雌(めす)で1m TL、雄(おす)で40cm TLほどになる。腹鰭がなく尾鰭は背鰭・臀鰭との区別がつかない。茶褐色で腹側はやや薄く、白い。側面、側線上だけではなく、側線の上方にも白いまばらな斑点が並んでいる。白目が大きい。
マアナゴの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★
これは常識食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★★★
究極の美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区真骨亜区カライワシ下区ウナギ目アナゴ亜目アナゴ科クロアナゴ亜科クロアナゴ属外国名
学名
Conger myriaster (Brevoort, 1856)漢字・学名由来
漢字 真穴子、真穴魚、亜名呉(和漢三才図会) Maanago, Anago
由来・語源 もともとは単に穴子(アナゴ)であった。「穴子」は江戸時代以前からの呼び名。魚類学的にアナゴ類の代表的なものの意味で「真」を冠した。
アナゴについて穴にもぐり込む 夜行性で昼間は管状のもの、砂泥地の穴にもぐり込んでいるため。
穴籠 「穴籠」で「あなごもり」の転訛したもの。
〈無足亜目アナゴ科マアナゴ屬マアナゴ〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)地方名・市場名
生息域
海水魚。沿岸砂泥底。
北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、屋久島、北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海、喜界島。渤海、黄海、東シナ海、朝鮮半島全沿岸、済州島、台湾。生態
■ 産卵は西南諸島周辺深海で春から夏。
■ 孵化したレプトセファルス(レプトケパルス 柳の葉のような形の仔魚。葉形仔魚)で暖流にのって北上。内湾にたどりつく。
■ 12月から6月にかけてレプトセファルスが見られる。これが「のれそれ(高知県)」、「べらた(関西)」と呼ばれるもののひとつ。
■ 沿岸にたどりついたレプトセファルスは春には小アナゴに変態するが身体は縮む。
■ 1歳魚で15センチほど、2歳魚で30センチ、3歳魚で35センチ、4歳魚で40センチほどになる。
■ 雌(めす)の比率が高い。
■ 内湾性で環形動物、甲殻類、小魚などを捕食している。
■ 血液には血清毒、粘液にも毒があり、生食は注意。基本情報
北海道〜九州までの内湾に生息する。食用になっているアナゴ科の魚は数種いるが、そのなかでももっとも漁獲量が多く、知名度が高いために「真」をつけて「真穴子」と呼ばれている。
人口の多い都市部のある大きな湾(例えば東京湾、伊勢湾、三河湾、大阪湾、瀬戸内海)などに多い。江戸、名古屋、関西などウナギ同様に食文化の違いがあるなど、歴史的にも重要な魚である。
温暖化のために産地が北上傾向にあり、本来水揚げが少なかった日本海や東北、北海道などでの水揚げが増え、日本海など国内の主要な産地となっている。
天ぷらやすしには欠かせない主役級の種だ。加工品には干ものや「焼きあなご」があるが、どれも高級なものである。
珍魚度 珍魚ではないが、高い魚となってしまっているので関東の小売店ではめったに見かけることはない。どちらかというと西日本の方が手に入れやすい。水産基本情報
市場での評価 関東では年間を通して切れ目なく入荷してくる。国産、韓国などからの輸入ものがある。値段は高値安定。近年、国内での漁獲量が頭落ちであるため中国、朝鮮半島などからの輸入が多く、ときに開きなどで大量に入荷してくる。ほとんどのものが活け活け締めでの入荷であり、野〆(漁の時に死んだもの)は非常に安い。
ノレソレ(葉形仔魚、もしくは葉形幼生)の入荷もあって、これは高値となっている。
漁法 アナゴ筒漁、どう、底曳網、延縄漁
産地(漁獲量の多い順) 愛知県、長崎県、兵庫県、島根県、愛知県、福島県、山口県、北海道選び方
原則的に生きているものがいい。また大小は用途が変わるだけで、味も料理法による。
死んだものは色が褐色のもの。白くなったのは選ばない。味わい
旬は晩春から初秋。温かくなってくるとエサをよく追うために徐々に体に脂を蓄積していく。同時にうま味も豊かになる。比較的旬と旬以外の差がわかりやすい魚だ。
鱗は皮膚に埋没して見えない。滑りがあり皮はしっかりして硬い。骨は軟らかい。
透明感のある白身で熱を通しても硬く締まらない。脂は身に均等に混ざり込む。栄養
ビタミンAとオレイン酸が豊富。ビタミンAは免疫力を高め、皮脂の分泌を正常に保ち、肌を健全に保ち、目には必須の栄養素でドライアイ、夜盲症などを予防する。オレイン酸は酸化しにくく悪玉コレステロールを減らす。危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
