寿司図鑑 千 目次へ!
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ホウボウ 2005年9月23日 176
秋から春にかけてホウボウがうまくなる。これはホウボウの産卵期が初夏であるためだろう。それは桜が散って、そうだなそろそろ近所の雑木林の若葉が光り始め時期だったろうか。「ホウボウがね、好きなんだよね。それでついつい仕入れて、残ると自宅で肴にするわけ」と言ったのは渡辺隆之さん(『市場寿司 たか』)。逆に「そんなに刺うまいかな」というと、すぐに出てきたのが2かんなんである。一見、鈍い色合いで、期待しないで口に放り込むと、いきなり居住まいを正したくなるような衝撃的なうまさがきた。その鈍い色合いが脂であって、微かな甘みでもあるらしい。適度に柔らかな身がすし飯を包むようだ。9月を待ってまた2かん。まだまだ脂ののりがイマイチであるが、味わいは春の盛時を思わせる。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
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エゾボラモドキ 2005年9月24日 177
関東の市場でみかける「つぶ」というと「まつぶ」であるエゾボラ、「青つぶ」と呼ばれるヒメエゾボラが多い。ついでアツエゾボラ、オホーツクのマルエゾボラ、フジイロエゾボラ、そしてこのエゾボラモドキであろう。エゾボラを「Aつぶ」、その他を「Bつぶ」ともいう。「つぶ」の味わいはコリコリした食感と噛むほどに滲み出す旨味甘みだろう。この「Bつぶ」といえども味わいはよく、しかも安いのだからお得である。これを握ってもらう。「つぶはね、どう握ったらいいのかわからないね。これを握りにするのも、関東じゃ意味がないしね」と、たかさんが話す。確かにネタにして硬すぎるし、そのためにすし飯と融合しないのだ。それでも、コリコリして、微かな苦みと甘みがあり、それだけでもうまいのだけれど、酢飯とも味的には相性がいい。「あってもいいネタ」だと思うんだけどね。
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とろぼっち/アオメエソ 2005年9月25日 178
福島県や茨城県にいるマルアオメは「めひかり(目光)」、銚子以南にいるアオメエソは沼津で「とろぼっち」、三重県尾鷲、高知で「めひかり(目光)」と呼ばれる。深海性の小魚で独特の旨味のある脂を持っている。静岡県駿河湾沿岸ではかなり前から寿司ネタとして使われており、関東でも先取の気概のある寿司屋なら握りに使っているだろう。その証拠に『市場寿司 たか』に持ち込んでも、いかにも淡々と握りになって出てくる。「目光はね。半身1かんがちょうどいいサイズだね。血合い骨も気にならないし、今日のはちょっと立派過ぎるんじゃない」と気にしながら握りに仕立ててくれる。そんな心配よりも、うますぎて顎が外れないかの心配の方が先決だ。うなるほどうまいというか、2かんしかないのが精神的に辛いほどである。
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ヒイラギ 2005年9月26日 179
土佐では「にろぎ」である。大酒飲みで有名な土佐にあって、「にろぎで酒はのんだらいかんぜよ」と美しいお母ちゃんは父ちゃんに泣いて頼むそうだ。これはただでさえ大酒飲みが「にろぎ」の煮つけ、刺身を前にすると、もっと過ごしてしまうためだ。いかな鉄の肝臓を持った土佐のいごっそうでも、二升三升と飲んでは命がいくつあっても足りはしない。それほど酒に合うのが「にろぎ」なのだ。そんな「にろぎ」を土佐の漁師・永野廣さんから送ってもらった。「ぜひ寿司にしてみてくださいね」ということでいやがる渡辺隆之さん(『市場寿司 たか』)に粘液質のヒイラギを渡したのだ。「こんなもんうまいかな」といっていた、たかさんも刺身にした時点で旨さに惚れ込んでしまったようだ。まだまだ旬ではないというが脂がある。そしてシコっとした食感に爽やかな甘み、そして独特の風味。すし飯にもなんとも絶妙に合う。「小魚とあなどってはいかんぜよ!」。
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ギンガメアジ 2005年9月27日 180
釣りでお馴染みの「めっき」である。川の河口などでルアーを振っているのを見かけるが、ねらいはギンガメアジ。これを「めっき」というのは「銀メッキ」したような魚体の輝きによる。美しく見た目はシマアジのようであるが顔がいかめしい。この刺身、味がいいは知られているようには思えない。今日も、「塩焼きにでもするか」、なんて言う寿司屋に「ネタのしなよ」と八王子綜合卸売センター・高野水産で三枚におろして見せた。そして、そのまま2匹抜いて『市場寿司 たか』に持ち込み出来上がったのがこの2かんである。期待通りというか寿司にして素晴らしいものであった。「刺身じゃ物足りないかも知れないけど、寿司には向いているよ」と、たかさんが言ってくれるが、その通りで刺身にするよりすし飯と合わせた方がいい。やや旨味に欠けるのであるが、その控えめな味わいが寿司にして光ってくる。「何かんでも食られそうな」寿司なのだ。
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