第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
十一巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。毎日、1種類ずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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小赤/サルボウ 2005年5月20日 51 旬は春から初夏
 初夏は東京湾の干潟がにぎわしい。アサリやバカガイ漁が最盛期になり、それに混ざる、にし(アカニシ)、サルボウなどを甘辛く煮げて、おっかさんたちが港前でパラソルを開いて店を出す。こんな光景が都心から数十分ほどの船橋(千葉県)で見られるのだから、江戸前も捨てたものではない。船橋では煮てしまうサルボウが大好きなのが山梨である。ときに魚屋の店先に「小赤あります」と出て、中を覗くとこれがサルボウの刺身である。実をいうとサルボウの刺身はとてもうまいのだ。これを持ち込んだ『市場寿司 たか」、たかさんはさすがに「小赤」を知っていた。と出てきたのが端正な握り。サルボウはアカガイの偽物なんて言われる。これは味がはなはだアカガイに近いからで、比べるにやや苦み渋みというか玄妙さに欠けるかな? 「小赤、いいな」とは寿司職人歴30年を超える、たかさんの呟き。
市場魚貝類図鑑、サルボウのページに!
●八王子魚市場、源七/八王子綜合卸売センター『市場寿司 たか』
メイタガレイ 2005年5月21日 52 春から初夏
「東京と大阪と、近年は(魚は)あんまり違わないでしょ」と言われたのは大阪中央卸売市場でのこと。「そんなことありません」、思った以上に両都の違いは多いのである。なかでも歴然としているのはメイタガレイの評価。関東では隅っこの方に野締めが置かれているのが関の山なのに、大阪ではどでんと店の中央に活けで泳いでいる。言うなれば主役なのである。残念ながらこれは関東の業者があまりにもメイタガレイに対して無知なためである。メイタガレイの味の真価は刺身(生)にあるのに、焼く煮るでクセがあるために、「生もっとクセがあるだろう」なんて思いこんでいるのだ。今回のメイタガレイは大阪中央卸売市場内の『特水』から送られてきたもの。『市場寿司 たか』に持ち込んで握りで、また生粋の関東の寿司職人であるたかさんと食べてみた。「う〜ん」、まず、たかさんがうなった。シコっとしている。噛みしめるとジワっと旨味が出て、脂があるのかまったりとしている。「たかさん、後、2かんいきまひょか!」
市場魚貝類図鑑、メイタガレイのページに!
●大阪中央卸売市場『特水』/八王子綜合卸売センター『市場寿司 たか』
化めいた/ナガレメイタガレイ 53 2005年5月22日
 長い間、ナガレメイタガレイというのは謎の魚であった。それがわかったのは大阪中央卸売市場に行ってからだ。特に『大阪魚市場』の喜井さん、仲卸の『特水』熊本さんには感謝のしようがない。今回の「化」「本」を送ってくれたのも熊本さんである。東西ではメイタガレのお評価がまったく違うのであるが、関東では「化」の存在自体気づいていない。メイタガレイが沿岸の浅い場所でとれるのに対してナガレメイタはやや深い場所にいる。大阪で両種を区別するのは味がまったく違いからである。メイタガレイがピンであるならばナガレメイタはキリ。値段も半額程度である。これを下ろしてもらった『市場寿司 たか』のたかさん、包丁の腕は間違いなく屈指のもの。その、たかさんが「化」と格闘している。「これ柔らけーな」。それでも出来上がった握り。パクリと口に放り込んで驚いた。味らしい味がない。またふわっと柔らかくて食感もない。煮つけや干物では結構うまいのだけれど、握りには「しようもない」のだ。
市場魚貝類図鑑、ナガレメイタガレイのページに!
●大阪中央卸売市場『特水』/八王子綜合卸売センター『市場寿司 たか』
紫海胆/キタムラサキウニ 2005年5月23日 54 初夏から夏
 寿司ネタでは「黄海胆」という。これは寿司には弁当箱という木箱にむき身で売られいるものを使う。国産のウニに関しては「黄」はキタムラサキウニ、「赤」はエゾバフンウニということだ。今回は宮城県七ヶ浜からきた大振りの殻ウニ(活け)。これは種をはっきりさせたいためだったが、殻つきにしたのはちょっと失敗。「ちょっと海の香りが強いな。うまいんだけど、なんだかうますぎる」、たかさんが呟くのだ。考えてみると寿司屋では殻つきは使わない。それには「橘」とか「小川」とか北海道のメーカーが海水に晒して美しく箱詰めしたものの方が後味があっさりしていて、すし飯と競合しないからである。今回は「昔は軍艦じゃなく、そのまま握っていたな」というので海苔を使わないですし飯にのせた。海苔という邪魔者がないので口中いきなり酢飯とウニが混ざり、濃厚なウニの旨味がど〜んと衝撃波を作る。うまい、うまいんだけどすし飯はどこにいったんだろう、と思ったときに酢の味わいが感じられる。ウニが好きならこれでもいいんではないだろうか?
市場魚貝類図鑑、キタムラサキウニのページに!
●八王子綜合卸売センター『市場寿司 たか』
真がれい/マガレイ 2005年5月24日 55
 マガレイという魚は思ったよりも目立たない。入荷の多い魚であり、魚屋さんに聞いても「本当においしいね」なんて言われる割に存在感がないのだ。寒い時期にくる福島ものから初夏の北海道まで入荷の時期は長い。ときに裏側の黄の鮮やかで、「お見事!」といいたくなるのを見かける。それで結局なぜ影が薄いのかというと、どうも煮つけ用の魚だと思われているせいらしい。これを持ち込んだ『市場寿司 たか』でも「これ生で食べられるんだけ」という認識である。どうも寄生虫であるアニサキス類のことが心配らしい。考えてみるとアニサキスの感染の虞ということではマアジだって同様だ。刺身を食べている限りどんな魚でも危険はないとは言えないのだ。これなど道を歩いていて「いつ交通事故に遭うのか?」ということで外出をしないのか? というのと同じ。と握ってもらったら、まず、たかさんがうまさに驚いた。いい味わいなのだ。寿司にしてもマコガレイと大きく差があるように思えない。シコっとしていて旨味がある。どうも産卵前で脂ものっているためではないか。「たかさん縁側もお願いね」。
市場魚貝類図鑑、マガレイのページに!
●八王子綜合卸売センター『市場寿司 たか』



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