第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
九十四巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
どこまで続けられるか未知数ですが、毎日一かんずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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磯間八/ヒレナガカンパチ 2007年1月5日 466
 師走となってすぐの日、知り合いの寿司屋の店主から「箱に“イソカン”って書いてあるけど。これカンパチじゃないのかね」と聞かれて、改めてボクも驚いたのがヒレナガカンパチである。「どうしてこれほど入荷の多い魚を今更のように聞いてくるのか」、これに唖然としたのだ。目の前にあるのは伊豆七島神津島からきている。築地を始め関東の市場では東京都内の伊豆七島、小笠原からの荷が少なくない。そこにヒレナガカンパチというのもお馴染みのものなのだ。「おかしいなとは思っていたんだ。体形も太り気味だし」。これをたかさんに話すと「寿司屋なんてそんなもんだよ。オレも昔は別の種類だって思わなかった。味も近いよね。今日のなんてカンパチって言われれもわからない」。比較的きれいな血合い、酸味は薄く、また脂ののりもいまひとつ足らない。「でもうまいと思うな。味があるよね。硬さもすし飯と合っているし。カンパチと比べてみても“やや落ち”くらいじゃないの」。このときボクは思った以上のにぎり寿司の旨さを黙然と堪能していたのだ。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
赤帽/アカボウ 2007年1月7日 467
 漢字で「赤帽」としたのは、たかさんの勝手な思い込みである。正しいかどうかわからない。本当は亭主の好きな「赤烏帽子」としたいような派手な魚である。熱帯に多い魚でまあ九州や沖縄では食べられているだろうが、本州あたりではだれも知らない魚に違いない。それを沼津魚市場で「学者が仲買をしているような」と賞される青木修一さんがボクのところに送ってくれた。ベラの仲間なので当然、皮を活かして霜皮造りにする。そして出来上がったのがきれいな握り。「江戸前握りにしては“姫”めいているけど、たかさんこれお任せに入っていたらいいね」「そうだね。江戸前にはこんな色彩はないね。しかも皮に風味があってうまいしね」。身もなかなか味わいがある。やや柔らかいのですし飯との相性もよく、端正な握りとなっている。種名のアカボウを教えて「赤帽」を思い浮かべたのは、たかさんである。ちなみにボクは赤帽を実際には見ていない。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
髭鯛/ヒゲダイ 2007年1月11日 468
 このごっつい野武士のような面構えを見て、何か言うだろうなと思ったら、たかさんあっさりまな板にのせておろし始めた。「硬いな。え、魚の名前をどうして聞かないのか? って。知ってるよ。前に言ってただろ“ヒゲがあるからヒゲダイ”だろ」。身に包丁を入れると、「重いね。包丁が、脂があるようだね」。ビックリしたのは脂が皮下ではなく身全体に混ざり込んでいる。そして皮下の血合いの色合いも淡い。「刺身でもうまいね。イサキの仲間だって、全然似てないし」。そして厚めに切り付けてまずは2かん。「こんなに主張するんだね。個性的な味じゃないのに、旨味があるってことかな。確かにイサキに通じるところあるね」。身はやや柔らかく、どうも脂が混在しているために身をしなやかにしているようだ。そして味が濃い。「このおヒゲもだてじゃないな」。たかさんがこちらに向けたヒゲダイの顔が「誰かに似ている」。
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姫甲烏賊/ヒメコウイカ 2007年1月12日 469
 福島県、茨城県などから寒くなると小型のイカがどしゃどしゃっと入荷してくる。今回のは茨城県大津港からのエゾハリイカとヒメコウイカが5キロ判で入荷。ここからヒメコウイカばかり選んで、寿司ネタに作る。外套長(所謂刺身にする胴の部分)が10センチに足りない小イカなので、貝殻(甲)を取ると、そこから切れ目を入れて開く。これを皮付きのままあっさりと、ほんの20秒ほども煮て出来上がり。この味わいは、プロのたかさんや、横川町鮨忠さんに教わったやりかた。これは申し分のない握りとなった。「やっぱり、イカは煮ると味が出るね。とくにこういった小イカはそう。今回は熱を通すタイミングもいいかな」。すし飯と、醤油、ほんの少しの酒と砂糖が作りだす甘味と、これが総てまとまって舌にくる。たぶん江戸前握りのもともとの形はこんな小さな雑魚を使ったところから生まれたんではないだろうか。
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ミンククジラ 2007年1月14日 470
 かたまりを出すと、素直に切り付けて、たかさんすんなり2かん握る。「あれ、鯨を握るの、そんなに好きじゃなかったよね」、「嫌いでもないよ。あえて使わないだけ」。でも最近、クジラを刺身で出す料理屋も増えたし、きっと寿司屋でもネタとして使っているだろう。だから、たかさんも至って当たり前に握ってくれるのかな。と、思っていたら「意外にミンクを握りに使うところ多くはないと思うよ。お客も好んで注文しないし、特殊なネタだろうね」。「味は悪くないよ。旨味があるし、臭みはまったくない。これ3200円(キロ当たり)か、高くもないんだな」、たかさん、少々考えながらもクジラをネタにするのに、やぶさかではないようだ。この旨味は牛刺身にも似ている。でも違うのは熱を通すとやや臭いが出るところ。ときどき「市場寿司 たか」でも上州牛を握るのだが、そのとき軽く炙ってからつかうのである。でもクジラは炙るといかにも獣じみた臭いが立つ。だから旨さもほどほどで、感激するほどでもない。「きっとシロナガスクジラの尾の身だったらうまいだろうね」。
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