トビウオ

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35cm TL 前後になる。細長く、紡錘形。胸鰭は一様に薄い灰色で、非常に長く腹鰭後端を超える。臀鰭起部は背鰭第3軟条よりも遙かに後方にある。胸鰭の前方から3軟条(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみで2、不分枝は2本に見える)が不分枝。
35cm TL 前後になる。細長く、紡錘形。胸鰭は一様に薄い灰色で、非常に長く腹鰭後端を超える。臀鰭起部は背鰭第3軟条よりも遙かに後方にある。胸鰭の前方から3軟条(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみで2、不分枝は2本に見える)が不分枝。[31cm TL・219g]
胸鰭の前方から3軟条(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみで2、不分枝は2本に見える)が不分枝。
35cm TL 前後になる。細長く、紡錘形。胸鰭は一様に薄い灰色で、非常に長く腹鰭後端を超える。臀鰭起部は背鰭第3軟条よりも遙かに後方にある。胸鰭の前方から3軟条(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみで2、不分枝は2本に見える)が不分枝。

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珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区新骨亜区正新骨下区棘鰭上目スメグマモルフ系トウゴロウイワシ亜系ダツ目トビウオ亜目トビウオ科ツクシトビウオ属
外国名
Japanese flyingfish
学名
Cheilopogon agoo (Temminck & Schlegel, 1846)
漢字・学名由来

漢字 飛魚 Tobiuo
由来・語源 明治時代、東京市場(現東京都中央区日本橋)での呼び名。単に「トビウオ」というとトビウオ科全種の総称でもある。胸鰭が翼状で海面を滑空するため。
別名、アキツトビウオ、トビノウオ、本トビ(ホントビ)、トビヲ(和名抄)。アキツトビウオは「秋津飛魚」で「秋津(あきつ)」はトンボのこと。羽のある姿がトンボに似ているのと、本種がとれ始めるのが立秋以後で、トンボの季語が秋であることなどの共通点からくるのだと思っている。
種小名/agoo 西日本での呼び名「あご」から。
〈Fam. SCOMBRESOCIDAE. 族 鱵魚類 EXOCOETUS,Artedi. agoo, Schleg. トビウオ 東京市場〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
〈合内顎亞目トビウヲ科トビウヲ属トビウオ Cypsilurus agoo (TEMMINCK et SCHLEGELT)〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
Cypselurus agoo (Temminck and Schlegel, 1846)→Cheilopogon agoo (Temminck & Schlegel, 1846) 2023年。

Temminck
コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
Schlegel
ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。
北海道噴火湾、青森県八戸、小笠原諸島、沖ノ鳥島、仙台湾〜九州南岸の大平洋沿岸、秋田県、新潟県、富山湾、島根県隠岐、山口県日本海沿岸、九州西岸、屋久島、琉球列島。
朝鮮半島全沿岸、中国黄海沿岸・浙江省、田碗頭部、希にピーター大帝湾。

生態

産卵期は秋。9月〜10月。

基本情報

トビウオという言葉はトビウオ科の魚の総称として使われることが多い。一般人どころか漁業関係者も区別がつかないからだ。ここではトビウオ科の標準和名のトビウオのことである。
日本列島周辺に多い中型のトビウオである。8月くらいからまとまって入荷してくるもので、標準和名も「トビウオの代表的な」、という意味合いがあると思われる。夏枯れの時季に揚がるので人気がある。
一般的にこの国で食用となるトビウオ類はハマトビウオ、ツクシトビウオ、ホソトビウオ、トビウオの4種である。ただし種を認識している人はほとんどいないために、すべてがトビウオでしかない。
東京都では昔から食用となっていて至って一般的な食用魚なのに、認知度が低いのはトビウオはみな同じに見えるためだ。昔、築地に中央市場があったときは、本種を他のトビウオ科と区別して、ホントビとか秋トビとか区別していた仲卸もあった。
値段からして庶民的な魚なので、季節感のあるトビウオ類という魚をもっと楽しんで欲しいものだ。
珍魚度 比較的暖かい地域では一般的な食用魚だ。ただし夏から秋にかけてだけ揚がるために、いつでも手に入る魚ではない。

