05/04.07 松屋町、空堀、心斎橋、道頓堀、難波 05

 中央市場から千日前線玉川駅に向かうとき「大阪蒲鉾組合」という看板を見つけた。実をいうと今回市場内で探したのが「鱧の皮」である。上司小剣の小説「鱧の皮」に蒲鉾屋で鱧の皮を買う場面がある。鱧の皮を買い、酢に漬けて食べるのが好きな家出した夫のために主人公が鱧の皮を買うのだ。
 すると鱧の皮というのは蒲鉾屋で買うのだろうか? 中央市場内で鱧の皮を探したら味つけしてパックに入ったのはあるらしいが調理前のものが見つからなかったのだ。それではきっと蒲鉾屋を探せばいいわけだ、と思い至った。それで古いビルの階段を3階まで上り、おずおずとドアを開けると目の前に女性がいて、「鱧の皮のことを教えて頂けませんか?」と唐突にたずねた。すると奥にいた男性が応接セットに招いてくださった。この方、大蒲水産加工業協同組合の大坪七郎さん。
 こんなときに我がサイトのことを説明するのが難しい。しどろもどろに話すこちらに、それでも大坪さんは答えてくれる。鱧の皮を蒲鉾屋で売っているというのは当然、蒲鉾の材料がハモであるからだろうが、今、ハモで蒲鉾を作っているところは少ない。「作っているとしたらえびす橋の『大虎』ですね。そこには鱧の皮も売っています」という。
 また、続けて、
「鱧というのは夏のもんやからね。『泉州の玉葱が出始めると鱧がとれる』という言葉もあります」
 これは泉州は玉葱の産地であり、ハモと合わせて鱧すきに仕立てるわけだ。骨切りしたハモをすき焼きの下地で玉葱と煮ると、それはうまいだろう。

 鶴橋から地下鉄にもう一度下りて谷町九丁目駅に。娘がお土産を買いたいというのでおもちゃなどが買えるという松屋町をめざしているのだ。ところが地上に出た途端に迷子になってしまった。娘が大きな黒い犬を連れた女性(とても美人なのに犬を連れているというのは残念)に聞くと、ここを西に向かって行くと大きな通りにぶつかり、そこが松屋町筋。右折して少し歩かなければだめだけれど、おもちゃの問屋さんなどのある場所には簡単に行けるという。娘が尋ねている間にどうも、彼女の連れている犬がやけにこちらを見るのが気がかりになる。「わかった」という娘を先に行かせて犬の注意をそらせて西に歩く。その通りの北側に大きな神社がある。入り口に高津神社の文字があり、参道が続いて桜が満開となっている。朝だというのに桜を見る人が多く行き交っている。ちょっと見て行こうかと奥に進むとさっきの黒い犬がそこにいて、当然、美人のお姉さんもいるのだけれど、娘が無防備にも犬の頭をなでているのを見ている内に高津神社見物を断念する。これを過ぎると松屋町筋。おもちゃや人形の問屋街で小売りもしていると聞いてきたものの娘が面白いと思うような店は見つからない。そのうち疲れを感じて、どこでもいいから座り込みたくなる。
 正面に東西に走る大きな道路、長堀通りが見える。このとき左手に見えたのが空堀商店街である。喫茶店でもあればなと入ると、クルマの入れない歩行者だけの商店街に入る。クルマが入らないというのはいいもんだな、と思ってよたよた歩いていると目の前にぱっと現れた自転車がものすごい速度で脇をぎりぎりすり抜けていく。いい年したおばはんも、若い女性も、おやっさんも、その自転車をこぐ速度は半端じゃない。ユニバーサルスタジオよりも空堀商店街のほうがよっぽどスリルが味わえそうだ。商店街には小さな魚屋、和菓子屋、雑貨屋などが続いていて、やっと喫茶店を見つけたとき、その斜め前に娘が大好物のとろろ昆布を見つけた。
 ここは空堀商店街の中程である。娘が見つけたのが『こんぶ 土居』という店。老舗らしい店先にはとろろこんぶ、塩ふき昆布、椎茸うま煮などたくさんの昆布製品が並び、手に取ると買いたい物だらけでとめどなくなってくる。ここの塩吹き昆布は一般に売られているものとはまったく別物である。梅田駅や新大阪駅のお土産屋で売られているものは炊いた昆布にグルタミン酸ソーダ、塩などがまぶされて白い。ところがここのは薄茶色で粉っぽくない。味わいは淡く、そしてゆっくりと昆布の風味が浮かんでくる。

