スズメダイ

スズメダイの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
SL 10cm前後。側扁する(左右に平たい)。くすんだ色合いで黒っぽく見える。鱗が大きい。生きているときや鮮度のいいときには背鰭の後ろの白い小さな斑紋が光って見える
SL 10cm前後。側扁する(左右に平たい)。くすんだ色合いで黒っぽく見える。鱗が大きい。生きているときや鮮度のいいときには背鰭の後ろの白い小さな斑紋が光って見える

全関連コラム

魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目ベラ亜目スズメダイ科スズメダイ亜科スズメダイ属
外国名
Puller, Surgeant-major, Damsel, 尾斑光鰓雀鯛、厚殼仔、藍雀、黑婆
学名
Chromis notatus notatus (Temminck and Schlegel)
漢字・学名由来

漢字 雀鯛 Suzumedai
由来・語源 千葉県の呼び名。小さくて褐色をしていて、目が丸い。群れを作る。などなどスズメを思わせるからだと思う。鯛は体高があり左右に平たいため。
〈すゞめだい 安房〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)

Temminck
コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
Schlegel
ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。岩礁域、サンゴ礁域の水深2〜15m。
青森県〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、八丈島、屋久島。
琉球列島、奄美大島、沖縄県沖縄島・伊江島・宮古島には少ない。
朝鮮半島東岸・南岸、済州島、台湾、福建省・広東省。

生態

スズメダイ科でもっとも低水温でも生きられる。日本海で越冬できる唯一の種。
産卵期は夏。
雄は岩場のくぼみなどに産卵場を確保し、きれいに清掃し、雌に産卵させる。
孵化するまで卵を保護する。
動物性プランクトンを食べている。

基本情報

本州以南の浅場にいる。日本海で圧倒できる唯一のスズメダイ類である。魚類の中でも屈指の美味。
日本各地の浅場に普通。スズメダイの仲間は食用としてよりも観賞魚として重要だが、本種は九州などで春から産卵期までだが、好んで食べられている食用となっている。しかもとても値が高い。
特に福岡県では鮮魚だけではなく塩蔵して山間部などでも食べられている。
国内では福岡県の干物「あぶってかも」が有名。大阪などでの韓国料理の素材として使われていたとも。

水産基本情報

市場での評価 関東などでは食用魚としてはまったく認知されていない。取引されているのは大阪府、福岡県くらいだと思われる。福岡県では走りの時期は高級魚である。
漁法 定置網
主な産地

選び方・食べ方・その他

選び方

触って張りのあるもの、硬いものがいい。

味わい

旬は春から初夏
鱗は薄く魚体の割りに大きく取りやすい。皮は厚みがあって強い。骨は硬い。
透明感のある白身だが脂が身に混在して白濁しやすい。焼いても硬く締まらない。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

スズメダイの料理法・料理法・食べ方/焼く(塩漬け、塩焼き)、煮る(煮つけ)、生食(背ごし、刺身)、揚げる(唐揚げ)
スズメダイの刺身 晩春から初夏にかけては脂が非常に多く、刺身にするととろっと口溶け感が楽しめる。水洗いして三枚に下ろして腹骨を取り、血合い骨を抜く。皮を引き刺身にする。小さな魚なので片身2切れくらいにしかならないが味は魚類中ピカイチ。

スズメダイの背ごし 小振りなものは水洗いして丸のまま。大型は三枚に下ろして作るといい。水分をよくきり、端から数ミリの厚さに切っていく。骨が歯に当たって、噛みしめるとじわっとうま味が出てくる。濃厚な味わいで刺身にはない味わいが楽しめる。酢みそで食べてもいい。
スズメダイの塩焼き 6月のスズメダイを買い求めて、ここでは鱗つきのまま振り塩をした。鱗つきでもいい。1日以上寝かせて焼き上げる。2、3日寝かせた方がうまい。これをこんがりと焼き上げる。焼くと内から脂が染み出してきて表面が揚げたようになる。
スズメダイのの塩焼き 皮周辺が非常に香ばしく、濃厚な味わいである。強い味わいといってもいいだろう。福岡で「鴨の味」というのがわかる。皮や身にも増してうまいのが真子である。卵粒が小さくて甘い。
スズメダイの煮つけ 小振りな魚だが、煮てもうまい。水洗いをする。卵巣などまで取り出さないように気をつける。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを酒・しょうゆ・水で煮る。砂糖、みりんで甘味をつけてもいい。意外にも身はたっぷり、締まっていてうまみが強い。小骨が硬い。おせんが死んだのも、この小骨のためかも。
スズメダイの唐揚げ 小振りの固体は唐揚げがいい。水洗いして水分をよくきる。適当に切れ目を入れて片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げする。香ばしく、皮と身は濃厚な味わいである。魚と言うよりも鶏肉のよう。

好んで食べる地域・名物料理

福岡県、大阪府。
背ごし 大阪府では韓国系の人々が好んでスズメダイの背ごしを食べるという。荷受け(大卸)などでは入荷が少ないので、産地を探していた時期もあったという。
ヤハジ(スズメダイ)の旬 〈富津は、84あまりの戸がある地区ですが、享保年間と円享元年(1744)の二回にわたり大火事があり全焼。防火の神様を3月15日と6月15日に慰霊するのに地域の人があつまり。社の草刈りなどして魚を持ち寄り宴をもうける。その3月15日の愛宕山から6月15日の愛宕山あたりが、ちょうどハヤジの脂が乗る時期にあたる。[佐藤厚さん 長崎県雲仙市富津]