マアナゴの料理・レシピ・食べ方/揚げる(天ぷら、フライ、フリット)、煮る(煮穴子、煮こごり、煮汁で野菜を煮る)、焼く(焼き穴子)、焼く(塩焼き、干物)、生食(洗い)、汁(みそ汁)クリックで閉じます
穴子の天ぷら(マアナゴの天ぷら) マアナゴの小振りのものを選んで作る天ぷらはとても魅力的である。開いたものの鰭を取り、水分をよく拭き取る。これに小麦粉をまぶして衣をつけて揚げる。「江戸前」とつくくらいで都内には専門店も多いが自宅で揚げても美味しい。
穴子のフライ(マアナゴのフライ) 開きは皮目のぬめりをこそげ落とし、背鰭、腹鰭などを切り取る。湯通しして表面のぬめりをこそげ取る(鮮度のいいものは不要かも)。水分をよくきり、塩コショウして衣をつけてパン粉をまぶして短時間高温で揚げる。小振りなものは余熱で火が通る。濃厚な味わいなのにイヤミがなく香ばしい。非常においしい。クリックで閉じますマアナゴのフリット 開いたものの皮目のぬめりをこそげ取る。湯通しして冷水に落として表面のヌマリを流す(鮮度のいいものは不要かも)。小麦粉をビールと少量のオリーブオイルで溶き、かりっと揚げたもの。なかはしっとりとして本来のうま味を失っていない。クリックで閉じますマアナゴの中骨の素揚げ 大型のアナゴの中骨を素揚げにしたもの。中骨はまな板の上に置き、流水を落としながらタワシなどで血液などをていねいに流す。水分をよくきり、ザルなどに上げて冷蔵庫で表面を乾かす。このまま冷凍保存してもいいし、じっくり素揚げにしてもいい。揚げ上がりに振り塩をする。さくさくと食べられるが骨の髄の存在が少しだけ感じられる。クリックで閉じます煮あなご 開いたマアナゴを塩水でよく滑りを取り、熱湯に通す。残った滑りをこそげ取り、しょうゆ、みりん、酒、砂糖、水の地で約10分ほど煮たもの。ほとんどしょうゆの色を出さず、より短時間で煮る「さわ煮」という方法もある。また煮汁で里いもなどを煮てもうまい。クリックで閉じますマアナゴの魚すき 開いて皮目のヌメリをこそげ落とす。湯通しして皮目のヌマリを再度こそげる(鮮度のいいものは不要)。身の方から骨切りをする。すき焼きの地(酒、砂糖、水を合わせて少し煮つめたもの)でマアナゴ、野菜、豆腐、しらたきなどを煮ながら食べる。クリックで閉じますクリックで閉じますマアナゴ兜蒲焼き
マアナゴの兜蒲焼き(穴子兜焼き) 尾と頭部がいちばん味がいいと思っている。とりわけ塩焼きや蒲焼きなどは兜がうまい。できるだけ大きい個体を使って兜蒲焼きを作る。
表面のぬめりをこそげて頭部を大きめに切り落とす。胸元を開いて鰓などを取る。水分をよくきってじっくり皮がかりっとするくらいに焼き上げる。たれ(醤油とみりん半々を少し煮つめたもの。市販のものでもいい)を2、3度からめて焼き上げる。
大振りの兜はこんなにたくさん食べる部分があるのか、と思うほど食べでがある。頭部の皮は厚みがあってうまさ濃厚。身も体幹部分よりもしまっており味わい深い。
マアナゴの蒲焼き(穴子の蒲焼き) 養殖物ばかりになったウナギとは違ってすべて天然もので、脂がそんなに重くない。濃厚でありながら上品な味である。表面のぬめりをこそげて開き、中骨とわたを取り去る。背鰭・臀鰭を切り落とし、水分をよくきる。これを素焼きにする。八分通り焼き上がったらたれ(醤油とみりん半々を少し煮つめたもの。市販のものでもいい)を2、3度からめて焼き上げる。酒の肴よりもご飯に合う。真穴子丼もおいしい。クリックで閉じます穴子の蒲焼き
マアナゴの塩焼き(穴子の塩焼き) めそや200g前後の天ぷらサイズよりも比較的大振りの個体に向いた料理法である。表面のぬめりをこそげ落とし、開く。背鰭・臀鰭を取る。適当な大きさに切り、水分をよくきり振り塩をする。1時間以上寝かせて再び表面に出て来た水分をよく拭き取り、焼き上げる。皮目・身側はぱりっと香ばしく、中は豊潤で甘味すら感じられる。非常においしい。クリックで閉じます穴子の塩焼き
穴子の干もの 日本各地で作られているマアナゴの開き干しは自宅でも比較的たやすく作れる。大振りのマアナゴを開く。立て塩に大きさにもよるが15分〜40分漬け込み、水分をよく切る。これを干し上げたもの。干すことで焼きやすくなる。脂があり実に美味。クリックで閉じます穴子の素焼き マアナゴを開いたものの滑りを包丁などでこそげ取り、塩をしないで焼く。マアナゴの保存方法としてもっとも優れたもの。これを酢のものや和えものに使う。塩焼きを保存してもいい。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
東京湾、三河湾、瀬戸内海。産地としては瀬戸内海周辺、福島県、愛知県、長崎県、島根県。
関東では煮る。西日本では焼く。
瀬戸内海などでの穴子丼、穴子の押しずしにする。
みそ汁 和歌山県和歌山市和歌浦で焼いたものをみそ汁にする。関連コラム(郷土料理)
穴子でじゅんじゅん、あり、か? なしか?
