ヒラスズキ

ヒラスズキの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
SL 80cm前後になる。スズキに比べて体高が高い。尾柄(びへい 尾のつけ根)が太く、尾鰭の切れ込みが浅い。[44cm SL ・重1.4kg]
SL 80cm前後になる。スズキに比べて体高が高い。尾柄(びへい 尾のつけ根)が太く、尾鰭の切れ込みが浅い。[成魚]
SL 80cm前後になる。スズキに比べて体高が高い。尾柄(びへい 尾のつけ根)が太く、尾鰭の切れ込みが浅い。[31cmSL・0.463kg]

スズキと呼ばれる魚で非常に似ている種

珍魚度・珍しさ★★★
がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目スズキ科スズキ属
外国名
Blackfin seabass
学名
Lateolabrax latus Katayama,1957
漢字・学名由来

漢字 平鱸 Hirasuzuki
由来・語源 スズキよりも体高があり、左右に平たいため。魚類学者、片山正夫の命名。

スズキ1種/長い間、スズキは魚類学的にはスズキ1種だとされていた。
『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)に〈川鱸は脂多く味が美(よ)い。海鱸は脂は少なく味が淡い。〉とある。古くから川鱸(スズキ)と海鱸(ヒラスズキ)を分けていたようだ。
〈スゞキ 一般にスゞキと言い。……河口を多少溯るものと全く是を溯ないものとがあるが、同一種内の異型である。〉。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
〈ススキ科ススキ亞科ススキ属スズキ〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
〈スズキ目スズキ亜科スズキ科スズキ〉。『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)
2種に分かれる
Four New Species of Serranid Fishes from Japan Masao KATAYAMA(Yamaguchi University)1957年
〈図版にヒラスズキ 解説にヒラスズキはなく。 スズキに似るが、体高が高く……〉。
書籍では、『魚類大図鑑 南日本の沿岸魚』(益田一、荒賀忠一、吉野哲夫 東海大学出版会 1975/11/25)

Katayama
片山正夫(1912~1989年 山口大学教授、山口県生まれ)。広島高等師範学校から農水省水産講習所(後の東京水産大学)。師範学校教師を経て、山口大学へ。特にスズキ科(当時はハタなども含んでいた)を研究。ヒラスズキ、アオダイを記載、和名をつけた。アカハタモドキ、ヤマブキハタなど、多くの和名をつけたものと思われる。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。スズキが河口や湾内に多いのに対し、海流が洗う外洋に面した荒磯に多い。淡水域でもみられる。
青森県深浦、秋田県男鹿、新潟県佐渡、富山県、石川県能登、兵庫県浜坂、島根県島根半島周辺、山口県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、茨城県〜屋久島・種子島、沖縄本島。
少ない/瀬戸内海

生態

産卵期は10月〜4月だが、春に産卵する固体が多い。

基本情報

本州から沖縄にかけての比較的河川の影響が少ない外洋に多く、釣りなどでとれるがスズキと比べると圧倒的に少ない。古くスズキは魚類学者の間では1種類だと思われていた。江戸時代には川鱸と海鱸があるとされていた。漁業者や海辺の人たちにも2種いると考えられていた。
スズキが主に内湾、河口域、淡水域にも現れるのに対して、本種は外洋に面した岩礁域にいて内湾や河口域、淡水域に入ることは希である。スズキが暖かい季節が旬であるのに対して、秋から初冬が旬である。高級魚で、普通スズキよりも値が高く、小さくでも決して安くはない。
身色がタイ科の魚に近く、内湾性のスズキとはまったく異にしている。高値なので消費地では馴染みがない。むしろ料理店などで食べる魚だ。
珍魚度 珍魚ではないが、一般の方にとっては珍しい魚である。探してもなかなか手に入れにくい。少しがんばって探すしかない。

水産基本情報

市場での評価 入荷量は少ない。釣りもの、定置ものが多く、取り扱いがいいので、高値安定。
漁法 釣り、定置網
主な産地 東京湾以南の太平洋側、九州。

選び方・食べ方・その他

選び方

できれば活け締めにしたもの。触って硬いもので、目が澄んでいるもの。鰓が赤いもの。

味わい

旬がわかりにくい魚だが秋から冬にかけて味がいい。ただし一年を通してあまり味が落ちることがない。
鱗は細かく取りやすい。皮は厚くてしっかりしている。骨はやや硬い。
透明感のある白身で色合いはイサキやマダイに近い。スズキのような淡水魚を思わせる臭いは全くない。
真子・白子も美味。

