2005年1月20
沼津魚市場
市場便り 07

目次市場魚貝類図鑑
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この日の冨士の美しいこと。見慣れた沼津っ子もときどき手を休めて冨士を見やる。ただ冨士がくっきりと姿を見せているということは西風が強いということ。市場には緑色の風よけが張られる
当日、やたら上がっていたヒメ
キビレカワハギ(手前)とウマズラハギ。沼津では区別しないでともに「うまずらはぎ」と呼ぶ
とれたばかりのクサカリツボダイ。これは
マナマコがずらりと並ぶと冬だなと思う
やや遅れてきた東伊豆の定置網。カタクチイワシが大漁
当日は翌日、魚がないのを見越して競りが慌ただしい
沼津、小田原で「おしつけ」と呼ばれるアブラボウズ。脂が強くて量食べられないが、うまい。
店内は市場関係者ばかり。地元人に愛されている「たか嶋」。寿司もうまいが、天ぷらも自慢
05/01.20 沼津魚市場
 目覚ましがなったとき、まだ夢の中であった。確かに夢の中の物語が進行中であり、残念ながら目覚めと同時にその物語を忘れてしまっている。残念だ。沼津に行く用意はいとも簡単。カメラバックにカメラ2台、メディア2ギガバイト、メモ、筆記用具。何度か点検して忘れ物のないことを確認して出発する。
 出発は午前1時半、沼津にはあっという間について、クルマの時計は3時半。クルマから出ようとすると突風がドアをむりやり押しつけてくる。いつもは静かな港内が波立ち、突風がキューピューと口笛を吹いてめちゃくちゃに闇を切り裂いてゆく。市場の海側には緑の風よけが張られている。
 このとき底引きの場所には志下の船2隻が選別を始めようとしている。
 志下の太共丸の大型バケツから投げ出されたのはヒメ、ニギス、マアナゴ、チゴダラ、シロカサゴ、カナガシラ属など。今日はやけにヒメが目立つ。アカザエビ、サガミアカザエビ、しまえび(ヒカリチヒロエビ)、あかえび(ツノナガチヒロエビ)、あまえび(ジンケンエビ)、少ないながらボタンエビもある。そんな中からコツノキンセンガニ、ヒメクダヒゲエビ? など小型甲殻類を見つける。
 5時近くになって菊貞・菊地利雄さんが来てくれる。菊地さんの顔を見るとなぜだかほっとする。活け場に行くと萩原さん、冷凍に行くと山田さんとお馴染みの顔を全部見ないと寂しいのは不思議だ。
 活けものはタカアシガニ、みょうとがに(イバラガニモドキ)、マダイにヒラメ、イセエビ。
 冬らしさを感じたのは大量に並んだ赤なまこ(マナマコ)。我入洞の場所ででんでん(オオメハタ属)、アカムツ。御前崎からはクロメジナ、キビレカワハギ、大きなアカザエビ。そしてマグロ用の木箱があって、何気なくのぞくと、沼津・小田原で、「おしつけ」と呼ばれるアブラボウズ。2メートルもあろうか木箱に重さを探すが見つからない。魚はまだ搬入されていてトゴットメバル、ソコカナガシラ、ツルグエの仲間、フエフキダイ、オアカムロ。ビンナガマグロ(とんぼ)、ハガツオ、小ガツオ、マルソウダなど黒潮の申し子のサバ亜目の魚も並んでいる。
 飯塚さんと歩いている内に頭屋(頭屋分店・魚屋)さんが、東伊豆から定置網を搬入にきたのを選別しているのに出くわす。カタクチイワシ、クサヤムロ、1匹だけ、ひめあじ(アカアジ)が脇に分けてある。市場の明かりに頭屋さんの禿頭がつやつやしている。

 ひととおり見終わったのが7時頃。飯塚さんの案内で市場前の道路を超えて、市場人がひいきにする、「たか嶋」に入る。「たか嶋」は寿司と天ぷらの店であるが、この時間、店内は市場関係者ばかり。どうも毎日のように来ている人も多いようだ。座ると、「寿司でいいですか?」ときかれて、「寿司で」と応えると、イカ、ビンナガマグロ?、煮たホタテガイ、魚貝類を挟み込んだ巻きずしに、サラダの軍艦などが出てくる。これがみないい味わいである。飯塚さんによると、朝は市場関係者で埋まっていてなかなか席が空いていないのだという。
「今日は開いていてよかったですね」
 この店も飯塚さんに案内されないとまず見つけることは出来ないだろう、地元の名店なのだ。

 熱いお茶をお代わりして、市場に取って帰ったのが8時過ぎ。海が荒れていて、今日は底引き網などが出船できないのがわかっているために、場内の魚貝類はすっかり仲卸や魚屋さんが持ち帰ってしまっている。菊地さんが先週、志下の佐平丸さんが底引き漁で持ち帰ってくれた選別外の魚貝類、戸田の清正丸から買ったクボエビを用意して待っていてくれた。
 そこにひょっこりと現れたのが佐政水産の山下博義さん、環形動物のヒルの仲間を持っている。養殖魚にときどきついているのだという。これも頂いく(後日ウオビルの仲間であることが判明)。
 佐政水産の青木さんを探すと本社で魚の搬出をしているというので、急ぎ向かう。ここで青木さんの取って置いてくれた謎のエビとツルグエ属(トゲハナスズキと判明)の魚の入ったトロ箱を受け取る。
 海が荒れて不漁であるにも関わらず、なんと収穫の多い日であることか? 飯塚さんの顔がほころんでいるし、市場から見える富士山は凄絶に美しい。これぞ日本一の冨士の山か? なんて月並みなことを思いながら市場を後にする。
 志下に向かい、カネマル笹市や酒屋さんなどによって、午前11時過ぎに帰途に着く。「喜久酔」特別本醸造1本、長岡の豆腐と納豆が今回のお土産。



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