キュウセン

キュウセンの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
SL 30cm前後になる。写真の緑色に黒い筋のものはオスである。幼魚、メスは赤っぽく縦縞が黒い。キュウセンは雌性先熟であり、若いときにはメスであり、大きくなるとオスに性転換する。すなわち大きなものはほとんどがオスということになり、食用として高く出回るものも緑色のキュウセンであることになる。[写真は雄]
キュウセンは小さい個体は雌(写真下2尾)、大きくなると雄(上2尾)に性転換する。

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魚貝の物知り度 ★★★
知っていたら通人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目ベラ亜目ベラ科キュウセン属
外国名
Multicolorfin rainbowfish, Wrasse
学名
Parajulis poecilepterus (Temminck & Schlegel, 1845)
漢字・学名由来

漢字 九線、求仙。
由来・語源 神奈川県三浦地方の呼び名。雌(めす)に9つの縦縞(たてじま)があるため

Temminck
コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
Schlegel
ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。浅い岩礁域。
北海道〜九州南岸までの日本海・東シナ海沿岸、青森県〜九州南岸の太平洋、瀬戸内海、有明海、伊豆諸島、南大東島。
朝鮮半島南岸・東岸、済州島、台湾、福建省・広東省。

生態

内湾の浅い岩礁と砂地が入り交じるような場所に棲息。
産卵期は4月から7月くらいまで。
雌雄同体で雌性先熟のもの。小さいときは雌(めす)で大きくなると雄頭(おす)に性転換する。少ないながら雌雄異体。小さいときから雄(おす)である個体もある。
寒くなると砂にもぐって冬眠する。また夜になると砂の中で眠る。

基本情報

浅場にいる小魚で性転換することで有名。
大きくなって雄になり青くなったものを「青べら」、小振りの小さいものを色合いから「赤べら」などという。
西日本で人気があり、東日本ではほとんど価値がない。
特に瀬戸内海一帯では食用としても、釣りものとしても人気がある。

水産基本情報

市場での評価 関東にはほとんど入荷してこない。値段は安い。関西では高値で売られていて入荷量も多い。
漁法 釣り、刺し網、底曳き網
産地 香川県、兵庫県

選び方・食べ方・その他

選び方

文様の色合いの鮮やかなもの、くっきりしたもの。触って硬いもの。目が澄んでいるもの。

味わい

旬は夏
鱗は薄くてやや取りにくい。皮は厚みがあって強い。骨はあまり硬くない。
透明感のある白身で少し水分が多め。時間がたつと身が脆弱になる。熱を通しても硬く締まらない。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

キュウセンの料理法・調理法・食べ方/焼く(素焼き、塩焼き)、煮る(煮つけ)、生食(焼霜造り、刺身)、揚げる(天ぷら、唐揚げ、南蛮漬け)、汁(みそ汁、潮汁)
キュウセンの素焼き 水洗いして水分をよく拭き取る。これをじっくり焼き上げる。要するに素焼きだが、これをまた煮てもいいし、しょうがしょうゆで食べてもいい。またむしって酢の物に入れてもいい。たくさん買ったら、いつもここまでやっておく。


キュウセンの煮つけ 産地などでは塩焼き、煮つけになることが多い。漁村などではこれでご飯を食べる。ご飯に合う料理が漁師料理なのだ、ともいえそう。鱗をとり面倒だが鰓、内臓をとって湯通しし、冷水に落として残っている鱗、ぬめりを取る。これを酒、砂糖、しょうゆで味つけして煮たもの。塩だけ、酒、塩の味つけもいい。
キュウセンの焼霜造り 初夏の雄を水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り水分をよく紙などで取っておく。皮目を炙って、急速冷凍庫などで凍らない程度に冷やす。もしくは氷水に落として粗熱を取り、水分をよく拭き取る。これを刺身状に切ったもの。身は上質の白身ながらやや淡泊。皮が食感を生み、皮にうま味もある。
キュウセンの刺身 旬の初夏なら刺身にしても味がある。水洗いして三枚に下ろし腹骨と血合い骨を抜く。皮を引き、身を斜めにそぎ切りにする。活魚を使うと切りつけると身が盛り上がってくる。甘味、うま味、食感ともに申し分がない。
キュウセンの天ぷら 水洗いして三枚に下ろして腹骨と血合い骨を取る。水分をよくきり、小麦粉をまぶして衣をつけて強火で短時間に揚げる。メゴチ(ネズミゴチなど)ほどに味はないものの、白身のうまさが堪能できる。
キュウセンの潮汁 小振りのものはそのまま、大きなものは適当に切る。湯通しして冷水に落として水分をよくきる。これを昆布だしで煮だして酒・塩で味つけする。汁もうまいが、具となった切身に甘みがある。