加工品・名産品


あぶってかも 現在でも福岡県下の市場、魚屋、スーパーなどで売られている。塩の強い塩蔵品。洗わないで表面の塩などを払い焼き上げる。
福岡県福岡市周辺。明治の終わり頃、潮の加減から筑前海(福岡市から宗像郡の前海)にスズメダイの大群が押し寄せた。船の進路が妨げられるくらいに群れていたスズメダイをすくい取り、始末に困ったので、とりあえず塩をしておいた。これを食べたところ、脂があってうまかったために「あぶってかも」というようになった。また、焼くと鴨の味がするので、「あぶって鴨」の意味だとも。大正時代には庶民的な魚として定着した。昭和25年前後から福岡の名物と認識され値上がりし始める。古くは八百屋で売られていたとも。『ごりょんさんの台所』(長尾トリ 明治42/1909年生まれ 葦書房)など。

釣り情報

防波堤(波止)などでの釣りでは代表的なもの。アミ、オキアミ、アオイソメなどをエサにして延べ竿でウキ釣り。
メジナ、ウミタナゴ釣りなどの外道でもある。

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

ヤタボ
参考文献 場所三重県尾鷲 
ヤタハゲ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所三重県尾鷲市九鬼浦(水族志) 
チンタンベラ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所三重県熊野(水族志) 
モモセ
参考文献 場所京都府舞鶴 
スズメダイ
参考文献 場所千葉県安房 
ヤハン
参考『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日新聞社 1966) 場所和歌山〜瀬戸内海 
ヤハチ
参考文献 場所和歌山県 
ナベトリ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県周参見 
ナベコサゲ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県和深 
モナブリ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県新宮(水族志) 
アタンボ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県日置 
ヤハギ
参考日比野友亮、福畑敏光さん 場所和歌山県田辺・湯浅、福岡県北九州市、長崎県平戸市度島 
ヤエダ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県由良白崎 
ヤジロウハカマ ヤジロオハカマ
参考『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日新聞社 1966) 場所大阪府大阪湾 
ネコノヘド
参考文献 場所富山県氷見・新湊・四方・東岩瀬 
オセンジャコ
サイズ / 時期若魚 備考大きくなるとオセンゴロシとなる。 参考日比野友亮 場所山口県 
カゲキリ
参考文献 場所山口県下関 
ヤハゼ
場所山口県萩市・下関市北浦 
ノンボシ
参考島根県水産技術センター 場所島根県東部 
ノボシ
参考島根県水産技術センター 場所島根県東部・隠岐 
オセン オヤソコロシ カジキ モッチン
参考島根県 場所島根県西部 
モボシ モブシ
参考島根県水産技術センター 場所島根県隠岐 
ヨビショ
参考淡水魚研究班(徳島淡水魚研究会) 場所徳島県美波町由岐 
ツバクロ
場所愛媛県 
サトウバ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都八丈島 
アカビキ シカ シカグワ ナガー
参考文献 場所沖縄 
ヒカアグヮ
備考沖縄県でのスズメダイの総称のひとつ。 参考文献 場所沖縄県 
ゲンチョ
参考文献 場所石川県宇出津 
ゲンゴロ
参考文献 場所神奈川県三崎、東京都伊豆諸島 
ゴンゴロウ
参考文献 場所神奈川県三崎・江ノ島 
カサギリ カザキリ
参考文献 場所福岡県博多 
ヤハジ
参考佐藤厚さん 場所長崎県雲仙市 
アナガモ
備考ハタンポ類とともに。 参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県土肥 
ガンモウ
参考文献 場所静岡県静浦・宇佐美 
クロイオ
参考『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日新聞社 1966) 場所高知県 
スミヤキ
参考文献 場所高知県柏島 
アブラウオ アブラユオ
参考文献 場所高知県須崎 
ツバメマツタイ ツバメマツダイ
参考文献 場所鹿児島 
アブッテカモ
備考「あぶって食べれば鴨の味がする」ため。 場所福岡県博多(福岡市)・柳川市 
オセンコロシ[お仙殺し] オセンゴロシ
備考紀州の足代浦(あしろうら)の漁民言うに「お仙という女性がこの魚を食べて、喉に骨が刺さり、腫れて死んだ。この魚の骨がそれほどに硬いからだ」。このとき、おせんが食べたのは煮つけではないだろうか?。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県和歌浦・湯浅・白崎・塩屋・切目・田辺、紀州の足代浦(あしろうら)の漁民、島根県西部 
カジキリ
備考これは初夏の海で舵(かじ)を回すのに困るほどとれたため。 場所長崎県対馬、博多(福岡県福岡市) 
ハヤデ ハヤゼ
場所山口県長門、仙崎、萩 
ボタッチョ ボタツ ボダチ
参考『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日新聞社 1966)山仲洋紀さん 場所長崎県壱岐 
ヤハゲ
場所愛媛県宇和島市遊子 
カンモウ ヤタイオ ヤハンドウ
参考文献