2005年5月30〜31
徳島の旅 01
徳島県つるぎ町(貞光町)
貞光川
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林の中に分カワヨシノボリは貞光では「じんぞく」。この名前の意味合いはまったく不明。だれか教えて欲しい。また小さなのを「じんぺい」ともいった
ヨシノボリは貞光では「じゃこ」。婚姻色の派手なオスは「ごじばい」と呼ぶ
貞光川での「やまとばい」はカワムツのこと。昔はこれがいる場所は家庭排水が流れるよどみであった
ギギは貞光川でも「ぎぎ」。確か30センチを超える大きさのものがいた
05/05.30 徳島県貞光町貞光川

 徳島県を知っているだろうか? 関東からすると大阪、神戸、明石ときて淡路島に渡る。そして本四連絡橋をもう一つ渡ると四国。そして鳴門市。ここからが徳島県である。そして徳島の中央部を流れるのが吉野川。池田にダムが出来てからめちゃくちゃに自然が損なわれ、無惨な姿となってしまった。その吉野川支流の貞光川が古里の川。こちらは彼の自然破壊が大好きな役人と政治家のためにもう河川と呼んでいいのやら。
 貞光川は吉野川への合流点には砂が溜まり、いまでは流れはわずかしかない。そこから国道192号線の橋梁を上に見て、徳島本線の赤レンガの橋脚、緑の鉄橋をくぐる。この鉄橋から左に変電所、上流に大きな青石が顔を出していて、このあたりは、渇水期でも水色が濃い緑色の深い深い淵となっていた。この淵をのぞき込むと大きな、いだ(ウグイ)が悠々と泳ぐのが見られた。そしてすぐ上手に広い瀬があり、そこには「えっしゅう(かまつか)」が必ずいたものだ。それが今はまったく砂と泥の底。左右は高すぎるコンクリート護岸で親水性はまったくない。その瀬の上手に、吉野川から上ってきて最初の「かんのう(勧農)」があり、昔は右手に「貞光自動車学校」があった。そして中学校があり、ここにも「かんのう(勧農)」が続いていた。ここでもその痕跡すらない。そして右手に民家を見ながら長橋(潜水橋)にあたる。
 その長橋の上手で河原に下りる。梅雨の前である。しかも川の水は南岸用水にあらかた持って行かれて、水深は膝の辺りまでしかない。しかも川底に溜まっているのはどう見ても土砂。
 長橋の真下から上流に向かって右側に「かんのう(勧農)」の痕跡を見つける。

 この「かんのう」というのを説明すると石を川岸に敷き詰め、この石が崩れないように流れに平行に丸太で止め。その丸太を杭を打ち込んで止めている。これで堤防を流れから守っていたのだ

 その石の隙間はエビやウナギ、どぶろく(ヌマチチブ)、ギギの恰好のすみかとなっていた。 
 子供の頃には水中メガネをつけて潜ると杭の回りに無数にエビがいた。このエビの種類がわからない。産卵期にはコバルトブルーというかコバルトグリーンの卵を抱えていて。ふわりと垂直の杭にとまっている。思った以上にこのエビを捕まえるのは容易ではなかった。また細い笹竹を竿にして、その先に短いハリスをつけてハリに「さば虫」というハエのウジをつける。これを石の間に入れてギギや「どぶろく(ヌマチチブ)」を釣ったものだ。
 他に「かんのう」で思い出すのは長い竹籤(たけひご)の先に返しのないハリをつけたウナギとりの道具。これに大ミミズをしごくようにつけて「かんのう」に差し込む。この竹籤をつかったウナギ取りの道具は今でも町内の、いずみ釣具店で売られていた。
 ただしこの「かんのう」が多くの生き物を育んでいたのも、確か30年くらい前の台風の大水の日までである。それまでも鉄橋下のダムが出来てから溜まりやすくなっていた土砂が、「かんのう」もスミレやイタドリ、ネコヤナギのあった岸辺も、なにもかも埋め尽くしてしまった。この大水の原因は明らかに上流部の無謀な森林の伐採と針葉樹の植林によるもの。それなのに原因を放置したまま高い護岸を作り、美しかった川縁を完膚なきまで破壊してしまった。
 川に入っても目に付くのは、じんぞく(カワヨシノボリ)ばかりだ。そして浅瀬を背ビレを見せて走り去るのは40センチ近いニゴイの群。子供の頃には大川(吉野川)にはいても、小川(貞光川)にはいなかった魚である。そんなときに、やまとばい(カワムツ)を捕まえる。
 岸から「なんかおるでか(なにかいますか?)」と見知らぬ男性から声をかけられる。こんなこともなんだか懐かしい。
 カワムツも貞光川では家庭排水が流れ込むような、流れのよどみに見られたもの。右手に洋館風の不思議な建物を見て、町営住宅の下に来た。そのいちばん南にあったのが森のおばちゃんの家。これが今も残っている。ここに子守で預けられていたときが、なんだかいちばん幸せだった。
 町営住宅の上手が「どいのきし(土居ノ岸と書くのか)」。エノキや広葉樹が岸辺に茂っていて、その下に丈の低い竹やぶ、低い石とコンクリートの堤防があった。この堤防にゴザを敷いて、「どいのきし」で泳ぎ遊ぶ子供たちを、お母さんやお婆ちゃんが見守っていた。そして対岸の堤防上の道に「ちりんちりん」と自転車で売りに来たのがアイスクリン。
 この「どいのきし」のやや下手は「かんのう」があり、上手に行くと石を入れた金網が沈めてあった。これはたぶん蛇籠というものだと思う。今や、ここには高すぎる護岸壁があるだけ、「よくぞここまで破壊したものだ」と建設省(現国土交通省)を呪ってしまいたくなる。
 その上流にまた潜水橋があり、ここは昔は木の橋であった。橋の名は上流に向かって右手坂を上がった所に小さな社、八幡神社があるので、八幡橋と言った。「どいのきし」から八幡橋までに少しだけ葦とネコヤナギが岸辺に残る。ここで、じゃこ(オイカワ)と、ギギを見つけた。
 結局、今回見つけて魚はギギ、カワヨシノボリ、カワムツ、オイカワの4種。あれほどいた、がなっちょ(アカザ)はいったいどこに行ったのだろう。



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