寿司図鑑365 目次へ!
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皮剥/カワハギ 2005年8月13日 136
7月の終わりの日、「今のカワハギはうもうないでよ」、腹から卵をはみ出させた大振りのカワハギを前にして徳島県阿南市の漁師さんが呟く。その通りで木の芽どきから夏の初めにかけてのカワハギはどうにも箸が動かない。それが8月の声を聞いてツバメが2回目の子育てに入る頃になると身が張ってきてどんどんうまくなってくる。カワハギは肝がなくてはダメだねというが、暑苦しいときには透明感のある白身がなんともすがすがしい。これを捨て置く手はない。「まだ早くないかな」という、たかさんにさっそく握ってもらったのがコレ。やはり肝は小さく水っぽいがないよりはましとのせる。「いい味してるね。夏のカワハギもありかな」と、たかさん。その通りで身に弾力がある。そして噛むと旨味があり甘味を感じると同時にすし飯が混ざり込む。素直に「おいしい」と感激できる夏カワハギの握りである。
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水かます/ヤマトカマス 2005年8月14日 137
夏も盛りでそろそろ身も心も夏に疲れてしまった頃出てくるのがヤマトカマスだ。旬は秋だろうか? 秋になると各地で祭りにすしが作られるが、この秋のカマスを使う地方も少なくない。たかさんに「これを握りに使ってみてよ」というと、江戸前の寿司職人であるから、なかなか大変であった。仕方なく下ごしらえはこちらで引き受けた。カマスを三枚におろして、振り塩。ここで小一時間置き、ミツカンの山吹(赤酢と醸造酢を割ったもの)で洗い、一晩寝かす。これが、たかさんにはお気に召さなかった。「ネタがうますぎるんだよ。酢の味が勝ちすぎている。酢の個性は控えめでいいんだよ」と言う。酢の香りがたまらなく好きなので、これには同意できかねる。第一、この握り、素晴らしい出来ではないか? ネタの風味、旨味、適度な個性、すし飯との相性。どこをとっても「抜群ですよ」と、しっかり2かん目に手が伸びているたかさんに見得を切る。
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アカササノハベラ 2005年8月15日 138
この魚、関東で盛んなカワハギ釣りでの代表的な外道。ストイックなカワハギ師では「こんなもの」と捨てたりするがもったいない。身は白身でうまいのである。ベラの仲間ではキュウセンとともにもっともうまい魚、言わば優等生なのであるが市場ではとんと見かけない。これが関西ならそこそこ食べられるのに惜しいなと思っていたらやって来ました遂に。これをうれしそうに『市場寿司 たか』に持ち込んですぐに江戸前握りに。「おいおい、これベラかい?」というくらいだから、たかさんにとって味は合格点。身はもちっとしていて、噛むとシコシコ。食感だけでなく味わいも深い。すし飯との相性もいいんだなコレが。
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イネゴチ 2005年8月16日 139
沼津魚市場で魚を見ていたらいつも旬のものを提供してくれる菊貞・菊地利雄さんが「わにごち」なら安くていいかも、と教えてくれる。さっそく生け簀をのぞくとワニゴチではなくイネゴチが2匹。どうも沼津ではコチ以外の大型のを「わにごち」といっているようなのだ。底引きのイネゴチはあまりぱっといない魚なのだが活けともなると断然違っている。身は透明感のある白身、薄くヘギ造りにするとまだ身が起きてくる。これを翌日、握りにする。仕方なく一日置いて弾力は減ってしまったけれど旨味がぐんと増えて、しかもすし飯とも馴染みやすくなっている。産卵期で脂はないだろうと思っていたら、これも甘味となって口に広がってくるのだから、ステキだ。
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オオシタビラメ 2005年8月17日 140
相模湾や駿河湾では珍しいはずの魚であるが、今年は大漁である。シタビラメといえばせいぜい50センチになれば大きいと驚くのに、このオオシタビラメは体長80センチを超えるのが珍しくない。沼津魚市場ではこれを活けで扱っている。この活けなら身質も白身であり弾力のある。味わいもなかなかいいので刺身としていいのである。これを沼津魚市場で聞いてさっそく握りにしてみる。たかさんも「大きいね」と驚いている。そしてもう一度、驚かせてしまったのが身の厚みである。「これなら思ったよりネタがとれるね」と瞬時に2かんが目の前に。これがここまでの驚きからすると平凡な味わい、少々がっかり。これを「これで充分使えるよ。オレにはうまいね」と意外なことにたかさんの賛辞がこぼれる。これは「脂と旨味が強い」のが好きなのに対して、やや「淡白な味わい」に触れる琴線を持つたかさんとの違いである。
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