寿司図鑑 千 目次へ!
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オオニベ 2005年9月8日 161
数の少ない魚である。ニベというと小魚というイメージがあるのが、これはお総菜とか韓国の干物で有名なシログチやキグチなどが目に付くからだ。実を言うとこのニベ科には大きくなる種が多くてフウセイ、このオオニベなどは軽く1メートルを超えてしまう。その上、白身で血合いの色が美しい。これを黙って出して見せるとマダイや大型のイサキと間違ってしまいそうだ。駿河湾、沼津港には釣り、底引き網などでとれる。当然、釣りものがいいのであるが、値段がいいので底引きものを買ってくる。そしてなんにも知らない、渡辺隆之さんに握ってもらって、そのうまさに真っ正直に驚いてもらった。「身自体がうまいね。なんていうかな味が濃い。甘いしね。すし飯との相性もちょうどいい」。たかさんの言葉が総てなのだけれど、もう一つつけ加えると、この魚、まだあまり知られていない。ということでアマダイなんかと比べて値段が安いのだ。買うなら「早いほうがいいよ!」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
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ミダノアワビ 2005年9月9日 162
近年、アワビは高値安定というよりも暴騰している。なかなか1万円の大台を割らないのだ。それで増えてくるのが輸入アワビである。アメリカのアカネアワビ、オーストラリアのグリーンリップ、ビクトリアアワビなどに、いちばん新しく加わったのが南アフリカのミダノアワビである。「アワビの握りはあんまりうまかねーな」と八王子横川町の『鮨忠』さんから聞いたことがある。これはネタにして硬すぎるがためにすし飯に馴染まないのだ。これと同意見の、渡辺隆之さんに、無理をおして生で握ってもらう。これがあまり旨味がない。確かに歯触り、磯の香りが楽しめるがクロアワビのような旨味というか甘みに欠けるのだ。たかさんも「まあ、こんなもんだな。肝はそこそこいけるじゃない」という。
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ヒメジ 2005年9月10日 163
今年5月の末に徳島県阿南市橘水産市場に立ち寄ったおりのこと。ヒメジがまとまって水揚げされていて、関東では雑魚扱いなのに、ここではきれいに箱に並べて競りにかけられているのだ。阿南の人たちは見知らぬ旅人にも優しく、この怪訝そうにみるのに「ひめいちはなうまいんでよ。わしらはな、刺身して食べるんじゃ」と教えてくれる。また、ちょうど高知市の漁師・永野廣さんからも電話が来ていただいて電話でヒメジのことも聞くと、高知では酢で締めて握りにするんだという。関東では省みられないどころか捨てられる運命にあるヒメジが四国では様々に利用されているのだ。そんなときに市場で見つけたのが形のいいヒメジ。これを『市場寿司 たか』に持ち込むと、さっさと三枚におろして骨抜き、皮を引いて片身1かんの握りに変身した。この握りが恐るべき美味なのだ。味わいの良さというか濃厚なこともそうなのだけれど身に独特の風味があって、これがどこか華やか。身は柔らかく、すし飯との相性も言うことなし。
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笠子/カサゴ 2005年9月11日 164
夏から冬にかけてうまいのがカサゴ。体中刺だらけでごつごつしており、あまり見目美しい魚とはいえない。それが一皮剥けば透明感のある白身で歩留まりが悪いに関わらず高値で安定している。このカサゴを握りに使うというのは東京などでは少ない。実際に関東の市場にくる職人さんでも好んでコヤツを使ってやろうなんて人は希であろう。『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんもそんな一人。「カサゴは刺身や寿司ネタにするのはもったいないね。煮つけにすりゃいい味が出て、皮も頭の小さな身もせせって食べられる」という。これはまさに核心をついた話だ。魚をくまなく食べ尽くすというときに煮つけに勝る料理法はない。ましてや卸して歩留まりの悪いカサゴなど最たるもの。それを敢えて握ってもらって、意外なうまさを知っていただく。白身なのに旨味があり、微かな甘み、そして適度な歯ごたえ。これがすし飯になじんでとてもうまいのだ。
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ヘダイ 2005年9月12日 165
旬がわからないのがヘダイ。いつも味は優等生だ。名前はぱっとしないがその美しい魚体、上品な白身。全体に努力家の清楚な娘を思わせる。産卵期が春遅くから初夏であるから夏のはじまりの時期は外したとして、まだまだ残暑の残る9月はじめに握りに仕立ててみました。意外に平凡な魚を持ってきたね、という表情の『市場寿司 たか』の渡辺隆之さん、すぐに美しい2かんを出してくれた。最初に食べたのは、たかさん。なんだかいい顔してるねとこちらも口に放り込む。これが掛け値なしにうまい。素直なうまさというのは変だろうか。クセのない白身でほどよい旨味が感じられて後味に甘さがある。そしてすし飯とも素直に合わさって見事に喉の奥に消えていきます。「値段もあまり高くないし、ヘダイって優れた魚だね」と、たかさんの結論。まさにそれそのとおり。
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