ご町内会清掃オンブズマン・犬の落し物担当
樋護立彦 Tatsuhiko Higo
1941年2月、山口県生れ
思い出の貝 第二集
(左)フトスジクダマキ。殻長75.4ミリ
(右)右の写真は Turris muzini という比較的最近に記載された貝と思います。 和名について心当たりのあるかたはメールをいただきたい
クダマキガイ科の不明種
 この2個の貝は高知県沖ノ島のサンゴ網80メートルで採れたものです。長らく名前が分りませんでしたが、奥谷博士編著「日本産近海貝類図鑑」では左側の貝がフトスジクダマキTurris annulata Reeve, 1843 とされるもののようです。
 おそらく和歌山県でも記録されているのだろうと思いますが、ペルシャ湾まで分布していると聞いています。 私が40年間で得たのはこれだけでした。
 右の写真はTurris muzini という比較的最近に記載された貝と思いますが,次のところの図と比較していただきたいものです。 和名についてどなたかご存知ならご教示ください。
 クダマキガイ科は多種類のグループで、5ミリ位の小さな貝からクダボラで15センチに達するものまでサイズも幅があります。小さい貝も模様・色彩の美麗さで愛好家が多い筈ですが、打上げ採集では新鮮な標本が少なく、その種名の同定も容易ではありません。
 国立科学博物館に寄贈された河村コレクションには奄美大島安脚場で磨島豊彦氏が採集された微小標本が多数あり、一通り黒田博士が同定されたものでした。それでもかなりの種類が未同定で残っていました。
 フィリピンあたりでは更に種類が増えそうですし、最近ではマダガスカル沖で高知県沖から知られた深海種が続々と発見されているようです。

注01 奥谷喬司
おくたに・たかし/1935年生まれ。日本貝類学会会長。『日本近海産貝類図鑑』をはじめ多くの図鑑、著書がある

ニシキツノガイ(A. Adams & Reeve, 1850)>
ヒラツノガイ(殻長80ミリ)Compressidentalium hungerfordi (Pilsbry & Sharp, 1897)
ニシキツノガイとヒラツノガイ
 軟体動物には殻を持たないものまで含めて7つのグループ(綱=Class)がありますが、種類で見ると巻貝がもっとも多く、続いて二枚貝、そして次にイカ・タコの頭足類の仲間、ヒザラガイの仲間、さらに掘足類とよばれるツノガイの仲間があります。
 ツノガイ類は浅い場所に棲む数種類を除いて、普段は海岸で見かけることの少ないものです。北米北太平洋岸に棲むこの仲間の貝は先住民の間で通貨として使用されたことがあるそうです。ここに示したニシキツノガイは中でも色彩的にもっとも美しいもので、紀伊半島から熱帯地方に分布し、水深10〜30メートルくらいの砂の中に棲んでいます。
 学名のformosumは文字通り“
美しい”という意味です。その昔に、和歌山県串本で漁師さんがタバコのパイプにこの貝を使っているのをあるコレクターが見つけて欣喜雀躍払い下げてもらった、なんてこともありました。
 1962年8月高知県沖ノ島母島港の東、古屋浦沖の水深20メートル前後の砂底でドレッジを引いたところ、タケノコガイ類、タイワンキサゴなどとともにそれまで滅多に採れなかったニシキヅノが生貝で数百個採集されました。白化型も20個体くらいありました。
 このドレッジを計画された河村良介氏もこの成果には大変喜ばれ、国立科学博物館発行「世界の美しい貝 増補・改訂版」の謝辞の中でもそのことを書き残されています。同じツノガイの仲間でも、ヒラツノはもっと深いところに棲息しています。高知県の底引き網でも採れていますが、ここに示す標本は沖ノ島のサンゴ網80メートルくらいに掛かってきたもので新鮮な死殻です。
 殻口が楕円形で、ほかのツノガイの仲間にくらべてやや平ったく見えるのでこの和名になったようです。この貝も最近では日本産をあまり見かけませんが、私は浦賀水道の刺し網200m位から黒くなった死殻を1個採集したことがあります。居るのが分っていても採集できない、そんな貝は沢山ありますがこれもそのうちの一つではないでしょうか。黄色で目立つ殻色ですから漁屑に入ってくればすぐに分るはずです。



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