駿河湾の深海から上がったばかりの
ミルクガニを船上で食べる。
このやり方が奇抜、そして独創的。
しかもミルクガニの食べ方では
群を抜くうまさ。
静岡県焼津・長兼丸
ミルクガニ漁(エゾイバラガニ)
ミルクガニの煙突焼き
2004年2
月14日 エゾイバラガニ
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煙突焼きのできるまで
ミルクガニの下ごしらえは市場魚貝類図鑑のエゾイバラガニをご覧ください。
下ごしらえが終わったミルクガニをいきなり煙突につっこむ。この煙突が思った以上に高温なのだ
煙突から出して焼き加減をみながら約5分(もっと短時間かも?)。出来上がったものは真っ黒。ぜんぜんうまくなさそー
これをじょきじょきハサミで切って出た来たのが美しーい身だった。もちろん手であわてて口に放り込みました。「あまい、うまい、止まらない」
 凪の海をゆっくりと帰港する。その間にもお客さんなどからの問い合わせが長谷川さんのケータイに入る。港で待っている奥さんとのやりとりも交わされる。
 遠くに日本平、そしてやや霞んでいるものの雪をいだく富士が見える。「何回見てもきれいだと思うな」とは久志さん。とくに澄んだ晴天の中に立つ富士は美しいのだという。左に焼津と静岡市を隔てる大崩(おおくずれ)が見える。
 港は近いと思っていると「煙突焼き、やるけんね」と久志さんが、甲羅を取り、二つ折りにしたミルクガニを持ってデッキを上がる。船の排気煙突がそこにある。すっぽりとミルクガニを差し入れる。「ミルクガニの煙突焼きはいちばんうまい食べ方」であると久志さんからなんども聞かされていた。火の通り加減を何度か見ては、また煙突に差し入れて、ほんの数分で煙突焼きは出来上がった。
 排気ガスで黒くすすけた甲羅は、一見食欲の湧かない代物であるが熱いのを我慢してハサミで切り割る。トゲトゲの足からは、ぷるんと白い身が飛び出してくる。赤い色合いの表面に真っ白い身、これを指でこそげ取って口に放り込む。
 放り込んで噛み、舌の上でザラリと押しつぶすと強い甘みがすぐにくる。そのあとほどよい苦み(感じられないほどのもの。旨味を押し出す役割をするもの)をともなってグリシンやグルタミンのうまさが口中に広がってくる。一匹などあっと言う間である。
 ミルクガニは蒸すのがいちばん手っ取り早い食べ方であるが、家庭で食べるときに焼いてみてほしい。こうするとミルクガニの水分が適度に抜ける、また瞬時に火が通るので旨味を逃がさない。もっているなら七輪で焼きながら食べると、もっといいかも知れない。これが煙突焼きのうまさの秘密の種明かしでもある。
 すなわち煙突焼きがうまいのは、高温の排気口にすっぽりと身を入れることで煙がカニを包み込むように熱を通す。しかも非常に高温になるために瞬時に火が通るのだ。
 世にうまいものを食べたいと切望する人は多いと思うが、この煙突焼きは長兼丸以外に食べられるところはない。しかも船に乗らないと食べられないスペシャルである。

●ミルクガニ(エゾイバラガニ)の食べ方などは
市場魚貝類図鑑のエゾイバラガニへ
購入するには、
静岡県焼津市の長谷川久志さん(長兼丸)にメールにて。
E-mail/tyoukanemaru@thn.ne.jp





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