ここは東京湾湾奥、こんなところに生き物はいるの? 魚貝類の水揚げあるの? と思っていませんか?
ところがどっこい(古い表現だな!)、東京湾の魚貝類は今でも漁として充分成り立つほどに健全。しかもこれがうまいのだ。
船橋港カニ漁(岩武丸) 2002年8月8日
ガザミ(わたりがに)、タイワンガザミ(青がに)、イシガニ
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 船橋港にはアサリ漁を見るために来た。ところが南風が強くて漁は中止。しかたなく夏の風物詩ハゼ釣りのために、海老川に面した船橋漁港にやって来た。
 我が地元の八王子や立川となんら変わりがない近郊都市の街並みが続く船橋国道14号線をひとつ南、海の方に入ると、そこは一変。情緒ある漁港町がこつ然と存在する。
 地場の野菜であろうか枝豆やナスを並べて売るおばさんたちがいる。露地を覗けばアサリの剥き身(?)の入っているザルを幾つも並べるしもた屋。この細い道の突き当たりが船橋船だまりである。対岸にはアサリの水揚げ場が見える。
 家族はハゼ釣りが目当てである。大急ぎで釣りの支度をして、ひとり港を散策していると出合ったのがカニを買うために船を待つ老人であった。
 船はすぐに帰って来た、朝の7時を回ったばかりである。「今日の朝は吹きましてね、出船が遅れてしまって」と、重い刺し網の入ったカゴを引きずりながら、船長らしき老人が呟いた。こうして船を待ち取れたたてのカニを買いに来る人は多いようである。
 カニを外すのを見せてくれませんか? というと「いいよ」とおばさんが笑う、「時間かかるよ」と船長の老人。皆、おもいおもいに腰掛けて網を手繰る。手繰りながらカニを千枚どうしのようなもので外していく。それにしても凄まじい数の貝殻が掛かっている、バカガイ、シオフキ、マテガイ。東京湾にこれほどのマテガイが棲息しているのがろうか?
 カニは3種類、ガザミ、青がにと呼ばれるタイワンガザミ、イシガニ。ガザミと青がには方がよくて、値段はガザミ、青がに、イシガニの順で高い。イシガニはタコ釣りの餌やみそ汁にする。商品となるのはガザミ、青がにである。
「今日は漁が少なー、普段の半分もない」というが、カニを外すのにはたっぷり2時間。できるだけカニを傷つけないように、網を切らないように、なかなか神経を使う仕事である。どんなに気をつけても一漁で網はボロボロになるのだという。
 カニ以外には夏はイシガレイが掛かるのだと言うが当日はエイやアカニシが掛かっただけ。アカニシは味のよい巻貝であり茹でて酢みそで食べたり、煮貝にする。エイはアカエイと珍しいツバクロエイの2種。「よこさ面白いか」、何枚も撮影するのをおもしろがって皆が笑う。ツバクロエイは船橋では「よこさ」、刺し網に掛かるやっかいものにひとつであるのだと言う。
 もうひとつびっくりした大量のマテガイの貝殻は、地元ではマテガイを取る漁師はいないし、食べる習慣もない、まったく顧みることのない、水産資源なのだ。
当日は南風が強くて船橋名物、三番瀬番背のアサリ漁は出なかった。本来はアサリ漁を見に来たのであるが、偶然出くわしたカニ刺し網も東京湾ならではの味覚の伝統を守っている
網についてくる大量の貝殻。シオフキ、バカガイ、カガミガイ、マテガイ。これを外すのにも一苦労。
↓わたりがに(ガザミ)は値段も高く一番の獲物
↑(写真右2つ)青がに(タイワンガザミ)の味は絶品。今回はミソが少なくて残念ではあったが、身が甘くてしかも、殻が柔らかいので食べやすかった
(写真右)
イシガニは小振りで殻が硬いので人気がない
上がアカエイ、右が「よこさ」、ツバクロエイである



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