青空素浪人
ぼうずコンニャク  Bouzu Connyaku
1956年9月19日生 徳島県
みんな集まれ。さてちょっと弱気なおっさんである、ぼうずコンニャクが募集する文集の始まりです。研究者、一般人、垣根なくつくる自由な文集です。どんどん文章をお寄せください。
文章は200字以上。こんな生き物探していますでも文章になっていれば掲載します
上の写真は
スズキ目エボシダイ科ボウズコンニャク
 子供の頃から生き物が好きであった。小学校からの帰り道、ノイバラの上に無数にいるテントウムシ。色とりどり、多彩な紋様を持つナミテントウに夢中になり、気がつくと夕暮れ時。帰りつくと人形劇の『ひょっこりひょうたん島』も終わり、家族は夕食を食べ終わろうとしている。商売をしている我が家の夕食は慌ただしくあっけないものでした。家族は忙しい商売のさなか他家ではありえないことながら、遅くなって帰宅した子供に関しても無関心でした。
 こんなことでしたから夜の川にもよく出かけたものです。もう8時近くなって、貞光川という小さな川の真んまん中でボンヤリ岸辺のホタルの群れを眺めていました。それは子供心にも恍惚となる美しさ、幽玄のなかにホタルの有機的な光とともにあるのだ、とふと我を忘れそう。
 どれぐらい時間がたったのでしょう。ドブンと小石が飛んできた。川辺に住む同級生が「なにしとるんじゃ」と投げてきたのです。照れくさくなって、手にしている懐中電灯をつけてグルグ
ルまわし、ふと水面に光を当てると、そこに黒い大きな魚の影。
 そおーっとその魚を照らし出すと、光のことなどまったく知らぬかのようにジっと動きません。友人を呼んで、ボブンドブンと川を走る音にもまったくその魚は反応を示しません。
「見んかだ」と懐中電灯を川面に近づけて「じんぞく(ヨシノボリ)の親か?」と聞きますと、友は「あいかけじゃ」とかすれた声で教えてくれます。「網持ってくる」と1歩足を踏み出したとき、その魚は光の輪の中から消えていました。
 翌日、学校の図書館でこの黒い魚のことを調べたのが魚類図鑑との初めての出合いでした。昆虫少年であっても魚に関しては「とるのが好き」なだけ、図鑑で見る魚の絵柄の美しさに強烈な引力を感じました。カマキリというのがその魚の和名です。
 それ以来、「じんぞく→ヨシノボリ」、「えっしゅう→カマツカ」、「おいしゃはん(お医者はん)→アカザ」、「どぶろく→チチブ」と貞光川にいる魚から始めて、その年には、図書館の魚類図鑑をひとりじめにしてしまっていたようです。
 高校時代に初めて本格的な魚類図鑑を買いました。『原色魚類検索図鑑』(北隆館)です。この図鑑は今はボロボロになって、本の体裁をなしていません。この図鑑から学んだことのなんと多いことか。次に転機をもたらしてくれた図鑑が『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会)です。実をいいますと、これを本屋で手にとったときに最初に見た魚の図版がボウズコンニャクなのです。なんてバカバカしい名前だろう。その上、図版を見ると何の変哲もない見映えのしないまっくろな魚。
 そうです。この日から私はぼうずコンニャクになったわけです。



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