水産基本情報

市場での評価 トビウオは季節的なもので、種を認識しているとはいえない。入荷量は夏から秋に多く、やや安値。
漁法 刺し網、巻き網、定置網
主な産地 三重県

選び方・食べ方・その他

選び方

青く光っているもの。触って硬いもの。

味わい

旬は秋。
鱗は薄く取りやすい。皮は薄いが強い。
透明感のある白身で血合いが大きい。熱を通すと硬く締まる。
調理する前に胸鰭と尻鰭を取るとやりやすい。

料理の方向性
熱を通すと独特のうま味があるが、生は青魚特有のうま味があるものの、血合いが強く食感が弱い。生は単に刺身にするよりも「なめろう(みそたたき)」や「たたき」がいいかもしれない。汁はうま味が豊かなので絶品。同様に煮つけもうまい。単に塩焼きは少し味わいに欠けるので魚醬や漬け魚の方がいいかも知れない。他にはフライ、唐揚げなど揚げ物にすると油のためか硬く締まりすぎずにうまい。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

トビウオの料理・レシピ・食べ方/生食(たたき、なめろう、刺身、酢じめ)、揚げる(フライ、唐揚げ)、汁(潮汁、みそ汁)、ソテー(ごま油焼き、ムニエル)、煮る(煮つけ)、焼く(魚醬焼き、干物、塩焼き)
トビウオのたたきなます(たたき) 熱を通してもおいしいが、生で食べるのがいちばんうまい。流通してきたものは血合いがあまりきれいではないので、ここでは皮付きのまま料理する。
胸鰭・腹鰭を切り取り水洗いして、三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り皮付きのまま薄くスライスする。香辛野菜(ここではねぎ、みょうが、ハバネロ、しょうが、にんにく)と和える。
柑橘類を搾り込んで食べると、まさに夏の味である。

トビウオの刺身 単に刺身にしてものではない。三枚に下ろして血合い骨、腹骨を取る。振り塩をして少し置き、表面の水分を拭き取り、皮を引く。これを刺身状に切ったもの。身が適度に締まり、おいしい。
トビウオのたたき 水洗いして三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。振り塩をして皮目を炙り、冷凍庫などで急速に冷やす。もしくは氷水に落とす。水分をよくきり、刺身状に切る。皮目に強いうま味と香りがある。身はたんぱくで嫌みのない部分を補う。
トビウオの酢漬け 水洗いして三枚に下ろす。血合い骨、腹骨などを取り、軽く振り塩をする。表面に水分が出て来たら、白ワイン・ワインビネガー白・砂糖を一煮立ちさせた地につけ込んで1時間以上置く。漬け込みときにハーブ類を入れると香りがいい。酢で締めることで皮目の生臭みはとれ、適度に身が締まりとても味わい深くなる。ワインやパンにも合う。
トビウオのフライ トビウオは身は青魚と白身のよさがあり、皮に豊かなうま味があるなど、アジ(マアジ)などと共通する。トビウオフライはアジフライに決してひけをとらない味である。
胸鰭を切り、腹鰭を抜き取る。水洗いして三枚に下ろし、腹骨・血合い骨を取る。血合い骨は強いので多少身崩れしてもていねいに取るといい。塩コショウして小麦粉をつけ溶き卵(バッター液でも)をからめ、パン粉をまぶして高温で揚げる。多めの油にバターを加え、ソテーするように揚げるとより美味である。

トビウオのみそ汁 あらでもいいし、丸のまま使ってもいい。あらは集めて置く、丸のままは水洗いして適当に切る。湯通しして冷水に落として残った鱗やヌメリを流す。水をよくきり、水から煮出してみそをとく。トビウオ類は非常に味わい深いだしがでる。汁も身も味がよくご飯にも合う。
トビウオのムニエル 淡泊な味わいで脂が感じられない。ぱさっとした食感が本種の難点である。これを油分でおぎなう。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、水分をよくきり、塩コショウする。小麦粉をまぶして多めの脂でじっくりソテーする。仕上げにバター(マーガリン)で風味づけする。
トビウオの韓国風焼き魚 韓国では国内の塩焼きのようなものと、ソテーする2種類の焼き魚がある。ここではソウルなどで食べたムニエルに近いものを作った。水洗いして二枚に下ろして骨のついた方を使った。塩コショウして小麦粉をまぶしてごま油でじっくりソテーする。ここではシラチャーソースをかけたが、コチュジャン酢でもいいし、何もつけなくてもいい。ご飯に合う。
トビウオの煮つけ 水洗いして適当に切る。湯通しして冷水に落としてヌメリや鱗を流す。これを酒・醤油・黒糖(白砂糖)・水で煮る。こってり煮たが、塩水であっさり煮てもおいしい。硬く締まるものの、たんぱくで嫌みのない味わい。黒糖がこくを産む。
トビウオの塩焼き 関東では、塩焼き魚と考えられていた可能性がある。水洗いして邪魔になる胸鰭などを切り取る。振り塩をして1時間ほど寝かせてから、じっくり焼き目がつくくらいに焼き上げる。非常に淡泊な味わいで、青魚らしいうま味が豊かである。このあっさりした味を好んでいた時代が確実にある。
トビウオの魚醬焼き 秋田県のしょっつると酒を合わせたものに漬け込んで、少し干し焼き上げたもの。単に塩焼きもうまいが、魚醬の風味を加えるとより味わい深くなる。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

