第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
八十三巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
どこまで続けられるか未知数ですが、毎日一かんずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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蓑笠子/ミノカサゴ 2006年9月16日 411
 水族館などでみるとスター級の魚、ミノカサゴも食用となると「待て暫し(まてしばし)なのである。きれいな花には棘があると言ったのはサトウハチロウではあるが、その通りでミノカサゴのヒラヒラのついた棘も刺されると大変、その上、身もうまくないとなったらただの観賞魚。そのためか市場でも無造作に捨てられている。でもそんな魚でも寿司にすれば食べられるのではないだろうか? 「これが酢飯の不思議さだよね」と言ったら、たかさん、「そのきれいな棘とやらを取ってきたら下ろしてあげる」と言う。それで怖々と棘を切り取り、出直してくる。そして生で食べてみて「ぜんぜんうまくない」とは、プロからの厳しいご指摘。それで皮目をさっとあぶって握りにしてみる。「これもだめだな」と言うのだが、そんなにまずくはないのだ。微かに皮下に旨味が感じられるし身は上品である。ただ旨味に欠けるだけ。「あのね、きれいな姉ちゃんは好きだけど、きれいな魚はまずいのさ」と言うことで、たかさんの落ちを得まして、お後がよろしいようで。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
牡丹海老/トヤマエビ 2006年9月17日 412
 今や回る寿司屋にも置かれているのがトヤマエビである。そして品書きには「ぼたんえび」とあるはず。分類学の世界はともかくもちまたではこのエビをみな「ぼたんえび」と呼んでいるのだ。それでは偽物か? というとそんなわけではなく、もっとも早くから漁をはじめたのが北海道の噴火湾、そこでの呼び名だったというだけのこと。ましてや値段の飛び抜けて高いエビなのだから偽物になりすます必要は皆無なのである。ちなみに回転寿司で回っているのは間違いなくロシアなどから来ている冷凍もの。生はとても無理だろう。ときどき扱っているのだから『市場寿司 たか』でもほいさと握ってくれる。そして改めてその旨さに感動するのだ。「なんたってこのぷるっとした食感だね。そして適度に粘液質だし、甘いし」。甘味だけならホッコクアカエビに負けてしまうが、食感がいい、そして旨味はこちらの方が上である。「北のエビの王様かな」、「たかさん、それを言うなら女王様とお言い」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
カナド 2006年9月21日 413
 市場を歩いていると普通1種類の魚が一箱に入荷しているのを見るはずである。まあ果実や野菜でも同じことだろう。でも水産物には例外があって1種類では一箱にならないので数種類をまとめて一箱にすることがある。それを「いりあい」と呼ぶ。当然、混ざりものだから値段は安く、魚通にはねらい目となる。そんな箱にしか入って来ない魚がカナドなのである。産地でもまとまってはとれず、他のカナガシラの仲間と混ざり合ってあがる。そんなカナドがいりあいの箱に大小入り混ざって入っている。大きいのを選んで『市場寿司 たか』に持ち込む。「カナガシラかい」というのを説明する。「そうか頭がやけに大きいと思ったよ。歩留まりは最低だね」、値段を聞いて「それなら使えそうだ」。そして出来上がった握りに感心したのかさっそく仕入れに走る。きれいな白身で血合いはうっすらとしか見えない。身質もややしっかりして驚いたことに明らかな旨味が感じられる。さっそく仕入れて卸し始めた、たかさんに「そんなに気に入ったわけ」と言うと「ホウボウ、カナガシラの旨さに最近はまっているんだよ。これもいい。こんな手間のかかる、名前の知らない魚を使う寿司屋もいないと思うけどね」。そうなんだよな。「カナドが多いからね」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
煮貝/ビクトリアアワビ 2006年9月27日 414
 八王子魚市場貝担当の鈴木さんのところで見つけ「煮貝」。山梨県の「かいや」という業者のもの。甲州山梨に「煮貝」をつくる業者は多く、そのどれもが「うまいんだよ」とはたかさんの弁。今回は期待して「市場寿司 たか」へ。渡すと何も聞かないで目の前に2かんが出てくる。「これ見たがあっさりし過ぎだね」、「文句言わないの。ツメを塗るとせっかくのアワビの味がわからないだろ。とやかく言わないで食ってみな」。分厚く切り付けているのに「煮貝」は柔らかくそしてアワビの味も生きている。そしてすし飯とも馴染んで「うまいじゃない」。「そうかな。これ山梨の煮貝だろ、よくできているよ、寿司屋でもこれ使ってる店は少ないはない」。たかさんの顔に微かに冷ややかな笑いが浮かぶ。そしてもう一かん。「ええ?」という顔だったんだろうね。口に放り込んだ途端に濃厚な磯の香り、貝のうまみ。「たまにはオレもアワビを煮るんだな。そしてこれは房州産クロアワビ。マダカの方がいいんだけどね」。「確かに山梨の煮貝はうまいよ。でも寿司屋が作ったらもっとうまいの」。「まいりました。たかさん、ついでにもう一かん食べたいな」、「だめに決まってるだろ。コノヤロ!」。
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柳鰈/ヤナギムシガレイ 2006年10月1日 415
「流通する魚でもっとも値の張るものはなにか?」と聞かれて真っ先に思い浮かぶのは本まぐろ(クロマグロ)、きんき(キチジ)、シマアジときてヒラメ、マツカワガレイとカレイ目が浮かんでくる。それにまたまたカレイ目のヤナギムシガレイをつけ加えなくてはならない。ただしメスの値であるが。市場で高級魚というと卸値で2000円以上、「超」をつけるなら5000円を超えるもの。「でもヤナギムシなんてせいぜい2000円くらいだろう」なんて思いこんでいる人、大間違いである。時期のメスなら8000円、10000円を超える代物が築地には並ぶのである。それを時期違い、しかもオスを見つけて塩焼きならぬ、鮨寿司ネタにしてみた。たかさんなんて「うまいわけないだろう」と口に放り込む。この刺身が意外や意外、うまいんだな。それで握ってもらったら、これまたいい味だ。「素直にうまいな」とたかさんは呟くが、「本当にこの子はえらいね」とほめてあげたいくらいに魚の白身の上品な味わい。そこはかとない甘味。「縁側もいいじゃない」とたかさん。寿司図鑑を作っているとこんな発見がいちばんうれしいのだ。
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