「東京湾の中央部に
そそぐ小櫃川。湾奥とは違い
まだまだ生き物は多く、
まだ様々な漁が残っている。

ウナギ竹筒漁
2003年8月30日 天然ウナギ
目次市場魚貝類図鑑
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「今年の夏は変だったな」。千葉市を市原市に、そして袖ヶ浦と国道16号を木更津に向かう空はどんよりと重く、蒸し暑いもののどこか「夏のないままに終わってしまったのかな」なんて思う静やかさがある。左手には京葉工業地帯の巨大な工場群れが続く。この風景が和らぐのが木更津からである。木更津までは自然の海岸線はまったく消滅し、コンクリートの壁とテトラポットで海はとじられている。
 木更津には午前10時前に到着した。お世話になり過ぎている、きんのり丸さんのお宅に車を預け、おまけに今日会う、土日漁師の大岩さんの船着き場に案内してもらう。待つ内に現れたのは小柄であるが声の大きな俳優の花沢徳衛に似た老人である。きんのり丸さんと話している姿はなかなか気難しそうに感じる。
 潮の引くのを待ち11時前に出船。船を上手に向けて対岸につけると、すぐにここが漁場、すなわち竹筒が沈めている場所である。
 岸よりのテトラ周りや、杭の間にしずめられている竹筒は、1本1本ヒモに結ばれて沈めてあるのだが、このヒモが目印にもなる。これをゆっくり上げていき、手網を筒の口に構えてここに、水ごと開けていく。最初の1本を上げるところから自然にぼくの役割は手網である。これは意外に難しい。当日は濁りがあって、筒の方向がわからない。魚を捕まえるのが天性だとする、ぼうずコンニャクの本領がここで生きてくる。
 初対面は、苦虫を噛み潰したようなシブイ顔の大岩さんの顔つきも和らいできた。
 ヒモを探すのも、筒を上げるのも終止中腰であり、揺れる船の上でなかなか重労働である。ただし大岩さんの場合専業漁師ではなく、筒の数が少ないために漁をしているという厳しさはない。
 始めてかなりの筒をあげるがメソというか30センチ足らずのものが1匹入っていたのみ。当日の1週間ほど前に記録的な降雨があり、小櫃川は増水、竹筒にはドロがたまり、その上、川底の形状がかなり変わってしまっている。増水以来ウナギは不漁だと言う。



 テトラ周りを諦めて、上流に向かう。ここはコンクリートの護岸ながら杭がたくさん打ち込まれている。ここで上げた筒に大きなハゼが入っていた。「だぼ(チチブ)だろ」と大岩さんから声がかかるが、これはウロハゼである。20センチはある。つぎの筒にはケフサイソガニ、スジエビ?、マハゼも入っていた。「ケフサイソガニはこんなところにもいるんだな!」と棲息場所の選択域の広さにビックリする。
 大岩さんが「ダメかな」とぼやいた途端に筒から大きなウナギが出てきた。ウナギの語源は『胸黄』から転じたと言うが、確かに予想以上に頭部から肛門にかけてが鮮やかな黄に染まる。これに続いて立て続けに2本上がり、収穫は3本であった。
 この竹筒漁というのは秋に竹を切り、1メートルほどにそろえる。これを水に沈めてアクを抜く。2本をゴムで束ねて川に仕掛けるのだ。あとは定期的に上げるだけでだ。



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