淡味よし姿もっとよしの幻の魚。
魚の王様 ペヘレイの旅 03
埼玉県大里町2004年5月11日
ペヘレイの旅 0102へ 番外編小川町
今年、出荷できる(食べられる)ペヘレイは少ない。この貴重なペヘレイをいただいたのだが、このペヘレイの素早いこと。安田さんは何度も手網を差し入れた
「ペヘレイは透明な魚なんですよ。ほら透けて見えませんか?」。この魚、透明な水槽で見るとさぞや美しいのでは
みよこのこの美しくも透明な身を。身の中央を血合いが走っていて、「この筋をうまく寿司ネタに生かせないか? と、たかさんは悩んだ模様だが、当日は思案がつかなかった。そして寿司の味だが、イケるんです、これが!
 安田さんにペヘレイを2匹いただいた。ビックリしたのは水槽内のペヘレイの早さである。手網ですくうのは至難。安田さんは銛を突き刺すように手網を入れる。何回かで入ったのは3匹、内2匹を氷で締めて発砲に詰めていただいた。

 埼玉県から帰り着いたのが5時前のこと。すぐさま八王子総合卸売センター、「市場寿司 たか」にペヘレイを持ち込む。
 箱から出したペヘレイは木の棒のように硬い。これをウロコを引かないで3枚に卸す。包丁が中骨にあたってカッカッと音がする。皮を引き、並んだ身を見て、その綺麗なことに、たかさん共々に溜息をついてしまった。ここから、たかさんの思案が始まる。実を言うと今回のペヘレイはサヨリのように寿司種に仕立てるのには大きすぎるのだ。しかも硬い。

「ねえ、血合い骨ないよ。これ」。たかさんが不思議そうに上身の真ん中を指でなぞる。「それならと薄くへぎ作りにするかな?」。
 結局思案がつかないままに握って、それでも出てきた寿司の、その美しく端正なこと。「しょうがかワサビか、わかんないから両方作ったよ」というのを何枚も撮影して、もどかしくも口に放り込んだ。
「締まったままでまだ味がないんじゃないの」という、たかさんの心配はまさに杞憂である。しこっとかみ切れる身は寿司飯とも決して反発はしない。2噛みする間に甘みが来て、ほどよい旨味が舌に残る。薬味はワサビのほうがいい。

 すぐに、たかさんにも試食してもらう。これを要約すると。
1/寿司飯との相性は今日のところはイマイチである。翌日もお願いしたところ、これは解消し、むしろ一日おいたほうがベストであるという結論。最終的には絞めてから3日目までおいしく食べられた。
2/あっさりした味わいを想像したのだが、思ったよりも甘み旨味がある。
3/これを似ていると思われるサヨリと比べると、味の優劣はつけられない。ただ「保ち」からいうと上ではないか? また価格が安定していればサヨリよりも遙かに使いやすい。
4/心配な点はやはり知名度である。これを店のネタとして客がわかってくれるか? これは「市場寿司 たか」のような個人経営の店では使えるが大型店ではどうだろうか? ただしペヘレイは高級魚である。結局使う店はそれなりの魚に対する知識があるだろう店であるから心配はいらないのでは? と思う。

 他には天ぷらにしてみた。大きな魚であるために切り身にして揚げるしかなかったが、味わいはまるでキスのようである。上品でしかも風味が上々。きっとなにも言わなければキスと勘違いするに違いない。ペヘレイの小形のものは天ぷら種としても使えそうだ。

 しかし今日、食養魚としてペヘレイの知名度はどうしてこんなに低いままなのか? また養殖に関しても非常に生産量が低いのはどうしてか? この現状は返す返すも残念なことだ。例えば、埼玉県などは水産物としてはなんの特産物もないではないか。それに基づくと、今ではペヘレイを養殖している業者は希少であり、その上、その希少なペヘレイ養殖を行っているのが埼玉県内の安田養殖場。いわばペヘレイは埼玉県にとって貴重な地魚とも見なせるのだ。「もっと活用した方がいいんじゃないの埼玉県」なんて言葉が思わず湧いてくる。



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