ヒラスズキの切り身 スズキとはまったく違う身色をしている。どちらかというとマダイに近く、血合いが鮮やかに赤い。見た目も美しく、味もいい。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ヒラスズキの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、湯がけ、焼霜造り、カルパッチョ、セビチェ)、焼く(塩焼き、素焼き、幽庵焼き、障子焼き、白子焼き)、煮る(煮つけ、アクアパッツァ、わた煮、コンフィ)、汁(潮汁。みそ汁)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(ムニエル)
ヒラスズキの刺身 スズキ同様透明感のある白身。違うのは血合いが美しく、黒い筋がないこと。一見、タイ科やメジナ科に近い。味わいは淡泊でいながら旬の脂ののったものは甘味とうま味が強く、やや硬いと感じるくらいに食感が心地よい。薄造りにしてもいいと思う。わさびとしょうゆもうまいが、意外に一味唐辛子としょうゆ、酢がよかった。酢みそで食べてもいい。[2kg背]

ヒラスズキの腹身刺身 背の部分にはタイ科に見られるような赤い血合いがある。腹には見事な銀皮がでる。しかも腹身の方が食感が強く、脂も多い。一切れはあまり厚みをつけず、薄く造るといい。
ヒラスズキの刺身(若魚) 全長30cmほどの若魚はまだ脂ののりは感じられず、うま味も少ない。脂ののった大型とは違いあっさりして上品な味わいを楽しむといい。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。皮を引き刺身にする。
ヒラスズキの焼霜造り 小型を三枚に下ろして腹骨を取り、血合い骨を抜く。皮目をあぶって少し急速冷凍庫で表面を落ち着かせる(氷水に落としてもいい)。これをサイコロ状に切ってみた。この方が皮の味が生きる。やや淡泊過ぎるのを皮の味が補っていい味になる。
ヒラスズキの湯がけ 長崎県で「湯かげ」というが、各地に同様の料理があり、いろんな料理名だと思われる。読んだ方はできるだけ地元の料理名に変換してほしい。三枚に下ろし腹骨・血合い骨を取る。皮付きのまま刺身状にきり、沸騰した湯を少し水で冷ましたものをかける。氷水にとり水分をよくきる。熱を加えることで食感が強くなり、噛めば噛むほど皮のうま味と身の甘味が染み出してくる。梅肉、梅肉醤油、酢みそ、わさび醤油などで食べて欲しい。

ヒラスズキのカルパッチョ 旬以外の問題ありの個体は身色はあまりよくないが味は悪くない。これをできるだけ薄く切り、にんにく風味をつけてオリーブオイル、塩コショウした皿に並べていく。スプーンでとんとんと馴染ませ、上に香りのある野菜を散らして再度オリーブオイルを開け回す。柑橘類などを使ってもいい。
ヒラスズキのセビチェ 刺身などを造っているとどうしても切れ端が出てくる。これを紫玉ねぎ、辛い青唐辛子と合わせてライム、塩でマリネーしたもの。爽やかな味わいのなかしっかりヒラスズキのうま味が感じられる。スピリッツにとても相性がいい。
ヒラスズキの塩焼き 大型なので水洗いして二枚に下ろし骨つきの方を切り身にする。振り塩をして1時間程度寝かせてじっくりと焼き上げる。スズキよりもクロダイに近い味わい。クセがなく脂がのっているので柔らかく豊潤。
ヒラスズキの素焼き 小型を水洗いする。二枚に下ろして、水分をよくペーパータオルなどでとる。これをそのまま焼き上げる。好みでポン酢とか、マヨネーズ醤油とか、ショウガ醤油で食べる。塩焼きとは別種の味わいが楽しめる。
ヒラスズキの幽庵焼き 水洗いしてかまの部分を使った。鰭などを切り取り酒・みりん・醤油同割りの地につけ込む。柚子やしょうがの風味をつけてもいい。漬け込んで焼いても硬く締まらずふんわりと柔らかく焼き上がる。非常に美味。
ヒラスズキのグリル 切り身をにんにく、コショウ、塩、オリーブオイル、シェリーでマリネ。これをグリルパンで焼き上げたもの。脂がのっている時期には身が締まらずふっくらと焼き上がる。旬を外しても適度にしまっていい感じになる。トマトなど好みの野菜を合わせるとなおよろしい。
ヒラスズキの障子焼き 大型の中骨を焼き上げる。ここでは振り塩をして焼き上げるのだが、八割方焼き上がったら酒を塗りながら仕上げる。中骨の身は非常に味わい深く、適度にしまっている。酒の肴に最高である。
ヒラスズキのコンフィ 本来家畜肉に使われる料理名を魚類に使っていいかどうかはわからない。味つけした新鮮な切り身を60度から65度の湯の中でオイルと一緒に加熱したものだ。水洗いして三枚に下ろし切り身に。塩コショウ、タイムとアクアビットで風味づけする。数時間寝かせる。高温に耐えられる袋にオリーブオイル、フヌイユ、にんにくを加えて空気を抜く。水温65度で30分加熱する。非常に柔らかく旨味がオイルに逃げ出さず、身に閉じ込められている。非常にうまい。

