沼津の仲買、菊貞・菊地利雄さんに聞きました。伊豆の産物
潮かつお/塩鰹
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●魚武水産/安良里港の前。「潮かつお」は年末、普段は伊豆の地魚などを売っている。
静岡県賀茂郡安良里655の1 電話0558-56-0326 ファックス 0558-56-0236
 伊豆はカツオの加工が盛んである。これは田子など遠洋漁業の基地があったこともあるだろうが、駿河湾をはじめ近海でもふんだんにカツオはとれていたのだろう。今でこそ、水揚げされた魚貝類の多くは鮮魚、もしくは冷凍流通されることが多いが、ほんの30〜40年前までは多くが加工されることによって水産物というか商材になっていた。
 西伊豆の名産として名高いのが鰹節とその副産物である酒盗などであるが、地元で正月用に作られる「塩鰹(潮かつお)」も忘れてはならないものだろう。これは、もどりカツオの時期に1貫目近いカツオを使って作られた。作り方は塩漬けにして樽で寝かせて、これを陰干しにする。これを神棚のそばに頭を上にしてつるす。そして、正月に切り身にして食べていくのだ。これは塩分濃度が高くて3〜4ヶ月も保つのだという。
 この塩鰹、あくまで正月に食べるだけのもので、西伊豆で特有なものだと思っていた。それが八王子っ子の鮨屋さんにあるとき聞いてみると、今は手に入らなくなったが、奥さんが「塩鰹」が好きでよく食べていたのだという。これを聞いて老舗の魚屋さんに聞いたところが確かに昔は売っていたのだという。(ここで八王子を取りあげたのは、ほかでもない、八王子は織物の街であり、くさや、むき鮫、乾し貝ヒモ、山梨へかけての独特の食文化があることによる)
 そんな話を聞いていたので、かねがね「塩鰹」を食べてみたいと思っていた。そんな2004年の年末、沼津の仲買である、菊貞・菊地利雄さんから送られてきたのが写真の「潮かつお」である。これは安良里の魚武水産さんが、脂ののった戻りガツオ、しかも3キロ上の大きなのを選んで作ったものである。実をいうと「塩鰹」はうまくないんだろうな、という先入観があった。これは西伊豆の田子や、仁科で地元の人に聞いて「食べてうまかーない」なんて、何度も聞かされていたせいでもある。それが魚武水産の「潮かつお」を食べて驚いた。これはまるでサケの山漬け、もしくは日本海や三陸で作られる塩引きザケに匹敵する味わい深い塩干品ではないか。
 サケとカツオでは当然身質からして違うのだから、カツオ独特の熟成された味わいがある。またカツオには血合いが走っていて、これは独特の酸味を生み出している。
 魚武水産では脂ののった大型のカツオを確保、これを12月に飽和塩水に漬け込み、塩出しをしてから陰干しにする。昔は脂ののったのも、脂のないカツオもとれたものを、とにかく塩鰹にしていた。それはたぶん、塩干品本来の形だとしても、うまくはないだろう。それをこれだけの味わいある名品に仕立てられるようになったのは、試行錯誤もあってのこと。

「潮かつお」の食べ方
 縄で吊して正月に飾っておいた「潮かつお」は半身をまず切り取って、切り身にして食べる。最初は2枚に卸して、半身はそのまま吊しておくのだという。保存食であるから塩分濃度は高い。当然、切り身も薄く切るようにする。これを単純に焼いて食べる。この焼いた「潮かつお」のお茶漬けは、たまらなくうまい。お茶漬けといっても、できれば湯漬けにすることをお勧めする。お茶よりも「潮かつお」の出汁というかにじみ出すエキスのうまさを楽しめるのだ。また薄く切って軽くあぶり、熱湯をそそぐだけで絶品の澄まし汁が出来上がる。これなど忙しい現代人にはまことにありがたいインスタント食品ではないか、しかもまったく添加物を含まない自然食品である。
 食べ方ついでに、師走に入って慌ただしい日々となる。正月飾りの置き場もないし、そんな手間暇もない。また飲食店などで年末らしさを演出したい。などの思いに「潮かつお」はもってこいだ。ちょっと縄を掛けられる壁があるだけで、見応えのある「お飾り」となって、一年の仕舞いを感じられるに違いない。
 思うに静岡県伊豆にあっては「子供の時代」にも残しておきたい、伝統食品のひとつが「塩鰹(潮かつお)」ではないだろうか。
魚武水産の「潮かつお」には心臓がついている
主に焼いて食べる
軽くあぶってお湯をそそぐと、うまいすまし汁が出来上がり



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