好んで食べる地域・名物料理

べらの二杯酢 兵庫県明石市。素焼きにしたベラを二杯酢に漬ける。
こけらずし 淡路島。
刺身 西日本では一般的。スーパーや魚屋さんでも普通に見られる。
はぶて焼き(嫁のはぶて焼き) 広島県瀬戸内海に面した地域の郷土料理。魚の煮つけで翌日に残ったものを焼くというもの。翌日の煮つけは再度煮ると煮汁が濃くなり過ぎておいしくないが、焼くと別種の味わいになる。「はぶて」とは煮つけた魚を焼くのは難しく、嫁がいやがって「はぶてる(瀬戸内海周辺での方言で、ふくれっ面になる、不満顔をする)」ためにこの料理名がある。これとは逆に小魚類を焼いてから、煮るというのを「はぶて煮」というらしい。
べらの南蛮漬け(キュウセンの南蛮漬け) 春に前年生まれの小さいのがまとまってとれる。これを揚げて三杯酢につける。じっくり揚げて漬け込むと骨まで食べられてとてもおいしい。キュウセンは小さい方が骨が気にならずおいしいが、関東ではなかなか手に入らない。これが残念でならない。

加工品・名産品

釣り情報

瀬戸内海などでは釣りの対象魚としても人気がある。釣り方は岩礁域にある砂地などへの投げ釣りか船釣りであり、餌は主に青イソメを使う。

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

ネブリ
参考文献 場所三重県 
アオジョウ アオジョロ アオジャク アオジョウガメ アオアコラ アオアジ
1 参考京都府農林水産技術センター海洋センター 場所京都府丹後半島 
アカエ アカエイ
2 参考京都府農林水産技術センター海洋センター 場所京都府丹後半島 
アカラ
2 参考京都府 場所京都府丹後地方 
アオヤギ
1 参考文献 場所京都府舞鶴 
アカヤギ
2 参考文献 場所京都府舞鶴市 
アオギザメ
参考文献 場所兵庫県家島 
アカギザメ
2 参考文献 場所兵庫県家島、岡山県、広島県 
カワラケ
参考文献 場所兵庫県浜坂 
サナダベラ
参考文献 場所千葉県館山 
スナベラ
参考文献 場所和歌山県白崎・辰ヶ浜 
スジベラ
参考文献 場所和歌山県辰ヶ浜、兵庫県淡路島福良 
アブラナメ
参考文献 場所富山県新湊 
モンギザ
1 備考体側に紋があることから。 参考日比野友亮 場所山口県 
タテギザ
2 備考縦に一文字が入ることから。 参考日比野友亮 場所山口県 
トウリビンク
参考文献 場所山口県下関 
アオギザミ
1 参考文献 場所岡山県、広島県 
ヒコゼ
場所島根県益田市 
ハマキダ
場所徳島県美波町由岐 
ギザメ ギゾ
参考文献 場所愛媛県宇和島 
クサブ
参考文献 場所有明海 
アオアクジ アオアクビ
参考文献 場所石川県宇出津 
アカアクビ アカアクジ
2 参考文献 場所石川県宇出津 
オオアクビ
1 参考文献 場所石川県能登町宇出津 
キュウセン
備考標準和名。田中茂穂は神奈川県三崎で雌をキュウセン、雄をアオベラというと述べている。 参考文献 場所神奈川県三崎 
キョウセン
参考文献 場所神奈川県三崎・江ノ島、新潟県寺泊、玄海 
ジョロユオ
参考文献 場所福井県敦賀 
ウミゴイ
参考文献 場所福島県小名浜 
ジョロ
参考文献 場所秋田県男鹿、三重県鳥羽 
アオベロ
参考文献 場所紀州(三重県西部・和歌山県) 
アカクサビ
2 参考文献 場所長崎県大村湾 
クサビ
参考20190729 場所長崎県平戸市 
モグレ[潜れ]
備考砂に潜る生態から。 参考佐藤厚さん 場所長崎県雲仙市小浜 
キザミ
参考文献 場所関西など 
シマメグク
参考文献 場所青森県 
シマメグリ
参考文献 場所青森県、秋田県象潟 
アカベロ
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県安良里 
ジョウロイオ ジョロウイオ
参考文献 場所静岡県浜名湖 
アカベラ[赤ベラ]
2 参考文献、静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分譲 場所静岡県白浜・土肥、石川県七尾、兵庫県明石・淡路島福良 
ショツカンダイ
参考文献 場所静岡県静浦 
アオギザミ[青ぎさみ]
場所広島県竹原市 
アオベラ[青ベラ]
1 備考雄。田中茂穂は神奈川県三崎で雌をキュウセン、雄をアオベラというと述べている。 場所神奈川県三崎、知多半島、石川県七尾、和歌山県辰ヶ浜、京都府丹後半島、兵庫県淡路島福良・明石・姫路市 
アカギザミ[赤ぎさみ]
2 参考文献 場所広島県竹原市 
ベンゴシ[弁護士] エトリ[餌取り] タテスジ
場所富山県氷見市藪田浦漁業協同組合 
ギザミ
場所岡山県笠岡市、広島県竹原市・呉市・広島市、岡山市、備前市など、福岡県博多 
シマメグリ
場所山形県鶴岡市由良漁港 
バクト ビコンクロウ ヒコンジョウ ビンゴシ ベコロ ベラ ベリベリ ベロ ホトケノイオ ホンベラ モバミ ムギヤキ モイオ モクジ ヨネズ ヤギ
参考文献