ヒラスズキの煮つけ(あら煮) スズキと違って上質の白身である。あら、肝や胃袋なども美味。あらは集めて置き、湯通しして冷水に落として残った鱗やヌメリを流す。水分をよくきり、酒・醤油・水で煮る。みりんや砂糖などで甘味をつけてもいい。ここではゴボウと煮て、煮上がりに振りショウガをした。ショウガは無用だったかも。
ヒラスズキの塩煮 塩煮(まーす煮)は強めの塩水で終始強火で魚を短時間で煮上げていく料理。魚のうま味を出すとともに、それを濃縮していく。古くはほとんど液体が残らないように作ったが、最近では汁気を残す。この汁気を絡めながら食べる。硬い木綿豆腐(あれば沖縄の島豆腐)があれば一緒に煮るとうまい。
ヒラスズキのわた煮 下ろすときに腹腔膜、腹部に付着した脂身、胃袋、肝などを取って置く。湯通しして表面のヌメリを流す。これを醤油(ここでは薄口醤油)・酒・水で短時間さっと煮上げる。身よりも内臓の方が上に思えるほどにうまい。
ヒラスズキのアクアパッツァ 切り身をたっぷりのオリーブオイルと水で焼き上げるように煮込んだもの。煮汁にこくを出すために干しトマト、にんにく、エシャロットなどを使った。またアサリなど二枚貝を加えるとうま味が増す。
ヒラスズキの潮汁 あらを集めて置く。湯通しして冷水に落とし、残った鱗やヌメリを流す。これを昆布だしで煮だして酒塩で味つけする。刺し昆布をしてもいい。実にうま味豊かで深い味わいの汁になる。ご馳走としかいいようがない。
ヒラスズキのみそ汁 あらを水から煮出してみそをとく。少し鮮度の落ちたものは、湯通しして冷水に落とし、ヌメリなどを流してから煮出す。水ではなく昆布だしを使うとなお美味。こくのある実に味わい深いみそ汁だが嫌みがない。ご飯のおかずに最適だ。
ヒラスズキのフライ あまり脂ののっていない1kgクラスを三枚に下ろして中骨を抜き、切り身にする。塩コショウしてフライに揚げたもの。上質のクセのない白身なのでフライは定番的な料理だ。さくっとしたなかにジューシーな味わいが楽しめる。
ヒラスズキの白子焼き 秋の産卵期を下ろすとしばしば白子が出てくる。これが言い味わいなのだ。基本的に煮るよりも焼いた方がうまいと思う。表面の香ばしい味わいに中はクリーミー。佳肴となる。
ヒラスズキの竜田揚げ 切り身を作ったあとの半端な部分や頭部、かまの部分を適当に切る。これをしょうゆ、みりんを合わせた中に漬け込む。香りづけに好みの香辛料(ここではヒバーツ)を。水分をよくきって片栗粉をまぶしてじっくり揚げる。
真子の煮つけ 真子はていねいにとりだして血液などを流水で流す。水分をきり、適当に切る。鍋に酒・砂糖・水を煮立たせて少し煮つめた中に落としてさっと煮上げる。卵粒はあまり大きくなく、ねっとりして甘味が感じられる、おいしい。
ヒラスズキの真子の塩焼き 真子は壊さないように取り出す。血液などがついていたら洗い流す。水分をよくきり、振り塩をする。1時間以上寝かせてじっくりと焼き上げる。成熟度にもよるが卵粒はあまり大きくなくパサつかない。ほくほくして甘味が感じられて非常においしい。
ヒラスズキの炊き込みご飯 中骨の部分に強めの振り塩をする。半日から1日寝かせておく。このままで3〜4日持つ。これをお釜に入る大きさに切り、酒を加えてご飯に炊き込む。炊きあがりにみょうがや青ねぎをざっくりと混ぜ込む。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

釣り情報

磯際でのルアー釣りの対象魚。荒れている時の方がよく釣れるとされている。

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

ヒラセイゴ
サイズ / 時期小型 備考釣り人の間で。 場所三重県など 
シマス
参考日比野友亮さん/和具の方言 場所三重県志摩市和具町・尾鷲 
モス
参考長野淳さん 場所三重県熊野市 
スズキ
参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所徳島県、高知県、鹿児島県種子島 
ヒラスズキ
場所徳島県宍喰、高知県 
クラスズキ クラセイゴ
サイズ / 時期小型魚 参考和田隆史さん 場所徳島県阿南市 
ヤー
参考山仲洋紀さん 場所長崎県壱岐 
オキスズキ
参考『高知の魚名集』(岡林正十郎 リーブル出版) 場所高知県黒潮町土佐佐賀・高知市横浜 
ヒラ
参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所鹿児島県種子島 
ヤヒロ
場所福岡県福岡市中央卸売市場 
ヒラスズキ
場所市場でも 
ホンスズキ
参考『高知の魚名集』(岡林正十郎 リーブル出版) 場所高知県宿毛市鵜来島・以布利・手結・伊田・竹島