干もの、くさや

釣り情報

歴史・ことわざなど

盆だて 〈八月六日ころまでに、嫁が実家に、そうめんを重箱いっぱいと、とびうおの塩干ものを重箱のふたを逆さにした上にのせて持って行く。実家では半分を受け取り、残りを返す〉(南河内山村 トビウオ種不明)
〈お盆には塩干しとびうおの焼いたものと、じゃがいも、焼き麩、湯葉、かんぴょうの煮ものを食べる〉(南河内山村 トビウオ種不明)
焼く魚 〈比目魚、鰈、鮎並、鰺、鱈、鯡、鮫、生節等は皆煮つけで、焼くのは蒸し鰈、魴鮄、鰯、飛び魚くらいであたが、煮肴は私は嫌いであった〉『幼少時代』(谷崎潤一郎 岩波文庫 初版は文藝春秋社1957)

地方名・市場名

ウヅ ウズ
参考文献 場所三重県鳥羽 
ヒラキウオ
参考文献 場所兵庫県家島・明石 
ツバクロウオ ツバクロウヲ
参考文献 場所兵庫県播磨灘、山口 
トビノウオ
参考文献 場所千葉県、東京、神奈川県三崎 
シントビウオ
参考文献 場所和歌山県串本 
アンコ
サイズ / 時期幼魚 備考「幼者(幼魚)」のこと。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県串本 
アキトビウオ[秋飛魚]
参考文献 場所和歌山県串本・辰ヶ浜 
クサイ
参考文献 場所宮城県仙台 
コトビ
参考文献 場所宮城県南部 
トンビ
参考文献 場所富山県 
トンベウオ
参考文献 場所富山県富山 
ダンボ タンポ
参考文献 場所富山県新湊 
ツバクラウオ ツバクラウヲ
参考文献 場所山口県長門 
ブゼンオチ ブゼンヲチ
参考文献 場所山口県(周防) 
トリウオ
参考文献 場所広島県 
ヒーゴ
参考文献 場所広島(備後) 
ツバサ
参考文献 場所愛媛県四国中央市三島町 
タチイオ タチイヲ タチョ
参考文献 場所新潟 
タチウオ
参考文献 場所新潟、石川県七尾 
ツンバクロ
参考文献 場所新潟県能生、富山県旧下新川郡(現朝日町・入善町) 
トビ
参考文献 場所東京市場など、大阪府堺 
アオトビ[青飛]
参考文献 場所東京都八丈島 
ナツトビ
参考文献 場所東京都八丈島、和歌山県潮岬 
ナツトビ[夏とび]
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都八丈島・三宅 
トビイヨ ナツトビイヨ ブグワー アカバネー
参考文献 場所沖縄 
トブー
参考『美ら海市場図鑑 知念市場の魚たち』(三浦信男 ぬにふぁ星 2012) 場所沖縄県知念漁協 
トンボ
参考文献 場所石川県大聖寺・鮎川、福井県鷹巣・坂井 
ツバクロ
参考文献 場所石川県珠洲、豊後 
アゴ
参考文献 場所石川県輪島・七尾、福井県丹生郡・南条郡(現越前町)京都府宮津、兵庫県但馬・香住、鳥取、島根県松江、山口県、長崎県 
トンボイオ カクトビ
参考文献 場所福井県三国 
アグ
場所福岡 
アケ
参考文献 場所福岡 
トビオ
参考文献 場所福島県小名浜 
トビヨ
参考文献 場所茨城県大津、大分県別府 
ツバメウオ
参考文献 場所茨城県水戸、山陰、島根県石見 
ウバアゴ カクアゴ
参考文献 場所長崎県平戸 
トビユー
参考文献 場所鹿児島県奄美大島名瀬 
オオトビ トッピー
参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所鹿児島県種子島 
ガタ
参考文献 場所鹿児島県種子島・屋久島 
ホントビ[本飛]
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京・伊豆諸島・小笠原 
フユトビイヨ フルセン ヘージラウ マルトビイヨ メチカアゴ ワタブター
参考文献