2005年4月17
内房富津の港旅02
金谷漁港
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サヨリが豊漁である。しかも大型が多い
人影のない金谷の商店街。小野かまぼこ店は地元でもおいしいと評判の店
東京湾での漁は危険と隣り合わせ。下の画像は船に乗れて楽しそうな、つづきさん
05/04.17 内房 02

 萩生から南に少し走ったところにあるのが金谷港。クルマを止めると港では定置網を揚げている。銀白色に光っているのはほとんどがカタクチイワシ。他の魚もいないようなので、生け簀の中を見て歩く、「おおそげ」と書かれた札のカゴには50センチ前後のヒラメ。イズカサゴや大スズキもいる。
 生け簀の前で小分けにしているのは閂(かんぬき)級も混ざるサヨリ。これは時期的に遅いのではないかと思うのであるが、かなりの量が水揚げされている。
 そう言えばつづきさんは、どこにいるんだろう? と見ると港に突き出した堤防にいる。駆けつけると、黄色いウインドブレーカーに着替えて船の掃除を手伝っているのだ。つづきさんの趣味は貝の収集で、この船からとれた貝を分けているのだ。またつづきさんのもう一つの収集対象が魚の耳石。すなわちあまり値段がつかないものが好きなのだ。
 ハッキガイ、カブトアヤボラ、アヤボラ、マツカワガイ、エゾボラモドキなどが刺し網にかかっていて、どんどんゴミ箱に捨てられている。甲殻類はイガグリガニ、ハリセンボン、ヒシガニの仲間やツノナガシンカイコシオリエビなどがいて、木槌でつぶされていく。
 これらの珍しい生物よりも人間の営みに惹かれているので、漁師さんとの話に花が咲く。
 この堤防にはタコ漁、マコガレイの刺し網などが同居している。マコガレイ刺し網はご夫婦でなかよく網の掃除をしている。
「ご夫婦なかよく、漁をされていていいですね」
 なんて話していると、これが驚くことにご夫婦ではなかった。なんとご婦人は漁師さんのお母さんなのだ。大正始め生まれのお母さん、ここでは現役で漁を手伝っているのだ。ここでハリサザエを分けてもらう。
 海は静かで、沖合からの風もない。空は晴れて日差しは強くとろとろっと眠くなるのだ。そんなとき刺し網漁師さんから網を入れるのを見ますかと言われて、当然のごとく、お願いする。刺し網の準備に1時間と少し、時刻は正午前である。
 貝などを探すつづきさんを残して、クルマに頂いた魚などを置きにもどる。国道沿いの船小屋の前にクルマはある。そこで通り過ぎるクルマをどこ吹く風、延縄のエサつけをしている人たちがいる。
「これは何をとる延縄ですか」
 と尋ねると、
「クロムツですよ。どこから来たんです」
 と聞かれたので、答えると、国道の向こうの路地を差して、
「そこにテレビも来たかまぼこ屋があるから行って見なさい」
 これはどうも旅人と見た私に明らかに親切心いっぱいに教えてくれた模様だ。
 国道を渡り、路地を過ぎて、道幅5メートルに足りない小さな商店街に行き着いた、商店街と行っても店はまばらである。肉屋さん、薬屋さん、そしておいしそうな和菓子屋さん。和菓子屋さんには、きんつばや、吹雪らしい定番のものが並ぶ。そこに家族連れが買いに来ているのに店の奥から返事がないようだ。出来れば買って帰りたいと思っていたが、これを見て向かいのテレビでも有名な『小野かまぼこ店』で揚げかまぼこを買う。金谷の街は国道だけは慌ただしく賑やかだけれど、道を一本入るとここまで静かなのだ。
 港に帰り、沖に出る支度をする。朝穏やかであった海が突然強くなった南風のために波立ってきている。案の定、港の防波堤を過ぎるとかなり船が揺れるのだ。ゆれる船から最初に見たのはクロダイ釣りの遊魚船。内房の遊漁船はかたまって、しかも碇をおろして止まって釣る。風上に船主を向けて釣るのだから静かなもんだろう。
 真向かいに東京湾の進入路。大きなコンテナ船やタンカーが行き来する間をねって網を入れていく。遠くに久里浜の火力発電所の3本煙突が見える。三浦半島が霞んでいるのは春ならではの光景だ。真横に帆を立てて東京湾を横切るヨット、疾走するモーターボート。なんだか、見ていて静かなのは船のエンジン音に海が立てる音がかき消されているためだ。
 寄港は1時前。ほんの1時間足らずの船旅である。そしてこれが今回の内房の旅の終わりでもある。



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