第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
九十三巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
どこまで続けられるか未知数ですが、毎日一かんずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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タチモドキ 2006年12月24日 461
 やや深いところに棲息するタチモドキは釣り師には嫌われ者である。竿先がごつごつしているかと思っているとその内アタリが消える。あれれと思ってあげたらハリスは何者かによってかみ切られている。これがタチモドキの仕業なのだ。だから釣り上がったら、憎らしいのか船底にたたきつけて海にポイ。これをカモメがうまそうに食っているのだ。「カモメさん、そんなにうまいのかね」ということで、これを持ち帰って食べたらなかなかうまいじゃないか。なんてことを思い出しながら「市場寿司 たか」に一本持ち込む。これは釣りではなく沼津魚市場にあがった底引きのもの。「やけにボロボロだね。皮がもろいんだ。これじゃ引けないわ」といって皮つきのまま、すぐに握りとなって出てきた。そして二人して「うまいね」と感心する。身のなんともふくよかな質感、脂の含み具合。旨味もあるのである。「こうりゃ、いい味だわ。さすがにタチウオの仲間だ」。「これ、たかさん本家よりうまいかもね」、「それは言い過ぎだな。本家には負けるだろ」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
尾鷲市「すし処一重」の正月の寿司 2007年1月1日 別巻
 三重県尾鷲市にあって「一日一魚」を作成する岩田昭人さんはボクにとってまさに先生のような人である。どうして先生かというとその毎日の文章から得ること膨大だからだ。その岩田さんとケータイで話しているときに出てきたのが「一重」の正月用の寿司なのである。どうやら押し寿司、もしくは切り寿司といわれるたぐいのもので、高菜を使ったところが特徴だという。それが今朝、まさに朝寝坊の遅めの朝ご飯でも食べようかというときに到来した。その荷物を開けて、まず妻が驚きの声を上げる。「きれい」。この「きれい」は華美というのではなく日本の伝統的なものに繋がるような美しさなのだ。玉子焼きにニンジン、絹さや、干しシイタケ、魚はサンマとマアジのように思えた。そして裏返すと表葉の赤い高菜が張り付いている。この高菜が寿司の仕切となっているのだ。思わず食べてしまいそうになるのを我慢。じっくり撮影して、堪えきれなくなって行儀悪く手でつまんだ。これがなんとも優しい甘さの、そして煮染められた野菜との調和のとれた見事な味わいなのである。たったまま2つ。お茶を入れてまたまた2切れ。それほど大食いとは思えない妻も三切れ目を食べている。思わず尾鷲に行きたくなる「一重」の正月寿司である。
すし処一重 三重県尾鷲市南陽町9-3
岩田昭人さんの「一日一魚」へ(岩田さんは今、雑誌「伊勢人」に連載を持っている)
蛤/ハマグリ 2007年1月1日 462
 ハマグリはどこにあるんだろう? これがボクの目下の悩みである。我がデータベースにはこれは間違いなくハマグリだというものがない。そのなかにあってハマグリに限りなく「違いない」と思っているのが鹿児島県笠沙のわかしおさんにもらった加世田吹上浜のものである。でも小さい。わかしおさんに言わせるとときどきでっかくてビックリするようなのがいるらしいのだが、それは希だという。それを煮はまにして「市場寿司 たか」に持ち込む。「なんだこれ、ちっさいな。1、2、3個と、これでいいか」。煮たのは煮きり酒とほんの少しの薄口醤油で20秒ほど。これを食べてみるとうまいのである。「味が上品だね。アサリとは違って品格がある、さすが小さくてもハマグリだね」。これはたかさん、ほめているのだろうか? でも握りがなかなか味がいい。やはり淡白すぎてもの足りないが「いやみがなくて上品な味わい」とたかさんが言うごとく、奥ゆかしい味わいである。
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煮立て穴子/マアナゴ 2007年1月2日 463
 晩秋に撮影したもので、マアナゴの旬からしても来夏に取っておきたかったのだが、あまりにうますぎて、その感動が冷めぬ内に掲載する。それが煮立て穴子なのである。「市場寿司 たか」では毎日使い切るほどのマアナゴを煮る。そして出来るだけ当日使い切るようにしているのだ。その煮上がったばかりの穴子を「煮立て穴子」と呼ぶ。翌日まで残ったものはときにはちらしなどに入れてしまう。穴子は煮上がると、そのまま鍋でさます。やっと手を入れられるようになったら、まるで壊れ物を扱うように細心にバットに上げる。ボクはこの時間帯をねらってカウンターに座る。「もう少し待てよ。まだ握れないよ。身が落ち着いてからにしてくれない」という、たかさんに無理矢理、それこそ土下座してでも握ってもらう。それは口に持っていく間にもくずれるほどに柔らかい。まず、鼻で穴子の芳醇な香りを楽しみ、あ・うっと口に放り込む。このときついつい受け口になる。そして舌で受けた途端に穴子が溶け始める。鼻で感じるよりももっと強力な香りが口から鼻に抜けていく。すし飯といつの間にか渾然一体となって、まるで握りの秘密の花園に迷い込んだようではないか。陶然としていたら後ろから「たかさん、次はオレだよ」。これはうまいもん好きの肉屋である。市場人がこぞって狙っているのである煮立て穴子を。
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間鰤/アイブリ 2007年1月3日 464
 晩秋の沼津魚市場、巻き網船が入港してきている。大量のアカカマス、ゴマサバ、さごし(サワラ)、マルソウダ。カマスは値がつくから今日は大漁だ! なんて、ふと選別台の下を見るとアイブリが落ちている。「もらっていいかな」と言うと、「こっちにもあるから」と2本、3本。「うまいだらけんど、競りに出しても値がつかないだら」と船から声がかかる。それを持ち帰ってすぐ「市場寿司 たか」へ。「まるでカンパチの子みたいだね」。お卸し始めると「あれー? 身の色が違うぞ。メダイに似てる」。たかさん久しぶりに魚らしい魚でちょっと喜んでいるみたいだ。そして2かん。これが「平凡だけど、味のいい握り」なのである。まさにメダイの握りに近い。メダイと違うのは、ほんの微かに酸味があって、でもそれを補うように甘味も感じられる。「オレはこれ好きだね」、たかさん、寿司ネタとして気に入ったようだ。「また沼津に行ったらたのむよ」。
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びんトロ/ビンナガマグロ 2007年1月4日 465
 ある日、市場を歩いていると知り合いの仲買から声をかけられた「おい、これ持ってかないか。久しぶりに脂もあるし、値段も安いしさ」。その値段がキロ当たり1900円。一体を4等分し、冷凍した棒きれのようなもの。デカイ発泡には「ビントロ」と殴り書きしてある。「安いのか高いのかわからんな」と言いながら1本分けてもらう。すぐにそれを「市場寿司 たか」で解凍する。「これはね。一般の寿司屋じゃ使えないんだな。オレは好きだよ。いいものは脂があって甘味が感じられるだろ。昔は色合いが赤くないし、脂が強いんで嫌がられてたけど。素直にうまいと思う。でも意外に高いだろいいのは」。まさにその通りで、「びんトロ」は明らかに水産物でも「商材」そのもの。巨大な冷凍庫を持つ商社が在庫を抱えて、これまた大量消費する回転寿司チェーンに売る。「だから仕入れでも、お客のイメージからも回転寿司で回してくれってわけ」。そしてなんとも豪勢に皿盛りに。市場仲間も含めて「おいしゅうございます」と甘味のある脂のうまさを堪能するのである。
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