カイワリWhitefin trevally海水魚。南日本。水深200mよりも浅場。北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道〜九州南岸の太平洋沿岸の太平洋沿・・・・
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