第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
四十八巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
毎日、1種類ずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
本ページに限っては総て真鶴『栄寿司』の握りです。
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真鶴 栄寿司 2005年11月22日 別巻
 神奈川県真鶴、駅に降り立って長い坂道を下りていく。そのうち、真正面に海が見えてきて、また下ってくるとそれが真鶴の深い湾であることがわかるはずだ。そんな下りきった左手にあるのが『栄寿司』である。今や真鶴は観光地として寿司屋、料理屋、旅館などが数知れずあるものの、戦後、そして高度成長期にあっても鄙びた港村でしかなかった。そんな漁村に昭和39年、浅草から移り来た『栄寿司』は当地での江戸前寿司では嚆矢と言える店である。「いったいどうして真鶴に来たのですか」というと、どうもとことん地の魚に惚れ込んだ挙げ句であったようで、今でも養殖はもちろん、旅の魚(築地などを回ってきた魚)は使わず、毎日目の前の漁協に通ってこまめな仕入れを欠かさない。その地の魚の水揚げを見るとともに、ご主人に魚の話を聞きながら仕入れについてまわってみた。当日はめったにない不漁であった。それでも発砲には多種多様な魚が入っている。その多くは東京などの寿司屋ではお目にかかれぬものばかり。期待を膨らませてカウンターに座る。
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室鰺/ムロアジ 2005年11月22日 236
 鮮度のよさのこともあるが、それ以上に絶対に産地でしかお目にかかれない魚がある。ムロアジもそんな魚のひとつである。ムロアジというと伊豆七島新島でのくさやや開きの干物。これが定番で生で食べるなんて「ちょっと恐くないか」と食中毒を心配するのが当然。何しろサバと同様にヒスチジンも多いし、血合いもたっぷりで酸化しやすくすぐダメになる。じゃあ、刺身はまずいのかというとあにはからんや、漁師などは船で好んで刺身にしているのだ。そこまでではなくても目の前は海という店である。まだ暗い漁港でムロアジを数本見ている。ひょっとしたら来るかなと思っていたとおりに軍艦に仕立てたのが登場した。ネギにぱらりと塩が振ってある。山盛りのムロの身は青魚の酸味と旨味を口いっぱいに広がる。そんなときにネギの風味と塩味が来てすし飯が加わってきた。驚いたことにこの混沌の中でしっかりムロの身がシコっとした食感を感じさせてくれている。この時ほど真鶴の海を感じたことはないのだ。
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ハマダツ 2005年11月23日 237
 定置網などで必ず捨ててあるのがダツである。厳つい顔つきで歯が鋭くて危険。しかも身体が細長くて、小骨が多いので食べるのが面倒なのだ。それではがんばって食べて、実際にうまいのだろうか? これが難しいところだ。決して脂があるわけではない、当然火を通すとぱさっとするのだ。それでは刺身にすればいいのだけれど、何しろこの小骨が無闇にたくさんあるのだ。それを栄寿司さんでは丁寧に取り去って、見事な握りに仕立ててくれた。これで初めてハマダツが味わえるのだ。これが意外なことにうまい。ダツのイメージからいかがなものか、と思っていたら、しっかりと身にうまみが感じられ、また微かだが甘みもある。とれたてであるためにシコシコと口の中で心地よく、これこそ海辺の寿司屋の醍醐味であると思った次第である。
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ぐりんど/ジンドウイカ 2005年11月24日 238
 産地の港に来て、いちばんうまそうに思えるのがとれたてのイカである。アオリイカなど生きて明滅しているし、ヤリイカなどは透明感があって白い、そのどれもが築地など関東の市場ではまず見られる可能性はないのだ。なかでもジンドウイカに関しては生食用ではなく煮つけにでもするのだろう水氷にされて白濁した色合いに変貌してしまっている。それが真鶴の岸壁にあるときの美しさは、同じイカを見ているのか疑いたくなるほどに美しい。そして『栄寿司』で目の前に来たのがこれである。「『ぐりんど』です」というのが一瞬わからなかった。これが真鶴の呼び名なのだ。1ぱいを下足をはさんで1かんに仕立ててある。身と下足の食感の違いが楽しい。当然、イカの甘みがそれ以上に口中に広がって自然とすし飯に馴染む。感想は「言えない」のだ!
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うずわ/ヒラソウダガツオ 2005年11月25日 239
 味はとびきりいいのだが、産地でしか食べられない魚という意味ではヒラソウダも最たるもの。夏から秋、初冬に定置網、巻き網などに入ってくる。定置網の多い真鶴ではうまい魚の定番かもしれない。『栄寿司』ではこれをタタキ風に皮目をあぶって握りにしてくれた。これがまた興があっていいのだ。焼いた皮と実の間に独特の風味と濃厚な旨味がある。そして生の部分の酸味。これが口の中いっぱいに広がり、そこにすし飯が混ざり込む。これなどさすがにヒラソウダの食べ方を知り尽くしての手間なのだ。うまいので、もう1かんいただきたいと、目だけで訴えたんですけどね。
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厚焼き玉子 2005年11月26日 別巻
 現在ある寿司屋での卵焼きには2種類あり、それが厚焼き玉子と出汁巻き玉子焼きなのである。厚焼き玉子というのは魚かエビのすり身を卵に混ぜ込んで時間をかけて焼き上げるもの。出汁巻き玉子はだしと卵で短時間に焼いたものだ。このふたつのうち、寿司屋での玉子焼きというのは本来、厚焼き玉子なのである。出汁巻き玉子というのは日本料理の世界のもので寿司屋が使うようになったのは新しい。それなのにこの厚焼き玉子が今や幻の一品となっている。街の寿司屋でもほんの一握りの寿司屋がこれを作り続けている。そんなものに真鶴でお目にかかれるとは思ってもみなかった。しっとりと持ち重りのする分厚い厚焼き玉子は適度な甘みを感じさせて、次にじんわり旨味が来る。こんなところに浅草で培った江戸前の古き良き味を大切にしているのだここは。
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ウルメイワシ 2005年11月26日 240
 漁港で魚を見ていると、これだと思う魚がある。当日11月18日の真鶴の水揚げではマダイでもアマダイでもなく、本来は地味なはずのウルメイワシだった。これが透明感のある体表、その内側から銀色に輝いているのだけれど身が丸く膨らんで「この場で手割きにして食べてしまいたい」と思ってしまうような代物。これが実を言うと『栄寿司』では真っ先に握られたもの。形のいいのを一匹そのまま2枚づけになって、口に放り込んで驚いた。噛むと強力に弾き返してくるのだ。中央市場を通って来たウルメでは絶対に感じられない弾力、そして食感。それが遅れて微かな酸味を伴った旨味を送り込んでくれるのだ。「これはここまで来ないと味わえないものだ」と感動がこみ上げてくる。また改めて産地の寿司の真味を知ることになった。
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