2002年9月4日 築地場内
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 夏の築地は地獄のように暑い。早朝からすでに熱風吹き荒れて、持っていったタオルの汗を絞るほどである。前回の築地行があまりに辛いものであったので、9月になってからと休みをとって築地に向かう中央線は、冷房をガンガンにきかせている。それでも周りのおじさん達は、じっとりと背中を濡らして汗臭いのだ。そして我もおじさん、ポロシャツの衿がジトジトと汗で重い。
 築地4丁に着いたのが8時前。「それでも8月よりはましだな」と思いながらガタガタの石畳を歩いていると、さっそく目についたのがハマグリである。
 かなりの店舗で置かれているので撮影していると声をかけてくれたのが『吉善』の方。浦安で育ったというその人は熊本産のハマグリの大きさを嘆く。「ばち」と呼ばれたチョウセンハマグリが今では高級品なのにハマグリのこの安さ。ちなみに「ばち」、チョウセンハマグリは1キロ/1800円である。
「もっと大きくならないかねー」といいながら子供の頃に浦安で見たハマグリの大きさも語ってもらった。実をいうと、いかな天下の築地でも「地はま」として売られるチョウセンハマグリとハマグリの違いのわかる人は少ないようだ。
 次に声をかけてくれたのが『神勝』の社長さん。神勝は「めごち」やキス、アナゴなど天ぷら用の魚を売る専門店。ほとんど空になったバットを覗くと、それでも3種類のネズッポ属(めごち)の魚がある。後で調べるとネズミゴチ、ヌメリゴチ、トビヌメリの3種。日のよるともっと種類が多いよと、親切にもオスメスを並べてくれる。こんな親切も水曜日ならでは、「閑だからな、閑だからな」と繰り返しながら懇切ていねいに「めごち」のレクチャーをしてくれる。一見こわもてながら、なんと心暖かい人柄か。
 築地を歩いていると、突然自分が棟のどの辺りを歩いているのかわからなくなることがある。そんなときに目印になる大きな店舗があって、そのひとつが『堺静』である。ここは箱単位で売る店らしくいつも大量の魚貝類が積み上げられている。そこで見つけたのがハプカをずんぐり太らせたような魚。撮影させてくださいとお願いすると、箱から出していただいた。ハプカとは属の段階で違うらしいよとの話は、きちんと魚類学を知悉されているようだ。もっと話をききたいと思うものの、来客の多さからすると迷惑はかけられない。
 次が前回気になっていた『伊勢長』。佐島産のアカザエビ、アカウニがここだけに並んでいた。佐島の業者との特別の関わりをもっているようだ。やっと見つけてすぐに目の飛び込んできたのが、またアカウニ。これも佐島産である。小さな店ではあるが置いてあるどれもがキラリと光るものばかり。季節ごとの品揃えはどう変わるのか楽しみである。
 海幸橋から入って、はや2時間近い、セリ場まであと一筋という場所に見つけたのが「かねじゅう」、屋号が文字では表せないのが残念。幅1間ほどの冷蔵庫ひとつ置いてある店。どこか大人しそうな、気弱そうな御主人がマカジキを見つめていると話し掛けてきた。ひと昔までは宴席などで刺身として人気の高かったマカジキであるが、近年あまり見かける機会がない。セリ場の隅田川にぶつかるがらんとした部屋で静かに並べられているのがカジキ類である。何時行っても人陰少なく、ここだけ別世界のように静である。かねじゅうの御主人にはマカジキのうまい部分や最近のマカジキの取り引き、相場をお聞きした。
 いつもただただ魚貝類を撮影することのみに終止する築地行。今回はたくさんの方に声をかけていただいた。
 小笠原の魚の入荷や取り扱いの話をしていただいた『茶屋50部』、バナナエビやクマエビを少ないながらも分けてくださった『岡野水産』、また以西漁業でのフウセイの話や輸入魚類を撮影させていただいた『虎定』の椿さんなど、今回は多くの方にお世話になった。
 それではそろそろ帰ろうかと思っていると向こうから同業者の女性(職種は違うが)が大股で歩いてくる。時代の最先端にいる彼女の首にはタオル。いつも淑やかな面持ちのはずの、と声をかけると「ここで働いているのよ」とのこと。あとで築地の本屋に寄ったら(いつも寄るのだ)、なんと彼女の本がある。『築地魚河岸猫の手修業』福地亨子 講談社。こんど築地に来たら働いていると言う「濱長」にも寄ってみよ。

『虎定』という箱単位で魚を扱う店でシナマナガツオ、キグチを撮影できた。キグチは一見フウセイに思えたのを店の椿さんは、分類の仕方を細かく教えてくれた。またシナマナガツオはヒレがかなり傷んでおり、確実な同定はできなかった。もういちど立ち寄り撮影しなおしたい。

小笠原からの魚
 今回の築地行で目についたのが小笠原からの魚。「茶屋」の御主人の話では東海汽船の貨物便で1週間に1度繰るのだと言う。今回初めて撮影したのはタキベラ、ハナフエダイ、シマチビキ。
 他にはハマフエフキ、アカハタモドキ、アカハタ、オオヒメ、コロダイなど。

朝食は市場グリル
 ここは朝、いちばん早くから開いている。マグロの競りを見に来ていたときにはよく立ち寄った。ここだけは4時台のマグロの競り前にも開いていて何度かすきっ腹を癒したものだ。メニューは中華から、洋食、そばやうどんまでなんでもあり。味はほどほどながら気楽なところがウリである。



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