の料理名を初めて聞いたのは、1980年前後のことだ。 まだおんぼろシビックに乗っているとき、滋賀県安土あたりで大迷いに迷っていたとき田園のど真ん中で、地獄で仏・・・ 続きを開く加工品・名産品
目白(めじろ)開き干し 愛知県伊勢湾ではアナゴの干物が盛んに作られる。ギンアナゴの開きを「アナゴ」といい、マアナゴを「メジロ」という。
あなごの干もの 大型のマアナゴを開いて干したもの。『越田鮮魚店(岩手県大槌町)』
煮アナゴ 主に業務用として加工、流通している。クリックで閉じます
穴子の開き干し 兵庫県、島根県などでは古くはマアナゴがとれなかった。今では国内でもトップクラスの漁獲量を誇っているが、歴史的には新しい。ただ脂がのった個体が多く、非常に上等な開き干しが作られている。写真は兵庫県日本海、但馬の丸松西上商店のもの。ていねいにぬめりを取り去っていて、味がいい上に食べ飽きない。
穴子の開き干し マアナゴの開き干しは日本各地で作られているが、もっとも古くからの生産地は愛知県だと思われる。マアナゴとギンアナゴで作られ、マアナゴを「めじろの開き干し」、ギンアナゴを「あなごの開き干し」というマアナゴの方が高い。クリックで閉じます焼き穴子 三重県から和歌山県、大阪府、瀬戸内海周辺で盛んに作られるのが焼きアナゴ。安芸の宮島名物の穴子飯も焼き穴子を白いご飯にのせたもの。酢のもの、和えもの、うどんすきなどの鍋ものなど用途は広い。クリックで閉じますやきあなご
穴子の鳴門巻き 「鳴門巻き」は中心にウズラの卵を置き、割いたアナゴで巻き、経木をヒモ状にして結んだもの。煮ものや、汁ものにする。この「鳴門巻き」を半分に切った文様を「月冠(げっかん)」という。大阪が誇る名品である。[松井泉 大阪中央市場内]クリックで閉じます関連コラム(加工品)
3月27日 丸松西上商店のアナゴの干もの
兵庫県香美町香住、『丸松西上商店』のマアナゴの開き干しをいただいた。 古くマアナゴの産地は東京湾、三河湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海、北部九州などであった。江戸時・・・ 続きを開く釣り情報
東京湾の夏の夜の風物詩ともいえる。ケミホタルをつけた一本ハリにアオイソメをつける。釣ったマアナゴは生かしておき、帰り際に開いて持たせてくれる。歴史・ことわざ・雑学など
季語・歳時記 夏
すしダネ 江戸前を問わず、すしには欠かせないネタである。関東では煮る(煮穴子)のが主流、関西では焼く(焼き穴子)。
天だね 全国的に天ぷらの種として欠かせない存在。参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、神水研研報1号『東京湾のマアナゴ資源について-1 漁業の実態と管理に関する予察』(清水詢道)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『聞書き 和歌山の食事』(農文協)地方名・市場名 ?
ハム
場所福島県いわき市、山形県鶴岡市、富山県富山 備考釣り上げたときつかもうとすると果敢に噛みついてくる。このせいか「食む(はむ)」から「ハモ・ハム」と呼ぶ地域も多い。山形県鶴岡市鼠ヶ関では「アナゴ=クロヌタウナギ」「ハモ=マアナゴ」。