第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
六十八巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
どこまで続けられるか未知数ですが、毎日一かんずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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煮はまぐり/シナハマグリ 2006年3月2日 336
「煮はまは手間がかかるし、材料を探すのも大変なんだよ。もし基本的なネタとしておくんだったら値段はいくらにするか。ちょっとウチでは無理かな」と語るのはたかさん。『市場寿司 たか』は人を使わないこと、市場をまめに歩きネタを探すことで客単価を下げている。手間を惜しまず玉子焼きもこはだも自家製である。それでも煮はまは無理と言う。そんなひな祭り間近な日、大きなシナハマグリを見つけた。これは中国大陸に住むもので我が国のハマグリとは遺伝子的のもっとも近い種。これをむいて、茹でる、大急ぎであら熱をとり、これを真半分に開き、ゆで汁・砂糖・酒・醤油の地に漬け込む。10個作るのに1時間以上かかってしまう。これを一晩寝かして握りにしてもらう。これが感動的であった。たかさんは旨いときの口癖「うん」を繰り返す。口に入れると微かな醤油の香りとともに二枚貝の風味が立ち上がる。甘味、苦み、そしてじんわりと旨味が広がって、その広がりをすし飯がやや抑えてくれる。野生が叫ぶ「ぼんぼり持ってこい、おひなさんでボーリングするぞ、ガオ」。かくして肥満中年は飽食するのであった。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
的鯛/マトウダイ 2006年3月3日 337
 まことに人めかしい魚である。こいつを釣り上げるとにらみつけられるように思える。惜しくもなくなった伊藤雄之助(例えが古いな)に似ているし、フレンチでの呼び名サンピエールというのは彼の地の聖人の名であるそうな。ヒラメなど冬の生き餌釣りの代表的な外道なのだが、へたなそげ(40センチ前後の小さなヒラメ)より何倍も「おめーの方がありがたいぜ」と唾が湧き上がるのだ。この魚、面相と反比例するごとく味は超二枚目である。端正な白身、そして淡い脂、旨味。オマケに世界3代珍味のフォワグラを脅かしそうな肝のうまさ。これを卸しながら「これは握ったことないけど、うまいのか」なんて言っていた、たかさんが黙るのもすぐのこと。「なんだコレ、ただもんじゃないな」とうなる。旨すぎる肝をネタにのせて淡麗な味わいを深く濃厚にフォローする。欠点は身割れのしやすさと、歩留まりの悪さかな。「それにしてもうめーな」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
めすがに/ベニズワイガニのメス 2006年3月4日 338
 ベニズワイというのは一昔前までは日本海特産であった。しかもズワイガニの偽物なんて言われて一段下がる位置にあったように思う。これが太平洋側でも盛んにとれるし、また私的には味わいはカニの中でも屈指のものだと考えている。すなわちズワイガニの仲間をとっても状況は年々変わってきているのだ。さてこのベニズワイでも主に入荷してくるのはオスの大きい方である。メスはめったにお目にかかれない。それがある日、ぽつんと一箱入荷してきた。当然、手早くゆで上げて握りに仕立ててみました。これが美人なんですね色合いといい、また味わいといい。「おひなさんにピッタリのきれいな握りだね」とたかさんの弁を待つまでもなく食うのが惜しい。でも「ごめんね」といいながらパクリ。ベニズワイの身の甘味があり、そこに内子の濃厚な旨味がトンと舌を打つ。そしてすし飯もちゃーんと活躍して、「うまいな、ベニ子ちゃん」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
マツカワガレイ小 2006年3月5日 339
 ヒラメ、マコガレイなどカレイ目の魚はデカイ方がうまいと思っている。マダイのようにデカイと大味になるのもあるがヒラメの70センチ、80センチはなかなかきめ細やかな身質で味がいい。またマコガレイ、ホシガレイ、そしてこのマツカワの2キロ、3キロもまた小さなものに数倍するうまさなのだ。そんなときに市場に登場したのが20センチ前後の極小マツカワ。これはまずいだろうと『市場寿司 たか』に持ち込む。「まあ、これじゃ味もクソ(ご免なさいたかさんが言ったことなので)もないだろう」なんてぶつぶつ。それでも出来上がった握りをパクリとやったら、意外にも味がある。「まあ、それほどうまいか? と言われると平凡だけど、合格点すれすれ、かな」。白身の味わいにほんの少し甘味がある。そしてなによりもクセがないので素直にすし飯と喉に消えていってくれるのだ。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
サツマカサゴ 2006年3月6日 340
 昨年の秋、沼津魚市場の生け簀をのぞいているのは佐政水産の青木さん。近寄ると「小さいんですけどサツマカサゴなんです。小さすぎておいしいかな」と思案している。サツマカサゴは沼津では比較的数少ない魚。やや深い場所にいるカサゴの仲間で、トゲに毒があり、面相は怪異。それでも白身のおいしい魚で「活けなら、これでも高いでしょう?」と聞くと、安いはずだというので競り落としてもらった。これを手早く締めて『市場寿司 たか』に持ち込む。午前に沼津をたって八王子までは3時間。午後、客のひけた店でサツマカサゴを握ってもらう。「まあ、魚は新しいからうまいということはありませんな」とたかさん首を振る。そのとおり透明感があって美しい握りなのに味がない。プリっとしていて、まあそこだけは楽しめるが、小振りでもともと旨味がなかったのだろう惨敗である。「大きければうまいんですけどね」と青木さんも言っていたのだ。またこんどはデカイのを探してトライすべし。
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