 空堀商店街から地下鉄長堀鶴見緑地線谷町六丁目駅に下りて心斎橋に出る。御堂筋を南下しながら娘が目的とするグリコの看板を探す。せっかく大阪まで来てグリコの看板を探すのもおかしな話しであるし、ばかばかしい限りだが自分の娘なんだから仕方がない。心斎橋からアメリカ村という通りに入る。この「若者の街」、やたらとうるさい。でもせっかくここまで来たのだから、Tシャツでも買ってやろうかというのを娘はひたすらグリコの看板をめざす。そして御堂筋にもどったら、あったんですね、それが、きらきらと輝いて。これだけで「きゃー」と歓声を上げる娘がおかしいんではないかと心配になる。御堂筋を渡り宗右衛門町、この名前だけ風情のある通りを右に曲がると道頓堀である。
 宗右衛門町のすぐ隣が確か島之内。小出楢重の生まれたところだ。島之内に行ってみたいと思ったが、疲れから少しでも難波に早くたどり着きたくなって、道頓堀を渡る。
 我が娘、おバカなことに、ここは夢のような景色なんだと言う。グリコの看板、かに道楽のカニ、食い道楽の赤い縦縞の人形の前で記念写真を撮り、グリコ屋でお土産を買う。このグリコ屋、世のお父さんにはなんの面白みもない店だが、ちょっといいのは懐かしいグリコのテレビCMが流れていること。昭和30年代生まれは、どうしても懐かしいので見入ってしまうのが難点ですね(「ね」は大阪弁の「ね」です)。ここを出て、露天の店でケータイストラップを買い、えびす橋筋に入って北極のアイスキャンデー、これはまったく娘孝行というやつ。
 そしてえびす橋の『大虎』で鱧の皮を買う。「鱧の皮」の主人公の料理屋の女将が「鱧の皮」を買うのと比べなんと風情のないことか?

 宗右衛門町、道頓堀、えびす橋とたいへんな人出であり、難波高島屋前には押し出されて出たといった感じ。地下の高島屋でお弁当とお茶を買い込んで南海電車に乗る。2時6分発の急行和歌山市行きは、4人がけの対面シートであろうと思って弁当を買い込んだのであるが、意に反して通勤電車そのもの。お弁当を持ち越して和歌山に到着したのが3時過ぎのこと。深夜バスで眠れなくて、以後ずーっと歩きっぱなし。疲れはピークを迎えていて早く休みを取りたいと駅前に出てみると、めざすホテルが見あたらない。駅からすぐのところというので予約したのに、どこにもないのだ。しかたなく観光案内所で地図をもらい尋ねると、「それは和歌山駅のほうじゃな」という。残念、和歌山市には南海線の和歌山市駅とJRの和歌山駅があってかなり離れた場所にあったというわけだ。仕方なく市バスに乗り、和歌山駅に行く。途中和歌山城が見えたのでここが、「徳川吉宗のいた城だぞ」と教えると「なに、それ微妙」と言ったので一発殴る。和歌山駅からホテルまでは5分足らず。シャワーを浴びて少し休息をとる。
2005年4月7〜8日
大坂の旅 05
ハモの皮と
大阪街歩き
目次
市場魚貝類図鑑

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鶴空堀商店街で見つけた「昆布 土居」
ハモの皮はやっぱり蒲鉾屋で売っていたんです。えびす橋の『大寅』



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