2004年12月12日 01
沼津魚市場 
市場便り 06の1
目次市場魚貝類図鑑
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いつも変わらない底引き網選別の光景
競りの目玉はクロムツやキンメダイ
今年は不漁と言われる、しらす
この2キロから4キロ弱のクロムツはうまいなんて生やさしいものではない
菊貞・菊地利夫さんが、クロムツの値動きを聞いている。ベテランの沼津魚市場職員さんは「そんなに高くないだ」
04/12.12 沼津 01

 ふとんの中でうつらうつらしている。起きあがろうとしているのに、心地よさに邪魔されてなかなか飛び出せないのだ。これは度重なった深酒によるものか、それとも年齢のせいだろうか? 師走とも思えない気温のなか、とるものもとりあえず沼津を目指す。持ち物はカメラに筆記用具くらいで、これは普段、八王子の市場に向かうのと変わらない。
 南下する国道を走る車がみな大人しく、ゆっくり走っている。いつもと同じようにもっとも遅い速度で走っているつもりなのに、それでも何台もの車を追い越している。景気のよかった時期には国道を走る車がもっとどう猛であった。あっというまに厚木に出て、東名にのる。ラジオや標識には「厚木秦野間渋滞中」の情報があったが、道はガラガラで沼津に下りたのが3時半前。インターを下りてすぐのセブンイレブンでお茶とサンドイッチを買いこんで一息つく。
 魚市場の駐車場に車をとめて、まず空を見上げる。まっくらな闇の中に星も月も見えない。無風である。しかもぜんぜん寒くない。市場の明かりを見て、岸壁からオシッコをするか迷うが、後々、トイレのそばを通るな、なんて考えて底引きの選別する場所に向かう。
 志下・静浦、戸田の船が半々に場所を分けて選別している。コンクリートがエビで赤く染まっているのもいつもの通りだ。ジンケンエビ(甘エビ)、ヒカリチヒロエビ(しまえび)、ツノナガチヒロエビ(あかえび)、ボタンエビ、アカザエビ、サガミアカザエビがあり、不思議なことにヒゲナガエビ(本えび)が少ない。ハシキンメ(ごそ)、ニギス(めぎす)がたっぷりあり、反対にヒウチダイ(あぶらごそ)、アカムツが少ない。また思ったよりアンコウも少ないようだ。あとはワキヤハタ・ナガオオメ(ともに、でんでん)、カイワリ、ヨロイイタチウオ(ひげだら)、シロカサゴ(あかかさご)、マアナゴにぽつんと巨大なヒラメがある。テナガコウイカ、チヒロダコと相変わらず魚種は多い。
 底引きの選別を見ていると志下の佐平丸さんが漁のあいだに残していてくれた貴重な魚貝類を渡してくれる。佐平丸さんには、志下での魚貝類の呼び名などについてもお世話になっている。佐平丸さんにお願いしてくれたのが魚市場の萩原さんで、お二方には感謝のしようがない。
 活けの前で萩原さんに声をかける。その生け簀の脇を見るとゴマテングハギ、ウメイロ、アオダイ、ヒレナガカンパチがある。「これは“とびしま”だ」という萩原さんの言うことがわからない。どうも萩原さんは言葉を投げつけるように言うクセがあり、それがお茶目なえくぼを作って言うがために、こちらも曖昧に納得させられてしまう。どうも金洲(御前崎の沖ににある瀬)でとれたもののようだ。
 市場を一通り回ってから沼津魚市場の冷凍や塩干を扱う建物に向かう。これは夏まで活けの部署にいた山田久哉さんに会うためである。山田さんは、すぐに見つかった。冷凍エビや、最近の仕事のことを聞くが、なぜか今日はうつろな表情。疲れているのかアシロ目のアシロに似てきている。「また来るからね」と早々に別れて建物の脇のトイレでオシッコ。競り場に戻ると沼津の魚貝類を研究している飯塚栄一さんが到着。飯塚さんがいるだけで見つかる生き物の数が数倍多くなる。
 細長い市場を西に歩いていくと、駿河湾名物のタチウオ、曳き縄のめじまぐろ(クロマグロの幼魚)、それに大きなクロムツがごろんと並んでいる。そろそろクロムツがうまい時期だな、なんて独り言が出てしまう。アマダイも並んでいるが、これは高くて値段を聞くのも躊躇する。
 底引きの場所に戻ると、菊貞・菊地利夫さんが立っている。菊地さんはいつも唐突に、ぽつりんと立っている。お会いすると「沼津に来たんだな」と改めて思うし、心に安心感が広がる。また佐政水産の青木さんが大急ぎで通り過ぎる。青木さんは、仲卸にあってもっとも魚貝類の知識が豊富であり、同定能力の高さは無類ではないか? 菊地さんと市場内を巡る。菊地さんと話してもクロムツは今日いちばんではないかという? また大きなマトウダイがあってこいつもひょっとしたらクロムツ以上かも知れない。
 4時半になっても活けのカワハギ、定置網の搬入がある。ぴちぴちと跳ねるカワハギを見ているだに「いい酒が欲しい」と思う。ただ、カワハギでいっぱい飲るにはまだまだ暖かすぎるな!
 競りが一段落した頃に定置網が水揚げをはじめるが大量のウスバハギがあるだけ、あとは小イサキやマルソウダガツオ。
 底引きや陸送の競りが終わった頃に岸壁に多くの人たちが走り寄る。その後を追うと「今年はまるでとれない」と話題になっていた、しらすである。いったいいくらで競り落とされたのか、競り人たちは慌ただしくて聞く余地がない。駿河湾に、しらすがないというのは飲食店ほかで大問題だと思われる。遅れている遅れていると言われる「潮」であるが、もう師走である。



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